身体のこりや痛みの改善、血行促進、リハビリ補助などを目的としたあん摩・マッサージ・指圧の国家資格を持つ施術者を行います。
日本の法律では、国家資格を持たない者が業として施術を行うことは禁じられているため、施術には資格が必須です。
- 国家資格(厚生労働省管轄)
- 医療類似行為(東洋医学に基づく施術)が可能
- 健康保険適用の施術ができる(条件あり)
- 独立開業が可能(施術院・出張施術など)
あん摩・マッサージ・指圧の技術は、リラクゼーション目的だけでなく、医療・介護・スポーツ分野でも活用されています。
■主催
厚生労働省
受験資格と難易度
1. 受験資格(国家試験を受けるための条件)
あん摩マッサージ指圧師の国家試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 養成学校(専門学校・大学)を修了する(一般的なルート)
厚生労働省が認定する養成施設(専門学校・大学)で3年以上学び、所定の単位を取得することが必要です。
入学資格(養成施設に入るための条件)
- 高等学校卒業(または同等の学力を持つ者:高卒認定試験合格者など)
- 視覚障害者の場合は、中学校卒業でも入学可能(盲学校の特例あり)
養成施設で学ぶ主な科目
- 解剖学・生理学・病理学などの基礎医学
- 東洋医学概論・あん摩マッサージ指圧理論
- 臨床医学・リハビリテーション・実技実習
修業期間
- 3年間(夜間部の場合は4年間の学校もあり)
② 視覚障害者向けの特例(盲学校での学習)
視覚障害者は、特別支援学校(盲学校)であん摩マッサージ指圧師の教育課程を修了すれば受験資格を得られます。
この場合、中学校卒業でも受験資格が得られる特例があります。
③ 海外の資格取得者の場合(実績は少ない)
海外であん摩マッサージ指圧に関する資格を取得した人は、厚生労働省の認定を受けた場合のみ受験資格を得られることがあります(ケースバイケース)。
2. 試験の難易度(合格率と試験の特徴)
① 合格率
- 例年の合格率:70〜85%前後(比較的高め)
- 2023年度(第31回):合格率 79.5%
- 2022年度(第30回):合格率 81.2%
- 2021年度(第29回):合格率 77.8%
② 難易度の評価
- 比較的合格しやすい試験(しっかり勉強すれば合格可能)
- 専門学校で3年間学べば、試験範囲の知識が自然と身につく
- 解剖学・生理学・病理学の範囲が広いため、暗記が苦手な人にはやや難しく感じることも
- 模擬試験を受けて6割以上の得点が安定して取れれば合格の可能性が高い
試験内容
1. 試験概要
- 試験実施日:年1回(例年2月下旬)
- 試験形式:筆記試験(五肢択一のマークシート方式)
- 試験時間:1日(午前・午後の2部構成)
- 合格基準:総得点の60%以上(各科目で一定の得点が必要)
- 試験会場:全国の指定会場(例:東京・大阪・福岡など)
2. 試験科目と内容
試験は、大きく分けて基礎医学系・臨床医学系・東洋医学系・法律の4分野から出題されます。
① 基礎医学系(医学の基礎知識)
医学の基本的な知識を問う分野で、解剖学・生理学・病理学・公衆衛生学などが含まれます。
科目 | 出題内容(例) |
---|---|
解剖学 | 骨・筋肉・神経・内臓の構造、関節の働き、循環・消化・呼吸器系 |
生理学 | 神経・ホルモン・血液・消化・運動の機能、体温調節 |
病理学概論 | 炎症・腫瘍・感染症・生活習慣病・免疫機能 |
衛生学・公衆衛生学 | 感染症予防、栄養、環境問題、医療統計 |
② 臨床医学系(病気・リハビリ・治療法)
あん摩マッサージ指圧師が施術する際に知っておくべき病気やリハビリの知識が問われます。
科目 | 出題内容(例) |
---|---|
臨床医学総論 | 診察法、検査法、基本的な疾患の診断と治療 |
臨床医学各論 | 内科・外科・整形外科・神経科・皮膚科・小児科の疾患 |
リハビリテーション医学 | 機能回復訓練、脳卒中・骨折後のケア、高齢者リハビリ |
③ 東洋医学系(伝統的な治療理論)
東洋医学の基礎理論や、あん摩・マッサージ・指圧の技術理論について問われます。
科目 | 出題内容(例) |
---|---|
東洋医学概論 | 陰陽五行、気・血・水、経絡・経穴(ツボ) |
あん摩マッサージ指圧理論 | 手技の種類(揉捏法・圧迫法・叩打法など)、適応症と禁忌 |
④ 法律(関係法規)
あん摩マッサージ指圧師の業務に関する法律・制度を問われます。
科目 | 出題内容(例) |
---|---|
関係法規 | あん摩マッサージ指圧師法、医療法、広告規制、施術所の開設要件 |
3. 難易度と合格率
① 合格率
- 例年の合格率:70〜85%前後
- 2023年度(第31回):合格率 79.5%
- 2022年度(第30回):合格率 81.2%
② 難易度
- 解剖学・生理学・臨床医学は出題範囲が広く、難易度が高め。
- 学校での授業や実習をしっかり学んでいれば、合格しやすい試験。
- 東洋医学や法律は暗記が多く、重点的な学習が必要。
試験対策
1. 効果的な試験対策の流れ
① 試験範囲を把握する(出題傾向の確認)
まずは、どの科目から何が出題されるのかを把握することが大切です。
試験は、以下の4つの分野から出題されます。
分野 | 主な科目 | 対策ポイント |
---|---|---|
基礎医学 | 解剖学・生理学・病理学・公衆衛生学 | 暗記が多く、特に解剖学・生理学が重要 |
臨床医学 | 内科・外科・整形外科・神経科・リハビリ医学 | 代表的な病気の特徴とリハビリ方法を理解する |
東洋医学 | 東洋医学概論・あん摩マッサージ指圧理論 | ツボ・経絡・施術法の知識を正確に覚える |
関係法規 | あん摩マッサージ指圧師法・医療法・広告規制 | 法律は暗記すれば得点しやすい |
特に「解剖学・生理学・臨床医学」は難易度が高く、重点的に学習が必要です。
② 過去問を徹底的に解く(最低5年分)
- 過去問を繰り返し解くことで、出題傾向を把握する。
- 間違えた問題を分析し、弱点を補強する。
- 選択肢のパターンを覚える(似たような問題が毎年出題されるため)。
③ 苦手科目を重点的に補強する
解剖学・生理学の対策(最も出題数が多い)
- イラスト・図を活用し、視覚的に覚える(骨・筋肉・神経の構造を理解)。
- 用語の意味を正しく理解する(例:「腱」と「靭帯」の違い)。
- 過去問で問われた内容を中心に暗記する。
臨床医学の対策(病気・リハビリの知識)
- 代表的な疾患の特徴と治療法を覚える(例:脳卒中、骨折、腰痛)。
- リハビリ医学では、どの病気にどんな施術が有効かを整理する。
東洋医学の対策(ツボ・経絡)
- 主要なツボを正確に覚える(特に代表的な経絡)。
- 陰陽五行・気血水の理論を理解する(単純暗記ではなく、仕組みを知る)。
法律(関係法規)の対策(暗記で得点しやすい)
- 医療法・広告規制の内容をチェックする(過去問と同じ問題が出ることが多い)。
- 法律の条文を簡単にまとめ、キーワードを暗記する。
2. 科目別の具体的な試験対策
① 解剖学(最重要科目)
- 図や模型を使って学習する(イメージで覚える)。
- 部位ごとに細かく暗記する(例:「上肢」「下肢」「体幹」などに分類)。
- 筋肉や神経の働きを実際に体で確認しながら覚える。
② 生理学(暗記+理解が必要)
- ストーリーを作りながら覚える(例:血液が体内をどう流れるか)。
- ホルモンや神経は、働きと分泌場所をセットで暗記する。
③ 臨床医学(病気の特徴を理解)
- 代表的な病気の特徴とリハビリ方法をセットで覚える。
- 疾患ごとの「主な症状」と「施術の可否」を整理する。
3. 模擬試験で実力をチェック
- 本番の試験時間と同じ条件で模擬試験を受ける(時間配分の練習)。
- 得点が60%未満なら、苦手分野を中心に復習する。
- 解答を見直し、なぜ間違えたのかを分析する。
取得後に出来ること
1. あん摩・マッサージ・指圧の施術ができる(国家資格者のみ)
- 国家資格を持たない者が治療目的で施術を行うことは違法(医師・理学療法士などの例外を除く)。
- あん摩・マッサージ・指圧を用いて、筋肉のこりや痛みを和らげる施術が可能。
- 血行促進や疲労回復、リハビリ支援にも活用される。
2. 健康保険を利用した施術が可能(医師の同意が必要)
- 医師の同意がある場合、健康保険を適用した施術が可能。
- 保険適用される主な症状:
- 筋麻痺・関節拘縮(脳梗塞後遺症など)
- 慢性的な痛みや運動機能障害
- 訪問マッサージ(在宅医療)でも保険適用が可能(寝たきりや歩行困難な患者向け)。
3. 施術院の開業が可能(独立・店舗経営)
- 施術所(治療院)を開業し、独立して仕事ができる。
- 個人経営のほか、鍼灸院や整骨院と併設する形での開業も可能。
- 自由診療(保険を使わない施術)として、リラクゼーションやスポーツマッサージの提供も可能。
4. 訪問マッサージ(在宅施術)ができる
- 高齢者や障害者の自宅や介護施設を訪問し、施術を行うことが可能。
- 医師の同意があれば健康保険を適用できるため、需要が高い。
- 介護保険施設(デイサービス・特別養護老人ホームなど)と連携し、機能回復マッサージを提供できる。
5. 医療・介護・福祉分野で働く
- 病院・クリニック(リハビリ科・整形外科・神経内科など)で施術を行う。
- 介護施設(デイサービス・有料老人ホーム)で、高齢者向けの機能回復マッサージを提供。
- 特別支援学校・障害者施設で、身体障害者のリハビリ支援を担当。
6. スポーツ分野で活躍できる
- スポーツ選手やアスリート向けのケアが可能(筋肉の疲労回復・柔軟性向上など)。
- スポーツトレーナーとして、コンディショニングやリハビリをサポート。
- チーム専属のマッサージ師としてプロスポーツチームに所属することも可能。
7. リラクゼーション業界で働く
- リラクゼーションサロン・スパ・ホテルなどで施術を提供(国家資格があるため、信頼性が高い)。
- 無資格者とは異なり、治療目的の施術も行えるため、差別化が可能。
- 企業の福利厚生として、従業員向けのマッサージを担当することも可能(企業向け訪問施術)。
8. 鍼灸師・柔道整復師とのダブルライセンスでキャリアアップ
資格 | 追加取得のメリット |
---|---|
鍼灸師(はり師・きゅう師) | 鍼(はり)・灸(きゅう)を用いた施術が可能。東洋医学の知識がさらに広がる。 |
柔道整復師 | 骨折・脱臼・捻挫・打撲の治療が可能。整骨院の開業ができる。 |
複数の資格を取得することで、施術の幅が広がり、開業の際にも強みになる。
9. 海外での活動も可能(国家資格の信頼性)
- 日本の国家資格は海外でも評価されており、海外での施術活動も可能(国による)。
- 海外のスパ・マッサージサロンで働く(アメリカ・ヨーロッパ・東南アジアなど)。
- 海外でのスポーツトレーナーやリハビリスタッフとして活動。
10. 教育・講師として活躍する
- 専門学校や研修機関で、あん摩マッサージ指圧の指導を担当する。
- 企業・スポーツ団体向けに、健康管理や施術技術の研修を行う。
- YouTubeやSNSで施術の技術解説を発信し、オンライン講座を開く。