骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷(肉離れ)などの外傷に対して、手技を用いた施術(整復・固定・後療法)を行う国家資格です。
整形外科とは異なり、手術や薬を使わずに、人体の自然治癒力を活かした施術を行うことが特徴です。
- 国家資格(厚生労働省管轄)
- 整骨院・接骨院を開業できる(独立可能)
- 医療機関・介護・スポーツ業界でも活躍できる
- 健康保険の適用が可能(一定条件あり)
受験資格と難易度
1. 受験資格(国家試験を受けるための条件)
柔道整復師の国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
柔道整復師養成施設(専門学校・大学)を修了する(一般的なルート)
厚生労働省が認定する柔道整復師養成施設(専門学校・大学)に入学し、3年以上のカリキュラムを修了する必要があります。
入学資格(養成施設の入学要件)
- 高等学校卒業(または高卒認定試験合格者)
- 社会人からの入学も可能(夜間部・通信制コースがある学校もある)
修業期間
- 全日制:3年間(昼間部)
- 夜間部:3~4年間(社会人向け)
学ぶ内容(主な科目)
- 解剖学・生理学・運動学(人体の構造・機能)
- 病理学・一般臨床医学・整形外科学(疾患や外傷の知識)
- 柔道整復理論・実技(手技療法・固定法・包帯法など)
- 関係法規・健康保険制度(法律や保険制度)
2. 国家試験の難易度(合格率と試験の特徴)
合格率(直近の試験データ)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年度(第31回) | 5,787人 | 3,790人 | 65.4% |
2022年度(第30回) | 5,985人 | 4,137人 | 69.1% |
2021年度(第29回) | 6,183人 | 4,005人 | 64.7% |
- 合格率は約60〜75%前後で、国家試験の中では中程度の難易度
- 試験範囲が広いため、解剖学・生理学・整形外科学を重点的に学習する必要がある
試験内容
1. 試験概要
- 試験日程:毎年1回(例年3月上旬)
- 試験時間:1日(午前・午後の2部構成)
- 試験形式:筆記試験(五肢択一のマークシート方式)
- 試験会場:全国の指定会場(東京・大阪・福岡など)
- 合格基準:総得点の60%以上(ただし、各科目に最低ラインあり)
2. 試験科目と出題範囲
試験は、基礎医学・臨床医学・柔道整復理論・関係法規の4つの分野から出題されます。
① 基礎医学(人体の構造・機能)
医療従事者として必要な解剖学・生理学・運動学・病理学の知識が問われます。
科目 | 出題範囲(例) |
---|---|
解剖学 | 骨・筋肉・神経・内臓の構造(骨格系・筋系・神経系・消化器系など) |
生理学 | 血液・循環・神経・内分泌・消化・呼吸・運動機能 |
運動学 | 関節の動き・筋肉の作用・身体のバランス・歩行 |
病理学概論 | 炎症・腫瘍・感染症・免疫機能 |
② 臨床医学(病気・外傷の知識)
柔道整復師が扱う疾患や、一般的な医療知識について問われます。
科目 | 出題範囲(例) |
---|---|
一般臨床医学 | 内科・外科・整形外科・神経科・小児科の疾患 |
整形外科学 | 骨折・脱臼・捻挫・打撲・スポーツ障害・運動器疾患 |
リハビリテーション医学 | 筋力回復・可動域訓練・歩行訓練 |
③ 柔道整復理論(施術の知識と技術)
柔道整復師としての専門技術(整復法・固定法・リハビリ技術)について問われます。
科目 | 出題範囲(例) |
---|---|
柔道整復理論 | 手技療法・固定法(包帯・ギプス)・リハビリ技術 |
外傷処置法 | アイシング・圧迫・テーピング・ストレッチ |
④ 関係法規(法律・保険制度)
柔道整復師が業務を行う上で必要な法律・健康保険制度について問われます。
科目 | 出題範囲(例) |
---|---|
関係法規 | 柔道整復師法・医療法・健康保険制度・施術録の管理 |
試験対策
1. 効果的な試験対策の流れ
① 受験する試験の範囲を把握する
試験は、基礎医学・臨床医学・柔道整復理論・関係法規の4分野から出題されます。
まずは、どの科目から何が出題されるのかを把握することが大切です。
分野 | 主な科目 | 対策ポイント |
---|---|---|
基礎医学 | 解剖学・生理学・病理学・運動学 | 暗記量が多く、図やイメージを活用して学習 |
臨床医学 | 一般臨床医学・整形外科学・リハビリテーション医学 | 外傷・疾病の特徴、診断・治療法を理解する |
柔道整復理論 | 手技療法・固定法・リハビリ技術 | 手技の目的や禁忌、適用条件を整理する |
関係法規 | 柔道整復師法・医療法・健康保険制度 | 法律の条文を理解し、過去問で頻出問題を確認 |
特に「解剖学・生理学・整形外科学」の対策が重要で、苦手分野を早めに把握することが合格の鍵です。
② 過去問を徹底的に解く(最低5年分)
- 過去問を繰り返し解くことで、出題傾向を把握する。
- 間違えた問題は「なぜ間違えたのか?」を分析し、弱点を補強する。
- 選択肢のパターンを覚える(似たような問題が毎年出題されるため)。
③ 苦手科目を重点的に補強する
解剖学・生理学の対策(最も出題数が多い)
- イラスト・図を活用し、視覚的に覚える(骨・筋肉・神経の構造を理解)。
- 用語の意味を正しく理解する(例:「腱」と「靭帯」の違い)。
- 過去問で問われた内容を中心に暗記する。
臨床医学(整形外科学)の対策(外傷・疾患の理解)
- 代表的な疾患の特徴と治療法を覚える(例:骨折・脱臼・捻挫・打撲)。
- リハビリ医学では、どの病気にどんな施術が有効かを整理する。
柔道整復理論の対策(施術法の理解)
- 固定法(包帯・シーネ・ギプス)の手順を整理する。
- 手技の適用条件と禁忌を正確に覚える。
法律(関係法規)の対策(暗記で得点しやすい)
- 医療法・健康保険の仕組みを整理する。
- 過去問と同じ問題が出ることが多いため、繰り返し確認する。
2. 科目別の具体的な試験対策
① 解剖学(最重要科目)
- 図や模型を使って学習する(イメージで覚える)。
- 部位ごとに細かく暗記する(例:「上肢」「下肢」「体幹」などに分類)。
② 生理学(暗記+理解が必要)
- ストーリーを作りながら覚える(例:血液が体内をどう流れるか)。
- ホルモンや神経は、働きと分泌場所をセットで暗記する。
③ 整形外科学(外傷の治療法)
- 疾患ごとの「主な症状」と「施術の可否」を整理する。
- リハビリの方法を症例別にまとめる。
3. 模擬試験で実力をチェック
- 本番の試験時間と同じ条件で模擬試験を受ける(時間配分の練習)。
- 得点が60%未満なら、苦手分野を中心に復習する。
取得後に出来ること
1. 接骨院・整骨院を開業できる(独立可能)
柔道整復師は、接骨院(整骨院)を開業することができます。健康保険を適用した施術が可能で、個人経営のため自由な働き方ができる点が魅力です。地域密着型の治療院として、患者を継続的に診ることができます。
2. 接骨院・整骨院・病院で勤務
個人開業以外に、既存の接骨院・整骨院や、整形外科・リハビリ科のある病院で働くこともできます。スポーツジムやフィットネスクラブでの勤務も増えており、選択肢は広がっています。
3. 訪問施術・在宅リハビリ(介護分野)
高齢者や障害者の自宅や介護施設を訪問し、施術を行うことができます。歩行困難な患者に対し、関節の動きを改善する機能訓練を提供し、リハビリの補助を行うことも可能です。
4. スポーツトレーナーとしての活動
スポーツ選手やアスリート向けに、ケガの応急処置やリハビリ指導、コンディショニングを行うことができます。スポーツジム、フィットネスクラブ、プロスポーツチームなどでの活動が増えています。
5. 医療機関・整形外科と連携した施術
医師の指示のもと、整形外科やリハビリ科で治療を行うことができます。外科的手術が不要な外傷(捻挫・打撲など)の施術を担当し、理学療法士や作業療法士と連携してリハビリプログラムを作成することもあります。
6. 他の資格との組み合わせ(ダブルライセンス)
資格 | 追加取得のメリット |
---|---|
鍼灸師(はり師・きゅう師) | 鍼(はり)・灸(きゅう)を用いた施術が可能になり、東洋医学の知識が広がる |
あん摩マッサージ指圧師 | マッサージ・指圧が可能になり、リラクゼーションや訪問マッサージにも対応できる |
7. リラクゼーション業界での活動
リラクゼーションサロン・スパ・ホテルなどで施術を提供することができます。無資格者との差別化ができるため、国家資格者として信頼性が高まります。企業の福利厚生として、従業員向けの施術を行うケースも増えています。
8. 海外での施術活動
日本の国家資格は海外でも評価されており、海外のスパやスポーツトレーナーとして活動することも可能です。ただし、国によっては追加の資格が必要になることがあります。
9. 教育・講師としての活動
柔道整復師養成校(専門学校・大学)で講師として指導することができます。企業やスポーツ団体向けに健康管理や施術技術の研修を行ったり、YouTubeやSNSで技術解説を発信することも可能です。