病気やケガ、障害などによって身体機能が低下した人に対し、運動療法や物理療法を用いたリハビリテーションを行う専門職 で作業療法士(OT)と並び、リハビリテーションの中心的な役割を担います。
理学療法士の主な役割
- 運動機能の回復訓練(歩行訓練・筋力強化・ストレッチ)
- 関節可動域の改善(関節の硬さを防ぐ訓練)
- 疼痛(痛み)の軽減(電気療法・温熱療法などの物理療法)
- 日常生活動作(ADL)の向上(ベッド上動作・移乗動作の訓練)
- スポーツリハビリ(スポーツ選手のリハビリや障害予防)
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
理学療法士国家試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 養成校(大学・短大・専門学校)を卒業する
- 文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した理学療法士養成施設(3年以上の課程)を修了すること。
- 2024年4月以降に入学した人は、「学士」または「専門士(理学療法)」の称号を取得することが必須。
② 海外で理学療法士の資格を取得し、厚生労働大臣の認定を受ける
- 外国の理学療法士養成課程を修了し、日本の基準に適合すると認められた場合に受験資格が得られる。
2. 試験の難易度
理学療法士国家試験の難易度は中程度~やや高めとされ、基礎から臨床応用までの幅広い知識が求められます。
① 合格率
- 約70~90%(年度によって変動)
- 作業療法士(OT)より若干低い傾向(試験範囲が広く、問題数が多いため)
② 出題範囲と難易度
- 基礎医学(解剖学・生理学・運動学) が重要
- 臨床医学・リハビリ技術の理解が必要(応用問題が増加傾向)
- 近年は国試の難化傾向が指摘されている
③ 合格基準
- 総得点の60%以上
- 必修問題は80%以上の正答が必要
注意点:実習の評価基準が厳しくなり、実習の単位を取得できないと受験資格を得られないこともあるため、学校での学習や実習の取り組みが重要。
試験内容
1. 試験概要
- 試験形式:五肢択一のマークシート方式
- 試験時間:午前・午後の2部構成
- 合格基準:
- 必修問題の得点率80%以上(30問中24問以上)
- 総合得点の60%以上
2. 試験科目と出題範囲
① 必修問題(30問)
- 基礎的な知識を問う問題(全体の約15%)
- 得点率80%以上が必要
主な出題内容:
- 理学療法の基本理念
- 人体の構造と機能(解剖学・生理学・運動学)
- 代表的な疾患・障害の概要(脳卒中、骨折、脊髄損傷など)
- リハビリテーションの基本原則
- 医療安全・倫理・関連法規
② 一般問題(170問)
- 基礎から臨床応用までの知識が問われる
- 各科目のバランスを考えて学習が必要
1. 基礎医学(解剖学・生理学・運動学など)
- 骨・関節・筋肉の構造と機能
- 神経系(中枢神経・末梢神経・自律神経)
- 循環器・呼吸器・消化器の働き
- 運動制御・感覚機能
2. 臨床医学(疾患・障害の知識)
- 整形外科疾患(骨折、変形性関節症、脊髄損傷)
- 神経系疾患(脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症)
- 内科疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患)
- スポーツ障害(靭帯損傷、疲労骨折)
3. 理学療法学(評価・治療技術)
- 理学療法の理論と方法
- 評価法(MMT、ROM測定、バランステスト)
- 歩行分析・動作分析
- 日常生活動作(ADL)の訓練
- 義肢・装具療法
- 物理療法(電気刺激療法・温熱療法・寒冷療法)
4. 医療制度・法律・倫理
- 医療法・障害者総合支援法・介護保険法
- インフォームドコンセント・守秘義務
- チーム医療・地域包括ケアシステム
5. 臨床応用(症例問題・総合問題)
- 患者の症例を想定し、最適なリハビリプランを選択
- 診断・評価・治療計画の立案
- 多職種連携のあり方
3. 合格基準
- 総合点の60%以上 の正答が必要(年度によって変動)
- 必修問題は80%以上(30問中24問以上)
- 年度によって補正が入る場合あり
試験対策
1. 効果的な学習方法
① 基礎固め(6~4ヶ月前)
- 教科書・参考書を読み込み、重要ポイントを整理
- 解剖学・生理学・運動学を重点的に学習
- リハビリテーション医学の理解を深める
- どの疾患にどの理学療法が有効かを整理
- 法律・医療制度はまとめノートを作る
- 医療法・介護保険法・障害者総合支援法
② 過去問演習(3~2ヶ月前)
- 最低5年分の過去問を解く
- 「なぜこの答えになるのか?」を理解しながら学習
- 頻出問題を重点的に対策
- 繰り返し出題されるテーマを優先
③ 実践力をつける(1ヶ月前~)
- 時間を計って模試形式で演習
- 本番と同じ環境で解く
- 間違えた問題をリスト化
- 弱点を明確にし、最後まで克服する
3. 必修問題対策(合格ライン80%以上)
- 基礎医学(解剖・生理・運動学)を重点的に学習
- 疾患・リハビリ方法を整理して暗記
- 法律・倫理問題は一問一答形式で対策
4. おすすめの教材・勉強法
① 教科書・参考書
- 「標準理学療法学」シリーズ(医学書院)
- 「国試の達人 理学療法士」(メディックメディア)
- 「クエスチョン・バンク 理学療法士」(医歯薬出版)
② 過去問・問題集
- 厚生労働省の公式過去問サイト
- 「国家試験対策 過去問5年分徹底解説」(中央法規)
③ スマホアプリ・オンライン学習
- 理学療法士国家試験対策アプリ(過去問演習に便利)
- YouTubeの理学療法士向け講義動画(視覚的に理解しやすい)
取得後に出来ること
1. 医療分野での活躍
① 病院・クリニックでのリハビリテーション
- 急性期病院(手術後や発症直後のリハビリ)
- 回復期リハビリ病院(自宅復帰を目指した歩行訓練・日常動作訓練)
- 慢性期・維持期病院(高齢者や慢性疾患患者の身体機能維持)
- 整形外科クリニック(スポーツ障害や関節疾患のリハビリ)
② 訪問リハビリテーション
- 在宅でのリハビリ指導(高齢者・障害者向け)
- 住宅環境の調整アドバイス(手すり設置・段差解消など)
- 介護者(家族)への指導(適切な介助方法のアドバイス)
2. 介護・福祉分野での活躍
① 介護施設
- 介護老人保健施設(老健):入所者のリハビリ・介護予防
- デイサービス・デイケア:通所者の運動機能維持・転倒予防訓練
- 特別養護老人ホーム(特養):高齢者の生活動作の維持・向上
② 障害者支援
- 就労移行支援施設:障害者の職場復帰を支援
- 児童発達支援・放課後デイサービス:発達障害児の運動機能向上
3. スポーツ分野での活躍
① スポーツリハビリテーション
- プロ・アマチュアスポーツ選手のリハビリ・トレーニング指導
- スポーツチーム・クラブでのメディカルサポート
- ケガの予防やパフォーマンス向上のためのトレーニング指導
② トレーナー・コンディショニング指導
- アスリートや一般の人向けに体の使い方を指導
- 整骨院やフィットネスジムでのリハビリ指導
4. 企業・行政分野での活躍
① 医療・福祉機器メーカー
- 義肢装具・リハビリ機器の開発・販売・研究
- 福祉用具アドバイザーとして利用者の支援
② 企業での健康管理
- 企業内の健康管理部門で従業員の健康指導・姿勢指導
- 働く人の身体負担軽減を目的とした職場環境改善アドバイス
③ 公務員(行政職)
- 市区町村の福祉課で介護予防事業を担当
- ハローワークや障害者就労支援センターでリハビリ業務
5. キャリアアップ・資格の活用
① 認定理学療法士・専門理学療法士
- 日本理学療法士協会が認定する資格でスキルアップ可能
- 認定理学療法士(特定分野のスペシャリスト)
- 専門理学療法士(より高度な専門知識を持つPT)
② 大学院進学・研究
- 修士・博士号を取得し、教育・研究分野で活躍
- 大学や専門学校の教員として次世代のPTを育成
③ 独立開業
- 理学療法士単独での開業は不可だが、介護事業(訪問リハビリ、デイサービス) などを立ち上げることは可能