労働安全衛生法に基づき、事業場で働く労働者の健康保持や職場の衛生環境を管理するための国家資格です。
従業員が50人以上の事業場では、一定数の衛生管理者の選任が義務付けられており、労働者の安全と健康を守るために重要な役割を果たします。
資格には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者があり、取り扱える業種範囲や試験内容に違いがあります。
第一種と第二種の違い
項目 | 第一種衛生管理者 | 第二種衛生管理者 |
---|---|---|
対応業種 | 全ての業種で選任可能 | 一部の業種のみ(有害業務を含まない業種) |
主な対象業種 | 製造業、建設業、化学工場など有害業務を含む職場 | 事務職中心のオフィス、小売業、飲食業など |
試験科目数 | 5科目 | 3科目 |
難易度 | やや高い | 比較的容易 |
合格率 | 約40〜50% | 約50〜60% |
メリット | 全業種対応で幅広く活躍可能 | 対象業種が限られるが取得しやすい |
受験資格と難易度
1. 受験資格
衛生管理者試験(第一種・第二種)を受験するには、労働安全衛生法に基づく一定の学歴・実務経験が必要です。年齢制限はありませんが、学歴や職務経験により受験資格が異なります。
共通の受験資格
学歴 | 必要な実務経験 |
---|---|
大学・短大卒(衛生・安全関連学科) | 1年以上 |
大学・短大卒(その他の学科) | 3年以上 |
高等学校卒業 | 5年以上 |
高等専門学校(衛生・安全関連課程修了者) | 1年以上 |
高等専門学校(その他の課程修了者) | 3年以上 |
実務経験のみ(学歴不問) | 10年以上 |
対象となる実務経験の内容
- 衛生管理に関する業務(職場の安全管理、健康診断実施、作業環境測定など)
- 労働者の健康維持に関連する実務
- 労働災害防止のための職場巡視や指導
2. 難易度と合格率
第一種と第二種では試験範囲や難易度が異なります。
資格 | 合格率 | 難易度 | 試験範囲の広さ | 特徴 |
---|---|---|---|---|
第一種衛生管理者 | 約40〜50% | やや高い | 広い(有害業務含む) | 全業種対応。計算問題や有害業務関連の問題が難関。 |
第二種衛生管理者 | 約50〜60% | 普通 | 狭い(有害業務除く) | 有害業務が出題されないため、比較的学習しやすい。 |
難易度の違い
-
第一種衛生管理者
- 製造業、建設業、化学工場など有害業務を含む職場で必要。
- 有害物質や作業環境測定に関する問題が含まれ、計算問題も多く出題。
- 出題範囲が広いため、しっかりした学習が必要。
-
第二種衛生管理者
- 事務所、小売業、飲食業など有害業務がない職場で選任可能。
- 労働生理や基本的な衛生管理が中心で、比較的暗記中心の内容。
- 法令や管理手法の基本を理解すれば合格しやすい。
試験内容
第一種衛生管理者は全ての業種で必要な知識が問われ、第二種衛生管理者は有害業務を除いた業種が対象で、試験範囲が狭くなります。
試験はマークシート方式で、四肢択一式の問題が出題されます。第一種は5科目、第二種は3科目で構成され、各科目において一定以上の得点が求められます。
1. 試験概要
資格区分 | 科目数 | 試験時間 | 問題数 | 合格基準 |
---|---|---|---|---|
第一種 | 5科目 | 3時間 | 約44問 | 総得点60%以上、かつ各科目40%以上 |
第二種 | 3科目 | 2時間30分 | 約30問 | 総得点60%以上、かつ各科目40%以上 |
2. 第一種衛生管理者試験の科目内容
第一種衛生管理者は、有害業務を含む職場での衛生管理に必要な知識を問うため、広範囲から出題されます。
2.1 労働衛生(有害業務含む)
出題範囲:
- 有害物質(有機溶剤、粉じん、金属、有毒ガス)の影響と対策
- 作業環境測定方法と評価基準
- 換気装置や保護具の使用方法
- 温熱環境、騒音、振動の管理方法
2.2 労働生理
出題範囲:
- 人体の構造と機能(循環器、呼吸器、神経系など)
- 体温調節機能と熱中症対策
- 疲労・ストレスとその管理方法
- 作業姿勢と生産性への影響
2.3 関係法令
出題範囲:
- 労働安全衛生法の基本事項
- 労働基準法との関連
- 衛生管理者の職務と法的義務
- 作業環境測定、特定作業、健康診断の義務規定
2.4 労働安全衛生法規
出題範囲:
- 労働安全衛生法の詳細(特定作業の規制、災害防止規定)
- 労働災害発生時の報告義務
- 保護具の着用義務と指導方法
2.5 労働管理
出題範囲:
- 作業時間と休憩の基準
- 勤務形態と健康への影響(交代制勤務、深夜労働など)
- 作業手順の改善と作業環境管理
3. 第二種衛生管理者試験の科目内容
第二種衛生管理者試験は、有害業務に関する内容が含まれないため、オフィスや非製造業向けの基本的な衛生管理知識が問われます。
3.1 労働衛生(有害業務除く)
出題範囲:
- 室内環境の管理(空調、照明、清潔保持)
- 作業姿勢、VDT作業(パソコン作業)の健康影響
- 適切な作業環境の確保方法
3.2 労働生理
※第一種と同様の範囲。
- 体温調節機能、ストレス管理、疲労回復法が中心。
3.3 関係法令
※第一種と共通だが、有害業務に関する条文は除外。
- 衛生管理者の職務範囲と選任条件
- 健康診断の実施義務、災害発生時の報告義務
試験対策
1. 科目別対策ポイント
労働衛生(第一種・第二種)
重要ポイント
- 第一種: 有害物質(有機溶剤、粉じん、金属)の影響と対策を覚える。
- 第二種: 室内環境管理(空調、照明、VDT作業)に注力。
対策方法
- 有害物質は発生源・影響・対策方法をセットで暗記。
- 空気環境の基準値(CO₂濃度、温湿度基準)を覚える。
- 作業姿勢やVDT作業の休憩時間基準を暗記。
労働生理
重要ポイント
- 熱中症予防、疲労管理、ストレス対策に関する問題が頻出。
- 循環器、呼吸器、神経系の基本知識が問われる。
対策方法
- 体温調節メカニズムと熱中症時の初期対応を覚える。
- ストレスチェック制度や健康診断の基準値も確認。
- 実際の作業環境での健康障害事例を学習。
関係法令
重要ポイント
- 数字問題が最頻出。(例: 健康診断実施頻度、災害報告期限)
- 衛生管理者の選任条件と職務範囲は必ず出題。
対策方法
- 数字や罰則を表にして暗記カードを作成。
- 直前期に毎日確認して記憶を強化。
- 法改正があれば最新情報を取り入れる。
計算問題対策(主に第一種対象)
出題範囲
- 換気量計算、濃度希釈計算、曝露限界値計算。
対策方法
- 公式暗記が最優先。
- 計算過程を書き残す癖をつけ、ミスを減らす。
- 毎日1問ずつ計算問題を解いて慣れる。
2. よくあるミスとその対策
よくあるミス | 対策方法 |
---|---|
法令問題で数字の覚え間違い | 暗記カードで毎日確認。直前期は集中復習。 |
計算問題で単位換算ミス | 問題に単位を書き出して慎重に計算。 |
問題文の読み飛ばし | キーワードに下線を引き、選択肢を全て確認。 |
記憶が曖昧なまま模擬試験挑戦 | 苦手科目は基礎から再復習。 |
取得後に出来ること
1. 衛生管理者の主な職務内容
衛生管理者は、労働者の健康保持・作業環境の改善・安全衛生教育の実施を通じて、職場の快適な作業環境を確保します。
主な業務内容
-
職場の衛生管理
- 換気、温湿度、照明、騒音の管理
- 有害物質の管理と排除
- 作業場所の清掃状況やトイレ設備の衛生確認
-
労働者の健康管理
- 定期健康診断の実施・結果確認
- 健康診断後のフォローアップと就業判定
- 熱中症や過労防止のための教育・指導
-
作業環境測定と改善提案
- 有害業務がある職場での環境測定
- 測定結果に基づく改善計画の立案・実施
-
安全衛生委員会への参加・報告
- 月1回の委員会に出席し、職場の衛生状況を報告
- 労働災害の再発防止策の提案
-
労働者への安全衛生教育
- 新入社員への衛生教育実施
- 有害作業に関する特別教育の実施
2. 第一種衛生管理者取得後にできること
第一種衛生管理者は全ての業種に対応可能で、特に有害業務を含む職場での衛生管理が求められます。
対象業種
- 製造業、建設業、運送業、鉱業
- 化学工場、鉄鋼業、電気ガス業
- 廃棄物処理業、食品加工業など
取得後にできる業務
- 有害物質取り扱い作業場での作業環境測定と改善
- 騒音、振動、有機溶剤作業など有害業務の衛生管理
- 作業手順の改善や保護具の選定・使用指導
- 作業者の健康障害予防策の実施
メリット
- 全業種で衛生管理者に選任されることができるため、キャリアの幅が広がる。
- 有害業務のある職場での指導や改善提案ができる。
- 工場や建設現場での安全衛生管理責任者になれる。
3. 第二種衛生管理者取得後にできること
第二種衛生管理者は、有害業務を含まない職場に限定されますが、多くの事業所で必要とされます。
対象業種
- 事務所、飲食業、小売業、サービス業
- 医療・介護施設、学校、ホテル業
取得後にできる業務
- 室内作業場での空気環境・照度・温湿度管理
- 労働時間管理や休憩指導
- VDT作業(パソコン業務)の作業環境改善
- 健康診断の管理と労働者への健康指導
メリット
- 事務系職場での衛生管理者に選任されやすい。
- オフィス環境の改善や職場の快適性向上に貢献できる。
- 多くのサービス業で必須の資格として重宝される。
4. 活躍できる職場と業務内容
業種 | 第一種取得者の役割 | 第二種取得者の役割 |
---|---|---|
製造業 | 有害物質管理、作業環境測定、有害作業の改善指導 | – |
建設業 | 作業環境の安全確保、熱中症対策の実施 | – |
事務所 | オフィス環境の管理、健康診断結果のフォロー | 空気環境・作業姿勢の改善 |
小売業 | 従業員の労働時間・健康管理 | 衛生環境の維持 |
飲食業 | 食品衛生管理、職場の清潔保持 | 厨房作業の衛生管理 |
医療・福祉施設 | 職員の健康指導、感染症対策 | 空調や照明管理、衛生教育 |
5. 取得後のキャリアアップ・メリット
① 職場での評価向上・昇進のチャンス
- 安全衛生責任者や管理職への昇進が有利。
- 資格保有者に資格手当(月5,000〜20,000円)が支給される企業も多い。
② 転職・就職で有利
- 従業員50人以上の事業場では必須の資格のため、転職市場で高評価。
- 製造業、建設業、サービス業、医療施設など幅広い業界で需要がある。
③ 独立・フリーランスとしての活躍
- 衛生管理や安全コンサルタントとして独立可能。
- 小規模事業所への衛生管理指導で安定した収入源を確保。
④ 労働災害防止に直接貢献
- 従業員の安全を守る重要な役割を担える。
- 労働環境の改善で職場全体の生産性向上に寄与。
6. 他の資格との併用で広がる業務範囲
併用資格 | 活用例 |
---|---|
作業環境測定士 | 作業場の環境測定を直接実施でき、衛生管理の幅が広がる。 |
公害防止管理者 | 工場での大気、水質汚染管理も兼任可能。 |
防火管理者 | 防災対策と衛生管理の両面から職場安全を強化。 |
衛生工学衛生管理者 | 高度な作業環境改善が可能。 |
7. 実務例:資格取得後の具体的な活動
事例1: 製造業での活躍(第一種取得者)
- 有機溶剤作業場の換気設備点検と改善指導。
- 作業員への保護具使用指導と健康管理。
- 作業環境測定結果の分析と改善策提案。
事例2: オフィスでの衛生管理(第二種取得者)
- 冷暖房の温度設定管理で快適な作業環境を維持。
- パソコン作業者への休憩時間指導。
- 労働時間過多の従業員への健康相談実施。
事例3: 医療・介護施設での衛生管理
- 職員のストレスチェック実施とフォロー。
- 感染症予防対策の立案と職員教育。
- 空調設備の点検と改善提案。
まとめ
- 第一種衛生管理者は、製造業や建設業など有害業務を含む職場で幅広く活躍でき、キャリアの幅が広がります。
- 第二種衛生管理者は、事務所やサービス業など有害業務のない職場での衛生管理に有効で、取得しやすい資格です。
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