心の専門家として信頼される民間資格
- 臨床心理士は、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。
- 心理的問題を抱える人々に対して、カウンセリング・心理療法・心理検査・支援活動などを行う専門職です。
- 医療・福祉・教育・司法など、幅広い現場で活躍しています。
目次
受験資格と難易度
受験資格
原則として大学院修了が必要
臨床心理士の受験資格を得るためには、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する指定大学院(第1種または第2種)を修了することが基本条件です。
指定大学院とは?
- 協会がカリキュラムを審査・認定した、臨床心理士養成に特化した大学院。
- 2025年時点では、全国に100以上の指定大学院があります。
受験資格の詳細(主なパターン)
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第1種指定大学院の修士課程修了者
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最も一般的なルート。修了と同時に受験資格が得られます。
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第2種指定大学院の修士課程修了+実務経験2年以上
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第2種の場合は、卒業後に一定の実務経験が必要です。
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特例措置による受験(個別審査)
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長年の実務経験や学術的業績を持つ方などに限り、個別審査によって受験が認められることがあります(非常に稀)。
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難易度
総合的には「中〜難関レベル」
心理学を専門に学んできた方にとっては対応可能な内容ですが、専門性が非常に高く、実践力も求められるため難易度は高めです。
合格率の目安(年度によって変動)
試験 | 合格率 |
---|---|
一次試験(筆記) | 約70〜80% |
二次試験(面接) | 約85〜90% |
総合合格率(全体) | 約60〜65% |
※大学院での学びを前提とした専門資格であるため、一般的な資格試験とは難易度の感覚が異なります。
難易度が高い理由
- 出題範囲が広く、臨床心理学・心理査定・面接技法・各分野の実践知識が問われる
- 二次試験(面接)では、実務に即した倫理観や対応力が重視される
- 大学院時代の実習・スーパービジョンの経験が評価にも影響する
試験内容
臨床心理士資格試験の概要
試験実施主体
- 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会
- 年に1回実施(例年10月頃)
試験構成
- 一次試験(筆記試験)
- 二次試験(面接試験)
両方に合格した者が、臨床心理士として認定されます。
一次試験(筆記試験)
試験形式
- 択一式(マークシート)+記述式
- 試験時間:約3時間
- 問題数:60問前後(年によって変動あり)
出題範囲(5分野)
臨床心理学に関する理論と実践
- 精神分析、認知行動療法、来談者中心療法など
- 心理療法の理論と技法
- ケースフォーミュレーションの理解
心理的アセスメント
- 各種心理検査(MMPI、WAIS、ロールシャッハなど)
- 検査の実施・解釈・フィードバックの方法
- 多面的な評価に基づく支援方法
カウンセリング・心理療法の実際
- 面接技法、治療同盟、転移・逆転移の理解
- 対人関係・親子関係・発達課題への介入
臨床心理士の職責と倫理
- 守秘義務、記録管理、同意取得、倫理的ジレンマの対応
- 専門職としての自律性と連携のあり方
関連領域(教育・医療・福祉・司法・産業など)における実践知識
- スクールカウンセラー、医療現場での連携
- 福祉施設や司法領域での介入、産業カウンセリングなど
特徴
- 専門性の高い知識だけでなく、事例への応用力や判断力が問われる問題が出題されます。
- 記述問題では、短文で臨床的判断を論理的に説明する力が求められます。
二次試験(面接試験)
試験形式
- 個別面接形式(10〜15分程度)
- 面接官:2~3人
評価ポイント
志望動機・受験の経緯
- なぜ臨床心理士を目指したか
- どのような臨床経験を積んできたか
臨床的判断力
- 想定ケースへの対応(例:学校現場で不登校児にどう関わるか)
- アセスメントから介入までの考え方
倫理観・人間理解
- 守秘義務や倫理的ジレンマに対する考え方
- クライエントへの共感や支援姿勢
自己理解とスーパービジョンに対する態度
- 自分の弱点や課題をどう捉えているか
- 指導やフィードバックをどう活かしているか
試験対策
一次試験(筆記)の対策
対策の全体像
- 出題範囲が広く、大学院での学びを前提にした内容です。
- 暗記だけではなく、「理論をどう現場で使うか」といった応用力・臨床的思考力が必要です。
1. 試験ガイドラインの確認
- 日本臨床心理士資格認定協会の公式サイトにある出題範囲と受験案内を最初に確認しましょう。
- 出題分野や重点項目の理解が、効率的な学習につながります。
2. 定番の参考書・問題集で知識を固める
- 「臨床心理士試験対策 標準テキスト」などの定番書を活用
- 「過去問題集」「予想問題集」で出題形式に慣れる
- 問題演習+解説確認で、知識の定着と出題傾向の理解が深まります
3. 分野ごとの対策ポイント
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臨床心理学理論
→ 精神分析、認知行動療法、力動論など、主要理論と比較を整理 -
心理検査・アセスメント
→ WAIS、WISC、MMPI、投影法などの特徴・解釈方法を理解 -
倫理と法規
→ 守秘義務、インフォームド・コンセント、記録管理、関係法規(学校教育法、医療法など)を重点的に確認 -
各領域の実践
→ 教育、医療、福祉、司法、産業それぞれの支援内容と役割を理解
4. 記述問題の練習
- 過去問の記述問題を抜き出し、要点を簡潔にまとめる訓練をする
- 「現場でどう対応するか」を論理的に説明する力が問われるため、実習経験の振り返りも役立ちます
二次試験(面接)の対策
面接の目的
- 受験者の実践的な判断力・倫理観・コミュニケーション力を評価する試験です。
- 学力よりも人間的な成熟度や臨床的態度が重視されます。
1. 面接でよく聞かれる質問
- なぜ臨床心理士を目指したのですか?
- 実習で困難だったケースは?どう対応しましたか?
- 倫理的に迷ったことは?どう判断しましたか?
- 今後どのような分野で活動したいですか?
→ 上記に対する自分の経験に基づいた回答を用意し、整理しておくと安心です。
2. 実習経験の振り返り
- 大学院での臨床実習内容を詳細に振り返り、どんな学びがあったかをまとめておく
- 特に「自分の強み・課題」「支援において大切にした姿勢」などを言語化しておく
3. 模擬面接の実施
- 教員や同級生と模擬面接を行い、話す内容の整理や緊張対策をしておく
- 話しすぎず、質問に丁寧に答える姿勢が評価されます
4. 倫理的判断力の整理
-
守秘義務、境界の問題、援助者としての限界など、よくあるジレンマ事例にどう対応するかを準備しておく
取得後に出来ること
活躍できる主な分野と職場
医療・メンタルヘルス分野
- 精神科・心療内科・総合病院などで勤務
- うつ病、不安障害、PTSD、発達障害などの心理療法・心理検査
- 医師と連携して、治療の一環として心理支援を実施
教育・学校現場
- スクールカウンセラーとして、小・中・高校に常勤または非常勤で勤務
- 不登校、いじめ、発達課題を抱える生徒やその保護者への支援
- 教職員へのコンサルテーションも担当
福祉・児童支援分野
- 児童相談所・発達支援センター・障害者支援施設などで勤務
- 虐待・家庭内問題・発達支援など、子どもと家族の包括的支援
司法・矯正領域
- 家庭裁判所調査官・少年院・更生施設など
- 加害者・被害者への心理的ケア、再発防止のための面接・アセスメント
産業・企業領域
- 産業カウンセラー・EAP(従業員支援プログラム)担当
- ストレスチェック後のフォロー、職場のメンタルヘルス支援、復職支援など
大学・研究機関・教育分野
- 大学・専門学校での教員・研究者として心理学教育や研究に従事
- 臨床心理士養成のスーパーバイザー(指導者)として活躍
取得のメリット・信頼性
社会的信頼が高い資格
- 臨床心理士は、長年にわたって「心理支援の専門家」としての地位を確立
- 医療・教育・福祉などの公的機関でも高く評価されており、求人募集で「臨床心理士資格必須」と記載されることも多いです
公認心理師との相乗効果
- 国家資格である「公認心理師」との併用取得が主流
- 臨床心理士は専門性重視、公認心理師は制度対応重視
- 両方取得することで、就職先の幅・専門性・法的対応力が強化
働き方の多様性
常勤・非常勤・フリーランスも可能
- 医療・学校・福祉機関での常勤職員
- 複数施設を掛け持つ非常勤勤務
- 経験を積めば独立して開業カウンセラーも可能(※施設要件あり)
将来的なキャリアの広がり
指導者・教育者として
- 臨床心理士養成大学院で実習指導・教育
- 公的研修の講師や、後進の育成に携わる道もあり
専門領域の深化
-
特定領域(トラウマ、依存症、発達、家族療法など)で専門性を高め、専門機関や学会での活動も可能
その他医療系資格一覧
臨床心理士
精神対話士
生きがい情報士
認定心理カウンセラー
メンタルケア心理士認定試験
産業カウンセラー
メンタルヘルス・マネジメント検定試験
離婚カウンセラー
コンディショニングコーチ
肥満予防健康管理士
ヘルスケアアドバイザー
栄養情報担当者(NR)
運動療法士