警察官

警察業務に従事するために必要な資格であり、各都道府県警察や警視庁が実施する採用試験に合格することで取得できます。

警察官は、治安維持、犯罪予防、交通管理、災害対応など多岐にわたる業務を担当し、地域社会の安全を守る重要な役割を担います。

警察官の職種と業務内容

警察官は大きく分けて、公安系業務事務系業務があります。

職種区分 主な職務内容
交番勤務(地域警察) パトロール、巡回連絡、住民相談対応、交番勤務
交通警察 交通違反取締、事故処理、交通安全啓発
刑事警察 犯罪捜査、事件解決、証拠収集
生活安全課 少年非行防止、ストーカー対策、生活犯罪抑止
公安警察 テロ対策、情報収集、要人警護
機動隊 災害派遣、暴動鎮圧、重要施設警備
鑑識・科学捜査 現場検証、指紋・DNA鑑定、証拠分析

警察官試験の種類

警察官採用試験は、学歴や年齢区分ごとに試験区分が設けられています。

試験区分 対象者 主な採用先
警察官A(大学卒業程度) 大学卒業または卒業見込み者 都道府県警察、警視庁
警察官B(高校卒業程度) 高校卒業または卒業見込み者 都道府県警察、警視庁
経験者採用試験 社会人経験が一定年数ある者 管理職候補、専門職警察官

主催
警視庁、各都道府県警察本部

受験資格と難易度

1. 受験資格

年齢要件

試験区分 年齢要件
警察官A(大学卒程度) 21歳以上30歳未満(試験年度の4月1日時点)
警察官B(高校卒程度) 17歳以上30歳未満
経験者採用試験 30歳以上45歳未満(自治体による)
障がい者採用試験 18歳以上(自治体の規定による)

学歴要件

試験区分 学歴要件
警察官A 大学卒業または卒業見込み
警察官B 高校卒業または卒業見込み
経験者採用 高校卒以上+一定の社会人経験(2〜5年以上)

国籍・身体要件

項目 内容
国籍要件 日本国籍を有すること
視力要件 矯正視力0.6以上(両眼)、裸眼視力の制限なし
色覚要件 業務に支障がないこと
健康要件 身体的・精神的に職務遂行に支障がないこと
身体基準 身長・体重の制限は撤廃されていることが多い

その他の要件

  • 犯罪歴がないこと
  • 警察官としての職務に支障をきたす事情がないこと
  • 必要に応じて運転免許(採用後取得も可)

2. 難易度

警察官採用試験の難易度は、受験区分・自治体規模・採用人数によって異なります。
特に、大都市圏(東京都・大阪府・神奈川県など)の試験は倍率が高くなりやすいです。

合格率と競争倍率(目安)

試験区分 応募者数(目安) 最終合格者数 合格率 難易度特徴
警察官A 約15,000人 約2,000人 約10〜15% 教養試験・論文試験が難関
警察官B 約20,000人 約4,000人 約20〜25% 高校レベル問題が中心で比較的易しい
経験者採用 約2,000人 約300人 約10〜20% 面接・実務経験に基づく質問が多い

難易度に影響する要素

要素 内容
試験区分 警察官Aは大学卒程度問題で、Bより難易度が高い
自治体規模 大都市圏は受験者数が多く、競争倍率が高くなる
職種希望 機動隊や刑事志望は面接で厳しい質問が増える
体力試験対策 体力試験の合格基準は厳しく、準備が必要
面接試験の重視度 人物評価が高く、面接で失点すると不合格のリスク高い

試験別難易度比較

試験種別 難易度 ポイント
教養試験 中程度〜高 幅広い知識が問われる
論文試験 高い 論理的思考力と文章構成力が必要
体力試験 高い 日頃のトレーニングが必須
面接試験 非常に高い 人物重視で厳しい評価が行われる

他公務員試験との比較

試験種別 難易度 合格率 特徴
国家公務員総合職 非常に高い 約10% 最難関試験
地方公務員上級 高い 約10〜15% 出題範囲が広く、倍率が高い
警察官A試験 高い 約10〜15% 教養+体力+面接で総合力が問われる
警察官B試験 普通 約20〜25% 高校卒程度で受験可能
消防士採用試験 高い 約15〜20% 警察官試験と同様に体力が重視される

難易度を克服するポイント

ポイント 対策方法
教養試験対策 過去問演習で出題傾向を掴む
体力試験対策 毎日の筋トレ・ランニングで基準突破を目指す
論文試験対策 週1回の論文作成で文章構成力を強化
面接試験対策 模擬面接を繰り返し、志望動機と自己PRを明確に
時事問題対策 ニュースチェックと自治体の取り組みを把握

試験内容

第1次試験(筆記・体力・適性試験)第2次試験(面接・健康診断)**の2段階で構成されます。

試験区分(警察官A:大学卒程度、警察官B:高校卒程度)によって難易度や出題内容が異なりますが、試験構成は基本的に共通しています。

1. 第1次試験(筆記・体力・適性試験)

第1次試験では、基礎学力、判断力、体力、適性が評価されます。
ここでの成績が第2次試験への進出条件になります。

筆記試験(教養試験・論文試験)

① 教養試験

目的:

  • 一般的な基礎知識、論理的思考力、判断力、文章理解力を測定

試験概要:

  • 出題形式: 多肢選択式(4〜5択)
  • 問題数: 約40〜50問
  • 試験時間: 約2時間

出題分野と内容:

分野 内容 対策ポイント
言語理解 長文読解、語彙、文章整序 毎日読解問題を解き、速読力を向上
数的処理 計算問題、速さ、割合、確率、図形問題 問題集で反復練習、計算スピードを強化
論理的思考 論理パズル、条件整理問題、推論問題 問題を図にまとめる練習が有効
資料解釈 グラフ・表の読み取り問題 過去問を使ってデータ分析力を鍛える
社会科学 政治、経済、法律、時事問題 高校公民レベルの知識を復習
自然科学 物理、化学、生物、地学(高校基礎レベル) 基本的な公式と現象を暗記
人文科学 日本史、世界史、地理、文学・芸術 主要な歴史的事象と文化を押さえる
時事問題 国内外の政治・経済・社会・国際情勢 ニュースや自治体の公式サイトを確認
② 論文試験

目的:

  • 論理的思考力、問題解決力、文章構成力を評価

試験概要:

  • 出題形式: 記述式(600〜800字程度)
  • 試験時間: 約1時間

体力試験

警察官には、犯罪者の追跡や災害時の救助活動など、高い身体能力が求められます。
そのため、体力試験は合否に大きく影響します。

主な種目と合格基準(目安)

種目 内容 合格基準(男性) 合格基準(女性)
腕立て伏せ 上半身の筋力測定 30回以上 20回以上
上体起こし 腹筋の持久力測定 30回/30秒 25回/30秒
反復横跳び 敏捷性測定 50回以上/20秒 45回以上/20秒
1500m走 持久力測定 6分以内 7分以内
立ち幅跳び 脚力・瞬発力測定 2.0m以上 1.5m以上

適性試験

目的:

  • 判断力、注意力、性格適性を確認し、警察官としての適性を評価

試験内容:

試験種別 内容
判断・反応力試験 指示に従い素早く正しい選択を行う問題
性格診断 職務適性やストレス耐性を確認する質問形式
注意力試験 同じ数字・文字の中から異なるものを見つける問題

2. 第2次試験(人物試験・健康診断)

第1次試験の合格者を対象に、面接試験と健康診断が行われます。
この段階では、人物評価と職務適性が重視されます。

面接試験

目的:

  • 警察官としての資質、協調性、適応力を確認

試験形式:

  • 個別面接: 面接官3〜5名との質疑応答(約20〜30分)
  • 集団討論(実施自治体のみ): 複数人での討論(約30〜45分)

集団討論(実施自治体のみ)

目的:

  • 論理的思考力、協調性、リーダーシップを評価

健康診断

目的:

  • 身体的な健康状態を確認し、警察業務への適性を確認

実施項目:

項目 内容
視力検査 矯正視力で0.6以上(裸眼視力は不問の場合あり)
聴力検査 職務遂行に支障がないこと
心電図・血圧測定 異常がないこと
尿検査 糖尿病や腎臓疾患の有無確認
内科診察 全身状態のチェック

3. 試験全体の配点と合格基準

試験種別 配点比率目安 合格基準
教養試験 約30% 6割以上が目安
論文試験 約15% 論理的で具体的な意見が必要
体力試験 約25% 各種目で最低基準突破が必須
面接試験 約25% 志望動機、適性、協調性が重視
健康診断・適性検査 非公開 合否に直接影響、健康面の問題は要注意

試験対策

1. 全体的な学習戦略

学習開始の目安

  • 6か月以上前から準備を開始するのが理想
  • 筆記試験の基礎固めと体力強化を並行して進める
  • 3か月前から論文・面接対策に着手

効果的な学習・準備ポイント

ポイント 方法
早期の基礎力強化 教養試験の主要分野(数的処理・言語理解)から取り組む
過去問の活用 5年分以上の過去問を繰り返し演習
体力向上の継続 筋トレ・有酸素運動を定期的に実施
論文と面接対策を同時進行 志望動機の整理と論述練習を並行
時事問題への対応 ニュース確認を日課にし、重要なテーマをメモにまとめる

2. 教養試験対策

教養試験の出題分野と対策方法

出題分野 内容 対策方法
言語理解 長文読解、語彙問題 毎日読解問題を解き、速読力・理解力を強化
数的処理 計算問題、速さ、割合、確率、図形問題 問題集を使って反復練習、公式を暗記
論理的思考 論理パズル、条件整理問題、推論問題 問題を図や表にまとめて解答の整理を意識
資料解釈 グラフ・表の読み取り 過去問でデータ読み取り練習、視覚的な情報整理力向上
社会科学 政治、経済、法律、時事問題 高校公民の教科書で基礎固め、時事問題をニュースで確認
自然科学 物理、化学、生物、地学 高校レベルの問題集で基本問題を繰り返し解く
人文科学 日本史、世界史、地理、文学・芸術 高校参考書と問題集で基礎事項を暗記
時事問題 国内外の社会問題、国際関係 ニュースサイトや自治体HPから最新情報を収集

勉強法のポイント

  • 数的処理は毎日3問解き、解答時間を5分以内に
  • 長文読解は週に2〜3本を目標に演習
  • 時事問題はノートにまとめ、直前期に見直す

3. 論文試験対策

論文試験の特徴

  • 論理的な文章構成力警察業務に対する理解が評価される
  • 地域社会の課題解決や警察官の役割をテーマに出題されることが多い

主な出題テーマ例

  • 「少年犯罪防止のために警察ができること」
  • 「交通事故を減らすために必要な施策」
  • 「災害時における警察官の責任と行動指針」

論文作成のポイント

ステップ 内容
序論 問題提起と自分の立場を明確にする
本論 主張の根拠として、実例や具体策を挙げる
結論 主張の再確認と今後の課題や提案で締めくくる

論文対策法

  • 週に1本の論文を書いて添削を受ける
  • 警察業務に関連する時事問題を把握
  • 文章の簡潔さと説得力を意識して練習

4. 体力試験対策

試験種目と対策方法

種目 合格基準目安 効果的なトレーニング方法
腕立て伏せ 男性:30回以上/女性:20回以上 毎日3セットの筋トレで上半身強化
上体起こし 男性:30回/30秒、女性:25回/30秒 腹筋トレーニングを継続
反復横跳び 男性:50回/20秒、女性:45回/20秒 敏捷性を高めるステップ練習を実施
1500m走 男性:6分以内、女性:7分以内 週3回のジョギング+インターバルトレーニング
立ち幅跳び 男性:2.0m以上、女性:1.5m以上 下半身の瞬発力トレーニング

5. 適性試験対策

試験内容と対策方法

試験種別 内容 対策方法
判断力検査 指示に従い素早く正しい選択を行う問題 模擬問題を繰り返し、反応速度向上
性格診断 職務適性やストレス耐性を確認 正直に矛盾なく回答する
注意力検査 異なる文字や数字を迅速に見つける問題 1日5分の集中力トレーニング実施

6. 面接試験対策

面接で評価されるポイント

  • 志望動機の明確さと具体性
  • 職務理解度と自己分析の深さ
  • 協調性やチームワーク意識
  • 問題解決力とストレス耐性

よくある質問と対策

質問例 準備ポイント
なぜ警察官を志望したのですか? 自分の経験や価値観と結びつけて話す
警察官に求められる資質は何だと思う? 実務理解と具体例を挙げて説明
最近気になる社会問題は? 時事問題を日頃から調べ、自分の意見を持つ
チームでの役割経験は? 協調性やリーダーシップをアピール

面接対策の方法

  • 模擬面接を週1回実施し、緊張緩和と受け答えの改善
  • 自治体の方針や地域課題を事前に調査して面接に臨む
  • 姿勢・表情・話し方の練習で好印象を意識

取得後に出来ること

合格すると、警察学校での初任教育修了後に、各都道府県警察や警視庁で警察官として勤務が開始されます。

警察官は、治安維持、犯罪捜査、交通管理、災害対応、地域防犯など幅広い業務に従事し、社会の安全を支える重要な役割を果たします。

1. 初任後の研修と配属

警察学校での初任教育

  • 期間: 約6か月〜1年
  • 内容: 法律知識、柔道・剣道、射撃訓練、逮捕術、救急法など
  • 目的: 警察官として必要な基礎知識・技能・倫理観を養成

配属先と業務開始

  • 警察学校卒業後は、交番や駐在所に初任配属
  • その後、適性・希望・勤務実績に応じて各専門部署へ異動

2. 配属後の主な職務内容

2-1. 地域警察(交番・駐在所勤務)

主な業務 内容
パトロール活動 街中の巡回、犯罪抑止、交通違反指導
住民相談対応 トラブル相談、行方不明者対応、地域見守り活動
事件・事故初動対応 交通事故処理、現場保全、初期捜査対応
巡回連絡活動 地域住民や事業所への訪問、安全情報提供

2-2. 交通警察

主な業務 内容
交通取締り スピード違反や飲酒運転の検挙
事故現場対応 交通事故の原因調査、負傷者救助
交通安全教育 学校や地域での交通安全教室の実施
渋滞・交通整理 イベント時や災害時の交通管理

2-3. 刑事警察

主な業務 内容
犯罪捜査 強盗、詐欺、殺人事件などの捜査業務
証拠収集・分析 現場検証、指紋採取、映像解析
被疑者取り調べ 容疑者からの事情聴取、証拠照合
被害者支援 被害者への対応や保護支援

2-4. 生活安全警察

主な業務 内容
少年犯罪対策 非行少年への指導、学校・家庭との連携支援
ストーカー・DV対策 被害者保護、加害者への警告・逮捕
消費者被害防止 詐欺防止活動、高齢者への注意喚起
地域防犯活動 防犯パトロール、地域安全マップの作成

2-5. 公安警察・警備警察

主な業務 内容
テロ・スパイ対策 国家安全維持のための情報収集・監視
要人警護 VIPや外国要人の警備・護衛
暴力団対策 暴力団排除活動、違法行為の摘発
災害救助活動 大規模災害時の避難誘導、救助支援

3. キャリアパスと昇進ルート

警察官は、経験年数や実績に応じて昇進していきます。
巡査からスタートし、管理職や専門職にキャリアアップが可能です。

キャリア段階 目安年数 主な職務内容
巡査 1〜3年 基本業務(交番勤務、交通指導、巡回)
巡査長 3〜5年 若手の指導補助、現場統率
警部補 5〜10年 小規模チームのリーダー、捜査指揮
警部 10年以上 課や部署のマネジメント
警視・警視正 15年以上 管理職として警察署全体の統括
警視監以上 20年以上 都道府県警トップや国家公安委員会関連

4. 年収・待遇

年収モデル

階級 年収目安 備考
巡査(初任) 約350〜400万円 地域手当・夜勤手当含む
巡査長 約450〜500万円 勤務実績に応じ昇給
警部補 約600〜700万円 管理職手当あり
警部 約800〜900万円 マネジメント業務に従事
警視以上 約1,000万円超 部門全体の責任を担う

福利厚生

  • 賞与支給: 年2回(年間4.4〜4.6か月分)
  • 手当: 住宅手当、通勤手当、扶養手当、夜勤・危険手当
  • 休暇制度: 有給休暇、育児休暇、介護休暇、特別休暇
  • 退職金制度: 勤続年数に応じた支給あり
  • 共済組合加入: 医療費補助、福利厚生施設の利用可

5. 取得後のメリット

メリット 内容
社会貢献度が高い 地域住民の安全を守り、感謝される職業
安定した雇用と収入 公務員として長期的に安定した収入を確保
幅広い業務でスキル向上 捜査、警備、交通など多様な職務経験を積める
早期昇進も可能 努力や実績次第で若くして管理職になれる
全国異動で幅広い経験を積める 希望に応じて異動・専門職への転換が可能
家族への安心提供 福利厚生が充実しており、家族も安心

6. キャリア後の選択肢

管理職としての昇進

  • 課長、署長、警視監などの役職でマネジメント業務に携わる

専門職への転身

  • 刑事専門官、交通事故解析官、鑑識官としてスペシャリストに

他分野への転職

  • 防災コンサルタント、民間セキュリティ会社などで活躍可能

定年後の再雇用・天下り先

  • 地方自治体や関連団体での再雇用の機会も豊富

おすすめの講習、教材

教材

 講座

公務員系資格一覧

国家公務員総合職試験(旧Ⅰ種試験)
国家公務員一般職試験(旧Ⅱ種試験)
国家公務員初級試験(旧Ⅲ種試験)
地方公務員
国会議員政策担当秘書資格試験
外務省専門職員
警察官
消防官

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