トラック・バス・タクシーなどの自動車運送事業において、安全な運行を確保するための責任者です。ドライバーの健康管理、運行計画の作成、事故防止の指導、点呼業務など、運行に関わる全ての安全管理を担います。
道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、一定台数以上の車両を保有する事業者は、運行管理者を選任することが法律で義務付けられています。
運行管理者資格の種類
運行管理者資格は、運行する車両の種類に応じて2つの区分に分かれています。
1. 貨物運送(トラック運送事業向け)
- 貨物を運搬するトラックや宅配便業者の運行管理を担当。
- 物流会社や引越し業者、宅配便企業で必要。
2. 旅客運送(バス・タクシー運送事業向け)
- 旅客輸送を目的としたバスやタクシーの運行管理を担当。
- 観光バス会社、路線バス会社、タクシー会社などで必要。
資格取得の必要性
- 法律で義務付けられているため、一定規模の運送会社は必ず選任が必要。
- 事故防止や安全確保のための重要なポジション。
- 運送業界でのキャリアアップに直結する資格で、管理職や安全管理担当への道が開けます。
目次
受験資格と難易度
受験資格
運行管理者資格試験を受けるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
1. 実務経験による受験資格
- 条件:
- 過去5年以内に1年以上、運行管理補助業務の実務経験があること。
- 実務内容例:
- ドライバーの点呼補助
- 運行計画の作成補助
- 運転者の勤務時間や健康状態の管理
- 確認方法:
- 事業者が発行する「実務経験証明書」の提出が必要。
2. 基礎講習受講による受験資格
- 条件:
- 国土交通省が指定する 運行管理者基礎講習(3日間) の受講修了。
- 講習内容:
- 運送業に関する法令、安全運行の基本、事故防止策など。
- メリット:
- 実務経験がなくても受験可能。
- 未経験者や異業種からの転職希望者におすすめ。
受験資格のまとめ
取得ルート | 条件 | メリット |
---|---|---|
実務経験 | 過去5年以内に1年以上の補助業務経験 | 現場経験を活かして試験に臨める |
基礎講習の受講 | 3日間の講習受講後に受験可能 | 実務経験がなくても受験できる |
難易度
合格率
- 平均合格率: 約30〜40%
- 試験の傾向:
- 法令問題が多く、暗記と理解が必要。
- 計算問題(運行時間・休憩時間)も出題される。
試験内容と難易度の特徴
試験分野 | 内容 | 難易度 |
---|---|---|
道路運送法 | 貨物・旅客運送に関する法令問題 | 中 |
労働基準法 | 運転者の労働時間・休憩時間の計算問題 | 高 |
道路交通法 | 交通ルールや運転者の義務 | 低 |
安全運行管理 | 点呼、運行指示、事故防止の基本知識 | 中 |
運行計画・指導業務 | 運行ルート作成や運転者への安全指導内容 | 高 |
試験内容
貨物自動車運送事業(貨物部門) と 旅客自動車運送事業(旅客部門) の2種類があります。どちらも試験形式や出題範囲は似ていますが、扱う法令や内容に若干の違いがあります。
試験は 選択式問題(マークシート方式) で構成され、全30問中 18問以上(60%以上) の正答で合格です。
試験の概要
項目 | 内容 |
---|---|
試験時間 | 約2時間 |
問題数 | 30問(選択式) |
合格基準 | 30問中18問以上(60%以上) |
試験実施回数 | 年2回(3月・8月) |
試験形式 | マークシート方式(4択問題) |
試験範囲と出題内容
試験は以下の 5分野 から出題されます。それぞれの分野で偏りなく正答する必要があります。特に 道路運送法・労働基準法・運行管理実務 は出題数が多く、重点的に対策が必要です。
1. 道路運送法(8問程度)
出題内容
- 運送事業許可や登録の要件
- 運送事業者の義務と責任
- 営業所や車庫の設置要件
- 旅客・貨物運送契約の規定
- 運転者に関する指導・監督義務
2. 道路交通法(4問程度)
出題内容
- 速度制限や通行区分
- 信号や標識の意味
- 駐停車に関する規定
- 運転中の禁止行為(酒気帯び、携帯使用)
- 車両積載制限
3. 労働基準法(6問程度)
出題内容
- 労働時間・休憩・休日の規定
- 運転者の拘束時間と休息期間
- 時間外労働・休日労働の上限
- 深夜労働と割増賃金の取り扱い
- 労働時間に関する計算問題
4. 運行管理の実務(8問程度)
出題内容
- 点呼の実施方法と記録の管理
- 運行計画の作成方法
- 健康管理・アルコールチェック方法
- 事故発生時の対応手順
- 運転者への安全指導方法
5. 公共の安全及び事故防止(4問程度)
出題内容
- 交通事故防止策
- 災害時や緊急時の対応方法
- 安全装置の取り扱い
- 危険物輸送に関する基礎知識
試験対策
1. 分野別対策ポイント
道路運送法(8問程度)
ポイント
- 運送事業の許認可、運転者管理に関する法令を重点的に学習。
- 運送事業者の義務と禁止事項を整理して覚える。
対策方法
- 重要な条文は丸暗記。
- 過去問で出題されやすい条項を重点的に確認。
道路交通法(4問程度)
ポイント
- 基本的な交通ルールに加え、 事業用車両特有の規定 を確認。
- 積載制限や速度制限の数値を正確に覚える。
対策方法
- 過去問題で頻出箇所を把握。
- 問題文を正確に読み、引っかけ問題に注意。
労働基準法(6問程度)
ポイント
- 拘束時間、休憩時間、連続運転時間 の計算問題が必出。
- 労働時間に関する規定と例外を理解する。
対策方法
- 計算問題を毎日1問ずつ解き、正確に解けるようにする。
- 試験直前は計算問題のみをまとめて復習。
運行管理の実務(8問程度)
ポイント
- 点呼の方法、記録方法が頻出。
- 運行計画作成や運転者の指導方法を理解。
対策方法
- 点呼手順と健康チェックの流れを図解で覚える。
- 実際の運行計画を作成してみる。
公共の安全及び事故防止(4問程度)
ポイント
- 事故防止策、緊急時の対応手順を中心に学習。
- 災害時や非常時の避難方法を覚える。
対策方法
- 問題集を活用し、実際の事故例から対策方法を学ぶ。
2. 実践的な勉強方法
過去問題の徹底活用
メリット
- 試験問題は過去問題と類似した内容が多い。
- 出題傾向や頻出分野を把握できる。
勉強法
- 過去5年分の問題を入手。
- 最初は時間を気にせず理解に集中。
- 2周目以降は 時間制限を設けて解答。
- 間違えた問題はノートにまとめ、試験直前に確認。
模擬試験の活用
- 模試を定期的に受け、 本番に近い環境で練習。
- 60%以上の正答率を安定して出せるまで繰り返す。
- 模試後は必ず 間違い直しノートを作成。
計算問題の対策
- 労働基準法の計算問題は 必ず毎日練習。
- 計算式の暗記 + 練習問題で実践。
- よく出る問題パターン:
- 運転時間と休憩時間の計算
- 拘束時間の計算
- 時間外労働の計算
3. 合格へのポイントまとめ
項目 | 対策ポイント |
---|---|
過去問題 | 5年分を3周以上解き、出題傾向を把握。 |
計算問題 | 毎日1問ずつ練習し、確実に解けるように。 |
法令問題 | 重要条文は暗記し、頻出問題を重点的に対策。 |
点呼・実務問題 | 手順を図で覚え、問題演習で確認。 |
模擬試験 | 本番と同じ時間で解き、60%以上の正答を目指す。 |
取得後に出来ること
取得すると、 自動車運送事業者における運行管理の責任者として、法律上必要な業務を行うことができ、運送・物流・旅客運送業界でのキャリアアップが可能になります。
資格の種類(貨物・旅客)により管理対象が異なりますが、どちらも 安全運行の確保と法令遵守の徹底が主な役割です。
1. 資格取得後にできる主な業務
(1) 運行管理者としての選任
- 運送事業者は、一定台数以上の車両を保有する場合、運行管理者を選任することが法律で義務付けられています。
- 運行管理者資格を取得することで、以下の法定業務を担当できます。
(2) 法定業務の内容
業務内容 | 具体的な作業 |
---|---|
運転者の点呼・指導 | 出発・帰着時に健康確認、アルコールチェックの実施。 |
運行計画の作成・確認 | 安全で効率的なルートの策定、休憩時間の計画。 |
車両の点検・整備管理 | 車両の整備状況の確認と点検記録の管理。 |
労働時間・拘束時間の管理 | 運転者の労働時間・休息時間の管理と遵守確認。 |
事故防止対策 | 安全運転指導や交通事故発生時の対応手順確認。 |
違反防止教育 | 法令違反の防止に向けた運転者への定期的な教育実施。 |
異常時の緊急対応 | 事故やトラブル発生時の迅速な対応と報告。 |
2. 資格取得後のキャリアパスとメリット
(1) 就職・転職でのメリット
- 物流・運送会社での必須資格
- 法律上、一定規模の事業所には運行管理者が必要なため、求人需要が高い。
- 即戦力として採用されやすい
- 資格保有者は安全管理の専門家として評価される。
- 資格手当・昇給のチャンス
- 多くの企業で 月5,000円〜10,000円程度の資格手当が支給されることがある。
(2) キャリアアップの道
キャリアパス | 内容 |
---|---|
運行管理責任者 | 複数拠点の運行管理を統括する管理職へ昇進可能。 |
安全管理部門の責任者 | 事故防止・安全教育を担当し、企業の安全対策を指導。 |
運送・物流会社の管理職 | 営業所長や現場監督者として組織全体を管理。 |
開業・独立 | 自身で運送事業を立ち上げ、運行管理を担当。 |
コンサルタント業務 | 運送会社向けの安全管理指導や法令遵守支援を実施。 |
(3) 関連資格取得でさらにスキルアップ
運行管理者資格を取得後、以下の資格を取得することで業務の幅が広がります。
関連資格 | 取得後にできること |
---|---|
衛生管理者 | 労働者の健康管理業務も兼務可能。 |
危険物取扱者(乙種・丙種) | 危険物を積載する車両の運行管理が可能。 |
大型自動車免許 | 運行管理に加え、現場での運転業務も兼務可能。 |
フォークリフト運転技能講習 | 荷役作業の指導や管理にも対応できる。 |
運行管理者(旅客・貨物)の両方取得 | 貨物・旅客両方の運送事業で運行管理が可能。 |
3. 資格取得後の実務事例
事例1: 貨物運送会社での運行管理者
- 担当業務: 配送トラックのスケジュール作成、ドライバーの体調管理、事故防止会議の実施。
- メリット: 法定資格保持により会社の信頼度が向上し、管理職に昇進。
事例2: バス会社での旅客運行管理者
- 担当業務: バス運行ルートの安全確認、運転士の教育、安全装置の点検管理。
- メリット: 観光バス会社での安全責任者として高収入ポジションに就任。
4. 資格取得後のメリットまとめ
メリット | 内容 |
---|---|
法的に認められた業務が可能 | 運行管理者としての法定業務を正式に担当できる。 |
キャリアアップが可能 | 管理職や責任者への昇進、資格手当の支給。 |
高い就職・転職成功率 | 運送業界で必須資格のため、常に求人需要が高い。 |
独立・開業の道が開ける | 自身で運送会社を立ち上げ、運行管理が可能。 |
スキル向上と社会的信頼 | 安全管理の専門家として社内外から信頼される。 |
自動車系資格一覧
自動車運転
大型自動車免許
事業用操縦士
クレーン・デリック・移動式クレーン運転士
フォークリフト運転技能講習
車両系建設機械運転技能講習
高所作業車運転技能講習
運行管理者
玉掛け技能講習
自動車整備士
中古自動車査定士