犬の美容や健康を維持するための専門技術者であることを証明する民間資格です。カットやシャンプーだけでなく、犬の品種特性や被毛の健康管理など、トータルでケアできる知識と技能が求められます。
資格のランク(4段階)
等級 | 概要 |
---|---|
C級 | 初級レベル。JKC公認校の卒業見込み者が受験可。トリマーの登竜門。 |
B級 | 中級。C級取得後、実務経験または所定の研修が必要。 |
A級 | 上級。B級取得後、さらに実務経験・研修が必要。高度な技術と指導力を評価。 |
教士・師範 | トリマーとしての最高位ランク。試験と豊富な実務・指導経験が必要。 |
受験資格と難易度
JKC公認トリマー資格の受験資格
JKCのトリマー資格は C級 → B級 → A級 → 教士 → 師範 というステップアップ式になっており、上位になるほど受験条件も厳しくなります。
C級(初級)
- JKC公認トリマー養成機関に在学中、または卒業見込みの者
- JKCクラブ会員であること(受験時に登録が必要)
- 一般の独学者や未認定校の出身者は受験できません
※ C級はプロトリマーへの第一歩で、公認スクール経由が必須です。
B級(中級)
- C級合格後、JKC公認校での1年以上の研修または同等の実務経験
- JKCクラブ会員であること
- 公認トリマー養成機関の卒業生であること
※ 実技だけでなく、接客・清潔管理・犬種理解なども深く問われるようになります。
A級(上級)
- B級合格後、2年以上の実務経験または研修歴が必要
- 上級のカット技術、多様な犬種への対応力が求められます
- トリマーとして指導・管理的立場も視野に入るレベル
教士・師範(最上級)
- JKCによる厳格な審査・推薦・実績が必要
- 指導歴や後進育成、技術大会の成績なども審査対象
- 試験は筆記・実技に加え、講師力・育成力も評価されます
難易度の目安(合格率など)
等級 | 難易度 | 合格率(目安) | 特徴 |
---|---|---|---|
C級 | ★★☆☆☆ | 約70〜80% | 公認校での事前指導が前提、受かりやすいが準備は必要 |
B級 | ★★★☆☆ | 約50〜60% | 犬種ごとの理解、応用技術が問われる |
A級 | ★★★★☆ | 約30〜40% | 高度な技術と総合力が必要。指導力も評価対象 |
教士・師範 | ★★★★★ | 非公開(かなり狭き門) | 技術・教育・実績すべてを評価。国内トップレベル |
試験内容
「実技試験」と「学科試験」で構成されています。実技は犬のトリミング技術(シザー仕上げなど)、学科は犬の健康・品種・マナーなどを問う内容です。等級が上がるごとに試験内容のレベルも上がります。
C級試験(初級)
実技試験
- モデル犬のシャンプー・ドライ・カットを90分以内で仕上げる
- 指定された犬種のスタンダードに従ってカットする(例:ミニチュア・シュナウザー、プードル)
- 犬の扱い方、安全なハンドリング、姿勢なども評価対象
- シザー(はさみ)の使い方、仕上がりの美しさ、バリカン使用の正確さなどを総合的に審査
学科試験
選択式(マークシート)と記述式の混合
出題範囲は以下の通り
- 犬種の特徴とスタンダード(被毛の種類、顔・体の構造)
- グルーミング基礎知識(シャンプー、ブロー、耳掃除、爪切りなど)
- 犬の病気・寄生虫・衛生管理
- 器具の使い方と手入れ
- トリマーとしてのマナー・接客・安全管理
B級試験(中級)
実技試験
- より高度なスタイルのカット(時間:2時間程度)
- カットの仕上がり精度・スピード・犬への配慮がさらに重視される
- 被毛の特性や品種ごとの美的バランスを理解した仕上がりが求められる
- 犬の緊張をコントロールしながら施術を行うスキルも重要
学科試験
記述中心(選択+短答式)
出題内容はC級の応用+以下のような内容
- 被毛の構造・生理学的特徴
- 皮膚疾患、ノミ・ダニなどのトラブル対応
- 犬のストレス・行動学的配慮
- 開業に関する基本知識(衛生・保健所手続き等)
A級試験(上級)
実技試験
- 難易度の高い犬種のフルカット(時間:2時間〜2時間30分)
- 対象犬種はトイ・プードル、シュナウザー、ワイヤー・フォックス・テリアなどの中から指定
- プロとしての美観・精度・スピード・犬への対応すべてを高水準でクリアする必要あり
- 犬の負担を最小限にしながら、完成度の高い仕上げが求められる
学科試験
記述式(論述含む)
出題内容はB級の発展+以下のような内容
- 各犬種のショーカットスタイルの理解
- 犬の心理や行動とトリミングの関係
- トリマーとしての倫理観・指導力
- トリミングスクールでの指導者としての考え方
教士・師範試験(最上級)
- 実技・学科に加え、指導力・講師としての資質・育成経験が問われる
- 書類審査・推薦・実績報告書の提出も必要
- 技術大会の受賞歴や、他者への技術指導実績も評価対象となる
試験対策
C級試験対策(初級)
実技対策
- 毎日カットの練習をすることが基本。特にプードルなど指定犬種のベーシックスタイルを繰り返し練習。
- シザー(はさみ)の使い方は、真っ直ぐなライン・均一な長さ・左右対称を意識。
- モデル犬の被毛状態や協力度が結果に影響するため、犬のコンディション管理も重要。
- ハンドリング(犬の保定・落ち着かせ方)も評価されるので、犬との信頼関係を作る訓練を。
学科対策
公認校で使われている教科書の復習が最も効果的。
出題範囲は広く浅く。以下の分野を重点的に学習:
- 犬種スタンダード(JKCの犬種図鑑が役立つ)
- 被毛・皮膚・耳・爪などの構造とケア方法
- トリミングに使う器具の名称・用途
- 基本的な感染症や寄生虫の知識
- トリマーのマナー、安全管理
B級試験対策(中級)
実技対策
- スピードと精度の両立が求められるため、2時間以内で美しく仕上げる練習を。
- 犬種ごとのカットパターン(例:シュナウザーのスカートライン、プードルのトップノット)を正確に理解。
- バリカンの刃の使い分け・角度にも注意。仕上がりの滑らかさをチェック。
- 試験本番を想定した通し練習(タイムを測る)を繰り返す。
- 学科対策
C級の内容に加え、以下を強化:
- 犬の行動学とストレス対策
- トリミングサロン運営の基本(衛生管理、顧客対応)
- トリミング事故の予防と対処法
- 犬の健康管理(皮膚病、けが、感染症など)
- 獣医との連携知識
A級試験対策(上級)
実技対策
- ショーカットレベルの精度・デザイン性が要求されるため、講師や先輩トリマーからのフィードバックを重視。
- 毛の質・成長方向・ボリューム感などを考慮したカット設計を事前に準備。
- 犬種によって求められる「スタンダード美」への理解を深める。
- 「なぜこのスタイルなのか」を説明できることも試験で有利になる。
学科対策
A級は論述式の問題も含まれるため、「自分の言葉で説明する」練習が必要。
出題されやすいテーマ:
- 犬種別スタイルの目的と歴史的背景
- 犬の精神的負担を考慮した施術法
- 開業・教育・指導に関する倫理・法律的知識
共通の学習ポイント
模擬試験・記述練習
- 過去問題を使って記述の練習を繰り返す(講師に添削してもらうのがおすすめ)
- 時間を計りながらの通し練習で本番に備える
モデル犬の準備と管理
- 被毛の長さや状態によって採点が左右されるため、定期的なブラッシングと健康管理が必要
- 試験前に慣れたモデル犬で練習することが理想
取得後に出来ること
C級(初級)取得後にできること
ペットサロン・動物病院への就職
- グルーミングスタッフ、見習いトリマーとしての就職に有利
- シャンプー・爪切り・基本的なカット補助が任される
- 犬の扱い方や施術準備の仕事が中心
JKCトリマーとしてのスタート
- JKC公認のトリマーとして資格登録が可能
- B級・A級へのステップアップの受験資格が得られる
B級(中級)取得後にできること
トリマーとして現場の主力に
- 指定犬種のフルカットを1人で担当できる技術者として評価される
- トリミングサロンでの常勤トリマー・チーフ候補として働ける
- ペットホテルや複合施設での対応力も期待される
開業準備の基礎が整う
- 動物取扱業(保管)の登録と組み合わせて、個人での独立も視野に入る
- 地域密着型のサロンや訪問型トリミングの道が開ける
A級(上級)取得後にできること
トリマーの指導者・育成者として活躍
- 後輩トリマーの技術指導・教育係を任される
- トリミングスクールや専門学校での講師としての登用も可能
- 技術大会の出場・審査にも関われるレベル
高度なデザインカット・ショーカットの提供
- 犬種ごとのスタンダードカットやショー仕様の仕上げが可能
- 展覧会出場犬のトリミング担当など、ハイレベルな顧客対応にも信頼を得られる
教士・師範取得後にできること
トリマー育成機関での指導者・運営者に
- トリミングスクールの校長・主任講師などに就任可能
- 全国レベルのトリマー技術競技会の審査員や指導者として活動
- JKC内での地位や評価が高く、業界全体に影響を与える立場
就職・独立面でのメリット
- JKC資格は全国のトリミング業界での信頼性が高いため、就職活動や転職時に強力な武器になる
- 店舗によっては「JKCトリマー資格保持者のみ採用」とするところもあり
- 資格名を名刺やHPに記載することで、顧客からの安心感と信用につながる
活躍できる主なフィールド
- ペットサロン・グルーミングサロン
- 動物病院・ペットホテル
- トリマー養成学校・専門学校(講師)
- 自営業(訪問型トリマー、開業サロン)
- 展覧会・ドッグショー(カット担当・サポート)
- 動物関連イベントやセミナーの講師活動
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