ボイラーや第一種圧力容器の分解整備作業を安全かつ適正に行うために必要な国家資格です。労働安全衛生法により、一定規模以上のボイラーや圧力容器を分解整備する際には、有資格者の立ち会いや作業が義務付けられています。
資格取得後は、ボイラーの点検、修理、部品交換などの整備作業を担当でき、発電所、工場、病院、ビルメンテナンスなど幅広い業界で活躍できます。
目次
1. ボイラー整備士資格の種類と業務範囲
資格区分 | 取り扱える業務範囲 | 主な業務内容 |
---|---|---|
ボイラー整備士 | ボイラー・第一種圧力容器の分解整備作業 | 部品点検、清掃、修理、再組立作業 |
特定ボイラー整備士 | 特定設備や高圧ボイラーの整備作業 | 高度な点検作業、異常部位修理、圧力試験実施 |
※ 現在は「ボイラー整備士」が一般的で、「特定ボイラー整備士」は特定の機関で必要となることがあります。
受験資格と難易度
1. 受験資格
ボイラー整備士資格試験を受験するには、実務経験または講習修了が必要です。
受験資格(以下のいずれかを満たすこと)
- ボイラー取扱い作業に2年以上従事した経験がある者
- ボイラーの運転・監視業務を含む。
- ボイラー整備作業に1年以上従事した経験がある者
- ボイラーの分解、点検、修理作業に関与していることが条件。
- 厚生労働大臣指定の養成講習を修了した者
- 実務経験がなくても、講習修了で受験可能。
2. 難易度
ボイラー整備士試験は、学科試験と実技試験で構成されており、特に実技試験の難易度が高めです。実務経験者は現場での知識を活かしやすいですが、未経験者は講習でしっかり対策を行うことが重要です。
試験区分 | 合格率 | 難易度 | 特徴 |
---|---|---|---|
学科試験 | 約70〜80% | 比較的易しい | 法令や基礎知識の暗記で対応可能。過去問対策が有効。 |
実技試験 | 約50〜60% | やや高め | 分解・組立作業の正確さと時間内作業が問われる。 |
総合(学科+実技) | 約60〜70% | やや高め | 実務経験者が有利。実技対策が合否の鍵。 |
3. 難易度別の対策ポイント
学科試験(比較的易しい)
- テキストを繰り返し読むことで基礎知識を習得。
- 法令問題は暗記が中心で、過去問題でパターンを把握。
- 材料や整備手順の用語理解を深めると得点源に。
実技試験(やや高め)
- 分解・組立作業を時間内に正確に行う練習が必須。
- 工具の正しい使い方や作業順序を理解しておくことが重要。
- 安全確認の手順を徹底し、評価時の減点を防ぐ。
試験内容
試験は学科試験と実技試験の2部構成で、どちらも合格することが必要です。
1. 学科試験
(1)試験概要
項目 | 内容 |
---|---|
試験形式 | 筆記試験(選択式・記述式) |
試験時間 | 約90分 |
問題数 | 約30〜40問 |
合格基準 | 正答率60%以上 |
出題範囲 | ボイラー構造、整備方法、材料知識、安全衛生、法令 |
(2)出題科目と内容
科目 | 出題内容 |
---|---|
ボイラーの構造および機能 | ボイラー各部の名称、構造、機能の理解 |
整備方法および手順 | 分解・点検・修理・組立の作業手順と注意事項 |
材料および溶接知識 | 使用材料の特性、溶接部の確認方法、腐食・摩耗の原因 |
安全衛生および法令 | 労働安全衛生法、関連規則、安全作業時の留意点 |
2. 実技試験
(1)試験概要
項目 | 内容 |
---|---|
試験内容 | ボイラー主要部品の分解・点検・組立作業 |
試験時間 | 約2〜3時間 |
合格基準 | 作業の正確性、時間管理、安全確認の実施が評価基準 |
評価方法 | 実演作業の評価(外観・動作確認含む) |
(2)実技試験の内容
作業項目 | 実施内容 |
---|---|
分解作業 | 指定された工具を使用し、主要部品を正しい手順で分解 |
点検・修理 | 摩耗・腐食箇所の確認、適切な修理方法の選択 |
組立作業 | 指示通りの順序で組立、ボルト締付けのトルク管理 |
安全確認 | 組立後の漏れ確認、圧力試験、動作確認 |
(3)評価基準と対策
評価項目 | 合格基準 | 対策ポイント |
---|---|---|
作業手順の正確さ | 正しい分解・組立順序を守ること | 作業手順を覚えて練習する |
工具の使用方法 | 適切な工具選定と使用ができる | 工具の種類と使い方を事前に確認 |
作業時間管理 | 制限時間内に作業を完了 | 時間を計りながら練習する |
安全対策 | 保護具着用、危険回避行動が評価対象 | 安全確認を必ず実施する |
(4)実技試験のポイント
- 分解作業:
- 緩める順番と方法に注意
- パッキンやガスケットの損傷確認
- 点検作業:
- 摩耗や腐食箇所を見落とさない
- 異常箇所の適切な指摘が重要
- 組立作業:
- トルクレンチでの適正な締付け確認
- 最終チェック時の漏れ確認を忘れない
試験対策
1. 試験対策の基本方針
(1)学科試験対策
- 公式テキストを2〜3回読み込み、基礎知識を習得
- 法令・安全衛生関連は表にまとめて暗記
- 過去問題を解き、出題傾向を把握
- 材料や整備手順の用語を正確に理解
(2)実技試験対策
- 作業手順を覚え、反復練習でスムーズな動作を習得
- 工具の正しい使い方を確認し、効率的な作業を目指す
- 時間内に作業を終える練習を実施
- 安全確認と適切な作業態度を徹底
2. 科目別の重点対策ポイント
科目 | 重点ポイント | 対策方法 |
---|---|---|
ボイラー構造および機能 | 各部位の名称と役割を正確に理解 | 図解で構造を確認し、部品名を暗記 |
整備方法および手順 | 分解・組立の順序と注意事項を把握 | 作業手順をノートにまとめ、模擬作業で確認 |
材料および溶接知識 | 材料の特性と欠陥の原因を理解 | 材料表を作成し、特徴と使用箇所を整理 |
安全衛生および法令 | 頻出の法律や作業規定を暗記 | 過去問題で頻出項目を重点復習 |
3. 実技試験の具体的対策
(1)分解作業
- 工具の選定と使用方法を正しく理解
- 緩める順番に注意し、無理な力をかけない
- パッキンやガスケットの状態確認を忘れない
(2)点検・修理
- 摩耗・腐食箇所を確実に発見する練習
- 適切な修理方法を選び、指摘できるようにする
- 作業中に気づいた異常箇所は即座に報告
(3)組立作業
- 指定トルクでのボルト締めを確実に実施
- 作業順序を守り、部品の取り付け忘れを防ぐ
- 組立後の漏れ確認や圧力試験を確実に実施
4. 実技試験のワンポイントアドバイス
- 分解作業: 緩める順番を覚え、ガスケットの損傷確認を徹底
- 組立作業: トルクレンチでの正確な締付けを練習
- 作業姿勢: 安全装備を必ず装着し、落ち着いて作業
取得後に出来ること
施設内設備の保守・点検・修理を担当し、発電所、工場、病院、ビル管理会社など幅広い業界で活躍できます。
1. ボイラー整備士としてできること
(1)分解整備作業
- ボイラー本体や圧力容器の分解・点検・清掃作業
- 部品の摩耗・腐食・損傷箇所の確認および修理
- バルブ、パッキン、ガスケットなどの部品交換
(2)組立および試運転作業
- 分解後の正しい組立作業
- ボルトのトルク管理と密閉確認
- 組立後の圧力試験や漏れ確認
- 試運転時の動作確認と調整
(3)保守管理業務
- 定期点検計画の立案と実施
- 整備記録の作成と保管
- 設備更新や改修作業の提案
(4)現場指導・教育
- 新人整備員への技術指導および教育
- 作業手順や安全管理に関する指導
- 整備チームのリーダーとして作業統括
2. 活躍できる職場・業界
業界 | 主な業務内容 |
---|---|
発電所 | 発電用ボイラーの整備・定期点検 |
工場(製造業) | 生産設備用ボイラーの保守・修理 |
病院・ホテル | 給湯・暖房設備の分解整備 |
ビルメンテナンス会社 | 商業施設やオフィスビルの設備保守 |
造船・建設業 | 船舶用・建設現場のボイラー整備作業 |
プラント業 | 高圧ボイラーや圧力容器の整備・改修 |
3. 資格取得後のメリット
- 整備作業の責任者として作業現場に立ち会える
- 転職や就職時に有利で需要が高い
- 年収アップや資格手当が期待できる
- キャリアアップにつながり、管理職や現場リーダーを目指せる
- 現場での信頼向上と専門職としての地位確立
4. 取得後のキャリアパス
ステップ1: ボイラー整備士 → 設備管理責任者
- 複数施設の保守計画立案
- 整備チームのマネジメント業務
ステップ2: 関連資格取得でさらなる活躍
- ボイラー技士資格(運転管理に対応)
- 高圧ガス製造保安責任者(高圧設備対応が可能)
- 危険物取扱者(燃料設備管理に対応)
ステップ3: 現場監督・管理職へ昇進
- 大規模プロジェクトの整備計画統括
- 作業員への教育・安全管理
工業系資格一覧
技術士
ガス溶接技能者
公害防止管理者
ボイラー技士
ボイラー整備士
ボイラー溶接士
ガス溶接作業主任者
ボイラー取扱技能講習
溶接作業指導者
溶接管理技術者
アルミニウム溶接技能者評価試験