日本国内で建築物の設計・工事監理を行うことができる国家資格であり、特に中小規模の建築物を対象としています。一級建築士に比べて、取り扱える建物の規模や用途に制限がありますが、戸建住宅や小規模店舗、低層集合住宅など、日常生活に密接した建物の設計・監理を行うことが可能です。
二級建築士の主な業務
設計業務
- 木造住宅（延べ面積300㎡以下、2階建て以下）
- 鉄筋コンクリート造・鉄骨造（延べ面積500㎡以下、3階建て以下）
- 店舗・事務所（一定規模以下）
工事監理
- 設計図通りに施工が行われているか確認
- 工事の品質、安全、進捗管理
建築確認申請の代行
- 法律に基づいた建築確認申請の手続き代理
一級建築士との違い
| 項目 | 二級建築士 | 一級建築士 |
|---|---|---|
| 設計可能な建物 | 中小規模建築物に限定 | すべての建築物 |
| 独立・開業 | 可能（二級建築士事務所） | 可能（一級建築士事務所） |
| 受験資格 | 実務経験要件が比較的緩やか | 実務経験や学歴要件が厳しい |
| 難易度 | やや易しい | 非常に難しい |
| キャリア幅 | 主に住宅・小規模施設中心 | 大規模施設・公共事業も対応可能 |
目次
受験資格と難易度
受験資格
二級建築士試験を受験するには、学歴や実務経験に基づく一定の条件を満たす必要があります。以下は、学歴別の受験資格の詳細です。
学歴別の受験資格
1. 大学卒業者（建築系学科）
- 条件: 建築系学科を卒業すれば、実務経験不要で即受験可能。
- 例: 建築学科や土木工学科など、指定された課程を修了。
2. 専門学校卒業者（建築系・2年以上の課程修了）
- 条件: 建築系専門学校を卒業すれば、実務経験不要で受験可能。
- 例: 建築設計科や建築施工管理科の卒業生。
3. 高等学校卒業者（建築系学科）
- 条件: 卒業後、3年以上の建築実務経験が必要。
- 例: 高校建築科を卒業 → 建築事務所で3年以上勤務後に受験可能。
4. その他の学歴
- 条件: 建築実務経験が7年以上あれば受験可能。
- 例: 建築と無関係な学歴でも、7年以上の実務経験で受験資格取得。
実務経験に該当する業務内容
受験資格に必要な実務経験には、以下のような業務が含まれます。
- 建築物の設計補助業務
- 工事監理や施工管理
- 建築確認申請などの法的手続き業務
- 建築関連の構造・設備設計補助
難易度
二級建築士試験は、一級建築士に比べて難易度はやや低いものの、依然としてしっかりとした学習と実務経験が求められる試験です。
合格率
- 学科試験合格率: 約25〜30%
- 設計製図試験合格率: 約40〜50%（学科試験合格者対象）
- 総合合格率: 約20〜25%
試験内容
学科試験と設計製図試験の2段階で構成されており、学科試験に合格した後に製図試験を受験します。それぞれの試験では、建築の基礎知識から実務的な設計力までが問われます。
学科試験の内容
概要
- 試験時間: 約6時間（午前・午後に分かれて実施）
- 問題数: 合計50問（各科目から出題）
- 合格基準:
- 総合得点で60%以上の正答率（50問中30問程度）
- 各科目ごとに一定の足切り点が設定されている
科目別の出題内容
1. 建築計画
建物の設計計画や空間構成、建築材料、建築史に関する問題が出題されます。
出題範囲:
- 居住空間計画（住宅、集合住宅の設計要素）
- 建築材料の特性と選定
- 建築史（日本建築史、西洋建築史）
- バリアフリー設計や省エネルギー建築の計画
- 照明・音響・温熱環境に関する計画
2. 環境・設備
建築環境の快適性や建物内の設備計画に関する知識を問う科目です。
出題範囲:
- 熱環境：断熱、日射遮蔽、冷暖房負荷計算
- 光環境：自然採光、人工照明の計画
- 音環境：遮音・吸音対策
- 給排水、空調、電気設備の基本構造
- 省エネ法規、自然エネルギーの活用方法
3. 建築法規
建築基準法を中心に、関連法令の知識を問います。
出題範囲:
- 建築基準法の基本構造（用語の定義、適用範囲）
- 建ぺい率・容積率計算
- 防火・避難に関する規定
- 都市計画法、消防法、建設業法の基礎
- 建築確認申請の手続きと流れ
4. 建築構造
建物の構造形式や力の流れ、耐震性についての知識を問う科目です。
出題範囲:
- 構造力学（モーメント計算、応力計算、たわみの計算）
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の構造特性
- 地震力、風圧力の計算と構造耐力の確保
- 構造設計における注意点
5. 建築施工
建築工事の進め方や現場管理、安全管理に関する知識を問います。
出題範囲:
- 工事工程管理と進捗管理の基礎
- 各種建材の施工方法と特性
- 品質管理、安全管理（労働災害防止策）
- コスト管理や積算業務の基本
- 仮設工事や地盤改良工事の基本知識
設計製図試験の内容
概要
- 試験時間: 約5時間
- 課題内容: 実際の設計条件に基づいて、平面図、立面図、断面図、部分詳細図を作成。
- 試験形式: 手描きによる図面作成
評価ポイント
- 条件遵守: 与えられた設計条件を正確に反映しているか
- 空間構成と動線計画: 利用者にとって使いやすい動線が確保されているか
- 法規遵守: 建ぺい率・容積率、避難経路、防火規定の確認
- 図面の正確さ: 記号の正確性やスケールの正しさ
- 設計意図の明確さ: 利用者目線で合理的な設計になっているか
よくある減点項目
| ミス | 減点理由 |
|---|---|
| 法規違反（容積率オーバー） | 即不合格の可能性が高い |
| 動線不良（トイレへのアクセス不便） | 利用者視点の欠如として減点 |
| 階段や避難経路の欠落 | 安全性欠如で大幅減点 |
| 図面の記号ミス | 記号の誤りは精度不足と判断される |
合格基準
学科試験
- 総合得点: 50問中30問以上正答が目安（約60%）
- 科目別足切り: 各科目での最低得点基準をクリアする必要あり
設計製図試験
- 採点方式: 減点方式で評価。重大な法規違反や条件漏れは即不合格。
- 完成度の重視: 図面が未完成の場合、大幅な減点対象となる。
試験対策
全体的な学習計画の立て方
1. 学習スケジュール作成
- 学科試験対策開始時期: 試験の6か月前から開始が理想
- 製図試験対策開始時期: 学科試験終了後すぐに取り組む
2. 学習時間の目安
| 時期 | 平日 | 休日 |
|---|---|---|
| 学科試験対策期 | 1〜2時間 | 4〜6時間 |
| 製図試験対策期 | 2〜3時間 | 6〜8時間 |
3. 学習の流れ
- 初期（6〜4か月前）: 基礎知識の習得と過去問分析
- 中期（4〜2か月前）: 過去問演習と模試で実力確認
- 直前期（2か月前〜試験当日）: 弱点克服と時間配分練習
学科試験対策
ポイント
- 過去問中心: 過去10年分を繰り返し解く
- 問題の傾向把握: よく出る分野を重点的に学習
- 模擬試験で実力確認: 実際の試験時間で模試を実施
科目別対策
1. 建築計画
- 過去問で頻出テーマを確認（住宅計画、建築史が多く出題）
- 建築史の暗記法: 時代ごとに代表的な建築物と特徴を整理
- 住宅の動線計画やバリアフリー設計の問題演習
2. 環境・設備
- 熱環境や音環境の計算問題を重点的に練習
- 設備機器の配置や基本構造をイメージで理解
- 省エネ基準や環境対策の最新動向を確認
3. 建築法規
- 法令集の引き方を徹底練習: 1問1分以内を目指す
- 建ぺい率・容積率の計算問題を繰り返し演習
- 防火・避難規定を表やフローチャートで整理
4. 建築構造
- 構造力学の基本公式を暗記（モーメント、応力計算）
- 計算問題は毎日1問以上解いて計算力強化
- 構造形式（木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造）の特徴を比較
5. 建築施工
- 施工手順を図や写真で確認し視覚的に理解
- 品質・安全管理に関する用語を暗記
- 積算問題や工事工程の出題パターンを分析
学科試験対策におすすめの勉強法
| 方法 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 過去問演習 | 過去10年分を解く | 問題の解説を熟読して理解を深める |
| 模擬試験 | 月1回程度実施 | 本番同様の環境で時間配分を意識 |
| 法規の法令集引き練習 | 問題集を使用 | 迅速に必要な情報を見つける練習 |
| 暗記カード作成 | 計画・施工・法規で使用 | 通勤・通学時間に活用できる |
設計製図試験対策
ポイント
- 速さと正確さの両立: 制限時間内で図面を完成させる練習が必要
- 法規・条件の遵守: 課題条件や法規違反は即不合格につながる
- 実践演習中心: 過去課題や模擬問題で反復練習
よくあるミスと対策
| ミス | 対策方法 |
|---|---|
| 法規違反（容積率・建ぺい率計算ミス） | 計画時に面積確認用の計算表を活用 |
| 階段や避難経路の不備 | 試験前にチェックリスト作成 |
| 設備・構造記号の間違い | 記号一覧表を手元に置く |
| 図面未完成 | 作図の練習で制限時間を厳守 |
模擬試験の活用法
- 本番同様の環境で実施: 静かな場所で制限時間を守って取り組む
- 終了後は自己採点と改善点の分析
- 同じ課題を2回以上繰り返して精度を高める
使用する教材とツール
推奨教材
- 過去問題集: 10年分の問題を網羅
- 法令集: 最新版を使用
- 参考書: 建築計画、構造、施工の基本書
オンラインリソース
- YouTubeの製図解説動画で作図手順を確認
- アプリで法規の暗記や計算問題練習
取得後に出来ること
取得すると、建築設計、工事監理、建築確認申請など、さまざまな業務に携わることができます。この資格は、特に住宅や中小規模の建築物に関する業務に強みがあり、地域密着型の建築業務や個人住宅の設計を手がける上で大きな武器になります。
設計業務
設計できる建物の範囲
二級建築士は、以下の建物の設計を行うことができます。
-
木造建築物
- 延べ面積300㎡以下
- 高さ13m以下
- 軒の高さ9m以下
-
鉄骨造・鉄筋コンクリート造（RC造）建築物
- 延べ面積500㎡以下
- 地上3階建て以下
-
戸建住宅、集合住宅（低層）、小規模な店舗や事務所
業務内容
- 住宅の新築、リフォーム、リノベーションの設計
- 小規模な商業施設やオフィスビルの設計
- インテリアデザインや空間レイアウトの提案
工事監理業務
工事監理とは
設計図通りに工事が進められているかを現場で確認し、品質、工程、安全の管理を担当します。
工事監理でできること
- 建築工事現場での施工確認
- 材料や施工方法が設計通りかのチェック
- 工期の調整や現場関係者との打ち合わせ
建築確認申請・法的手続き
申請業務
- 建築主を代理して建築確認申請を提出
- 改修工事や用途変更の申請も対応
法的アドバイス
- クライアントへの建築基準法や消防法のアドバイス
- 用途地域や建ぺい率・容積率の確認・提案
キャリアの選択肢
1. 独立・開業
- 二級建築士事務所の設立が可能
- 個人で顧客を持ち、住宅や小規模建物の設計を受注
- 地域の工務店と連携し、リフォームや新築案件を受けることが可能
2. 企業でのキャリア
- 設計事務所: 個人住宅や小規模施設の設計担当
- ハウスメーカー: 戸建住宅の設計・商品企画
- 建設会社: 工事監理や現場管理業務
- 不動産会社: 物件リノベーションや建築計画に携わる
3. 公共事業・行政での活躍
- 地方自治体での建築確認審査担当
- 公共施設の簡易な建物の設計業務
専門分野への展開
インテリアデザイン・リノベーション
- 住宅内装やオフィスの空間デザイン
- 古民家再生やリノベーション案件の企画・実施
環境設計・省エネ計画
- 省エネルギー住宅の設計支援
- 環境に配慮した建物設計の提案
コンサルティング業務
- 耐震診断や耐震補強計画
- 建物の長寿命化や資産価値向上の提案
取得後のキャリアパス例
住宅設計専門家
- 個人住宅や集合住宅の設計に特化
- クライアントとの直接契約で自由なデザイン提案
工務店との提携
- 地域密着型の建築事業に参加
- 新築・リフォーム案件の設計と監理
将来的なステップアップ
- 実務経験を積んで一級建築士への挑戦も可能
おすすめの講習、教材
教材
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一級建築士
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