高齢者や障がい者の日常生活を支援する国家資格です。
- 介護業界で唯一の「国家資格」
- 食事・入浴・排泄などの身体介護、生活支援、家族の相談対応などを担当
- 介護現場でのリーダー的存在として、介護職員の指導・育成も行う
■主催
(社)介護福祉士会
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格(取得ルート)
介護福祉士国家試験を受験するには、以下のいずれかのルートを満たす必要があります。
① 実務経験ルート(最も一般的)
- 介護の実務経験3年以上(1,095日)+実務者研修修了
- 無資格・未経験からでも目指せるルート
必要条件 | 内容 |
---|---|
実務経験 | 介護施設や訪問介護で3年以上(1,095日)勤務 |
従事日数 | 540日以上の勤務実績 |
実務者研修 | 450時間の研修を修了(無資格者のみ必須) |
② 福祉系高校ルート
- 福祉系高校で所定のカリキュラムを修了し、卒業後に受験
- 卒業後すぐに国家試験を受験できるため、最短で資格取得が可能
③ 介護福祉士養成施設ルート
- 福祉系の専門学校(2年制)または短大・大学(3~4年制)を卒業
- 卒業と同時に資格取得(国家試験免除の制度あり)
2. 試験の難易度(合格率・試験内容)
合格率の推移(過去5年)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 約90,000人 | 約60,000人 | 約66% |
2022年 | 約93,000人 | 約63,000人 | 約68% |
2021年 | 約95,000人 | 約64,000人 | 約67% |
2020年 | 約97,000人 | 約66,000人 | 約68% |
2019年 | 約100,000人 | 約69,000人 | 約69% |
- 合格率は約65〜70%と比較的高め
- 試験対策をしっかり行えば、合格しやすい国家資格
試験内容
1. 試験概要
項目 | 詳細 |
---|---|
試験日程 | 毎年1月下旬(筆記試験)・3月(実技試験) |
試験形式 | マークシート方式(五肢択一) |
問題数 | 125問(1問1点、総得点125点) |
試験時間 | 午前・午後の2部制(合計4時間10分) |
合格基準 | **総得点の60%以上(75点以上)**かつ、各科目40%以上の得点が必要(足切りあり) |
実技試験 | 2022年度より廃止(筆記試験のみで合格可能) |
2. 試験科目と詳しい出題内容
介護福祉士国家試験は、**12の科目群(全125問)**から出題されます。
科目群 | 主な内容 | 重要度 |
---|---|---|
① 人間の尊厳と自立 | 介護倫理・人権・利用者の尊厳 | ★★★ |
② 介護の基本 | 介護の理念・専門職の役割・多職種連携 | ★★★ |
③ コミュニケーション技術 | 高齢者・障がい者との対話・傾聴技術 | ★★★ |
④ 生活支援技術 | 食事・排泄・入浴・移動・更衣・整容 | ★★★★★ |
⑤ 介護過程 | アセスメント・ケアプラン・記録 | ★★★★★ |
⑥ 発達と老化の理解 | 老化による身体・心理的変化 | ★★★ |
⑦ 認知症の理解 | 認知症の症状・ケア・対応方法 | ★★★★★ |
⑧ 障害の理解 | 身体・知的・精神障害の特性と支援 | ★★★★ |
⑨ 医療的ケア | たん吸引・経管栄養・感染予防 | ★★★★ |
⑩ 介護福祉サービス | 介護保険制度・福祉サービスの種類 | ★★★★ |
⑪ 施設・在宅の介護支援 | 在宅介護・施設介護の特徴と違い | ★★★ |
⑫ 総合問題 | 事例問題(実践力が問われる) | ★★★★★ |
ポイント
- 「生活支援技術」「介護過程」「認知症の理解」が特に重要(出題数が多い)
- 総合問題では、事例に基づいた応用力が問われる
- 法制度関連(介護保険制度・福祉サービス)は暗記が必要
3. 科目別の詳細な出題内容とポイント
① 人間の尊厳と自立(倫理・人権問題)
- 介護の基本理念(利用者の尊厳・権利擁護)
- 高齢者虐待防止法・成年後見制度の知識
- 自立支援とQOL(生活の質)の向上について
② 介護の基本(介護の理念・専門職の役割)
- 介護職の専門性・チームケアの重要性
- 多職種連携(医師・看護師・リハビリ職との協働)
- 介護職の責任と守秘義務について
③ コミュニケーション技術
- 傾聴の技術(利用者の話をよく聞く姿勢)
- 認知症患者との接し方(ゆっくり話す・安心感を与える)
- 非言語コミュニケーション(表情・ジェスチャー)の活用
④ 生活支援技術(最重要)
- 食事介助(誤嚥予防・嚥下障害の対応)
- 排泄介助(おむつ交換・トイレ誘導)
- 入浴・更衣介助(清潔保持・感染予防)
⑤ 介護過程(ケアプラン・アセスメント)
- アセスメント(利用者の状態把握)
- ケアプランの作成と評価
- 記録の書き方(SOAP・POS記録法)
⑥ 認知症の理解(症状・ケア)
- 認知症の種類(アルツハイマー型・レビー小体型など)
- BPSD(行動・心理症状)の対応
- 環境調整やリハビリテーション
4. 総合問題(事例問題・応用力)
- 実際の介護現場を想定した事例問題が出題される
- 利用者の状態に応じた適切な支援を選ぶ力が必要
試験対策
1. 科目別の試験対策
① 生活支援技術(最重要科目)
重点対策
- 誤嚥予防のための食事介助の方法
- 入浴・更衣介助の適切な手順と注意点
- 排泄介助の種類(おむつ交換・トイレ誘導)とリスク管理
② 介護過程(アセスメント・ケアプラン)
重点対策
- 利用者の情報収集(バイタルサイン・生活歴)の重要性
- ケアプランの評価と修正の基準
③ 認知症の理解(症状・対応方法)
重点対策
- 認知症高齢者への適切な声かけ(否定せず、安心感を与える)
- 環境調整(混乱を防ぐための空間づくり)
④ 医療的ケア(たん吸引・経管栄養)
重点対策
- 誤嚥リスクのある利用者への対応
- 感染予防(手洗い・グローブの使用など)
⑤ 介護福祉サービス(介護保険制度・福祉制度)
重点対策
- 介護保険サービス(訪問介護・デイサービス・施設入所)の違い
- 要介護認定の流れと基準
2. 過去問と模擬試験の活用方法
過去問は10年分を最低3回解く
- 過去問演習を繰り返すことで、出題傾向を把握
- 間違えた問題をノートにまとめて、復習に活用
模擬試験で時間配分を確認
- 本番と同じ時間で解き、時間管理を練習
- 最低でも2回は模試を受ける
間違えた問題を徹底復習
- 「なぜ間違えたのか」を分析し、知識の定着を図る
取得後に出来ること
1. 介護福祉士としてできる仕事
介護福祉士資格を取得すると、介護業務に加えて以下の業務も担当可能になります。
① 介護業務のリーダーとしての役割
- 介護職員の指導・育成
- チームのマネジメント
- 利用者や家族との相談・対応
② 身体介護の実施(医療的ケアを含む)
- 食事・入浴・排泄介助
- 移動・歩行補助
- 医療的ケア(たん吸引・経管栄養)
③ 介護計画の作成・アセスメント
- 利用者の状態を評価し、介護計画を作成
- ケアプランの評価・見直し
- 他職種(医師・看護師・理学療法士など)との連携
2. 介護福祉士の働ける場所(就職先)
介護福祉士の資格があれば、さまざまな介護・福祉施設で活躍できます。
① 介護施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など)
- 要介護者の日常生活支援(食事・入浴・排泄介助)
- リハビリ補助・生活機能向上のサポート
- 介護記録の作成・ケアプランの実施
② 訪問介護(ホームヘルパー)
- 利用者の自宅を訪問し、身体介護・生活援助を行う
- 買い物・掃除・調理などの支援
- 利用者や家族と直接関わりながら、個別ケアを提供
③ 病院・医療機関
- 入院患者の身体介護(食事・排泄・移動補助)
- 看護師と連携し、医療的ケアを実施
- リハビリ支援や退院後のケアプラン作成
④ 障がい者支援施設
- 身体・知的・精神障がい者の生活支援
- 就労支援・社会参加の促進
- レクリエーションやリハビリのサポート
3. 介護福祉士のキャリアアップ・年収アップの道
① 介護リーダー・施設管理者への昇進
- 介護福祉士として経験を積むことで、リーダー・主任・施設長を目指せる
- チームをまとめるマネジメントスキルを身につける
年収目安:350万〜500万円
② ケアマネージャー(介護支援専門員)へステップアップ
- ケアマネージャー(介護支援専門員)試験の受験資格が得られる
- ケアプランの作成や利用者と家族の相談業務を担当
年収目安:400万〜600万円
③ 訪問介護事業所の開業(独立)
- 訪問介護事業所の管理者として独立することも可能
- フリーランス介護士として働く道もある
年収目安:500万円以上(経営成功次第)
4. 介護福祉士資格取得のメリット
メリット | 内容 |
---|---|
介護業界での信頼性が向上 | 国家資格のため、就職・転職時に有利 |
給与・待遇の向上 | 介護職員初任者研修・実務者研修のみの人よりも高給与 |
介護リーダー・管理職への道が開ける | 施設管理者・ケアマネージャーへのステップアップが可能 |
独立・開業の可能性がある | 訪問介護事業所を立ち上げることもできる |
5. 介護福祉士の平均給与・年収
介護福祉士の給与は、勤務先や経験年数によって変わります。
職種・役職 | 平均年収 |
---|---|
介護福祉士(一般職) | 約300万〜400万円 |
介護リーダー・主任 | 約350万〜500万円 |
施設長・管理職 | 約500万〜700万円 |
ケアマネージャー | 約400万〜600万円 |
訪問介護事業所の管理者 | 約450万〜700万円 |
ポイント
- 資格を取得すると給与が上がる施設が多い
- 管理職やケアマネージャーを目指すことでさらに年収アップが可能