病気や障害のある人に対し、日常生活動作(ADL) や 社会適応能力の向上 を支援するリハビリ専門職で理学療法士(PT)と並び、リハビリテーション分野で重要な役割を果たします。
身体的・精神的な障害を持つ人々が、日常生活や社会生活をスムーズに送れるように支援します。主な役割は以下の通りです。
日常生活活動(ADL)の指導
→ 食事、着替え、入浴、トイレ動作などの訓練
上肢・手指の機能回復訓練
→ 手や腕のリハビリ、細かい動作の訓練
認知機能や精神面のサポート
→ 認知症、精神疾患のある人への作業療法
福祉用具の提案・環境調整
→ 車椅子、補助具、住宅改修のアドバイス
社会復帰・職業復帰支援
→ 就労支援、余暇活動の提案
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格
作業療法士国家試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
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文部科学大臣または厚生労働大臣が指定した養成施設を卒業
- 4年制大学、3年制短期大学、専門学校(3年以上)で、作業療法士養成課程を修了すること。
- 2024年4月以降に入学した人は、3年以上の養成課程を修了し、「学士」または「専門士(作業療法)」の称号を取得することが必須。
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外国の作業療法士養成課程を修了し、厚生労働大臣の認定を受ける
- 日本以外の国で作業療法士の資格を取得し、日本の基準に適合すると認められた場合、受験資格が与えられる。
2. 試験の難易度
作業療法士国家試験の難易度は中程度とされており、しっかりと対策をすれば合格できるレベルです。
- 合格率:おおよそ80~90%(年度によって変動あり)
- 試験問題:基礎医学、リハビリテーション、作業療法の専門知識などが出題される
- 合格基準:総得点の約60%を正答すれば合格(年度によって多少の変動あり)
近年では、臨床実習の評価基準が厳しくなり、実習の単位を取得できないと受験資格を得られないケースもあります。そのため、養成校での学習や実習への取り組みが重要となります。
試験内容
1. 試験概要
- 試験形式:マークシート方式(五肢択一)
- 試験時間:午前・午後の2部構成
- 合格基準:総得点の約60%以上(毎年若干変動あり)
2. 試験科目と出題範囲
試験は、大きく「必修問題」と「一般問題」の2種類に分かれています。
(1)必修問題(30問)
- 基礎的な知識を問う問題(全体の約15%)
- 得点率が80%以上 必要(例:30問中24問以上の正答が必要)
(2)一般問題(170問)
- 臨床現場での応用力が問われる
- 広範囲な知識が必要
出題範囲(詳細)
① 基礎医学(解剖学・生理学・運動学など)
- 骨・関節・筋肉の構造と機能
- 神経系(中枢神経・末梢神経・自律神経)
- 循環器、呼吸器、消化器の働き
- 運動制御・感覚機能
② 臨床医学(疾患・障害に関する知識)
- 整形外科疾患(骨折、変形性関節症、脊髄損傷)
- 神経系疾患(脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症)
- 内科疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患)
- 精神疾患(統合失調症、うつ病、認知症)
- 小児疾患(自閉症、発達障害、脳性麻痺)
③ リハビリテーション・作業療法学
- 作業療法の理論と方法
- 評価法(MMT、ROM測定、ADL評価など)
- 日常生活動作(ADL)の支援
- 高次脳機能障害への対応
- 義肢・装具の使用方法
- 環境調整(住宅改修、福祉用具)
- コミュニケーション技法
④ 医療制度・法律・倫理
- 医療法・障害者総合支援法・介護保険法
- インフォームドコンセント・守秘義務
- チーム医療・地域包括ケアシステム
⑤ 作業療法の実践応用(臨床ケーススタディ)
- 具体的な患者のケースを想定した問題
- 診断・評価・治療計画の立案
- 多職種連携のあり方
3. 合格基準
- 総合点の60%以上 の正答が必要(年度によって変動)
- 必修問題の80%以上(24/30問以上)の正答が必要
- 年度によって補正が入ることがある
試験対策
1. 効果的な学習方法
① 基礎固め(6~4ヶ月前)
- 公式テキストや授業ノートを整理
- 基礎医学(解剖学・生理学・運動学)は暗記だけでなく「関連づけて理解」する
- リハビリテーション医学の理解を深める
- どの疾患にどの作業療法が有効かを整理
- 法律や制度はまとめノートを作る
- 医療法・介護保険・障害者支援制度など
② 過去問演習(3~2ヶ月前)
- 最低5年分の過去問を解く
- 「なぜこの答えになるのか?」を理解しながら学習
- 頻出問題を重点的に対策
- 繰り返し出題されるテーマを優先
③ 実践力をつける(1ヶ月前~)
- 時間を計って模試形式で演習
- 本番と同じ環境で解く
- 間違えた問題をリスト化
- 弱点を明確にし、最後まで克服する
2. 必修問題対策(合格ライン80%以上)
- 基礎医学(解剖・生理・運動学)を重点的に学習
- 疾患・リハビリ方法を整理して暗記
- 法律・倫理問題は一問一答形式で対策
3. おすすめの教材・勉強法
① 教科書・参考書
- 「標準作業療法学」シリーズ(医学書院)
- 「国試の達人 作業療法士」(メディックメディア)
- 「クエスチョン・バンク 作業療法士」(医歯薬出版)
② 過去問・問題集
- 厚生労働省の公式過去問サイト
- 「国家試験対策 過去問5年分徹底解説」(中央法規)
③ スマホアプリ・オンライン学習
- 作業療法士国家試験対策アプリ(過去問演習に便利)
- YouTubeの作業療法士向け講義動画(視覚的に理解しやすい)
取得後に出来ること
1. 医療分野での活躍
① 病院・クリニックでのリハビリテーション
- 急性期病院(脳卒中・骨折などのリハビリ)
- 回復期リハビリ病院(日常生活動作(ADL)訓練)
- 慢性期・維持期病院(高齢者・慢性疾患のリハビリ)
- 精神科病院(うつ病、統合失調症、認知症の作業療法)
② 訪問リハビリテーション
- 在宅でのリハビリ指導
- 住宅環境の調整(バリアフリー化、福祉用具の導入)
- 介護者への指導(家族への介助方法のアドバイス)
2. 介護・福祉分野での活躍
① 介護施設
- 介護老人保健施設(老健):入所者のリハビリ・介護予防
- デイサービス・デイケア:通所者の機能訓練、レクリエーション支援
- 特別養護老人ホーム(特養):高齢者の生活動作の維持・向上
② 障害者支援
- 就労移行支援施設:障害者の就労訓練
- 児童発達支援・放課後デイサービス:発達障害のある子どもの支援
3. 教育・研究分野での活躍
① 教育機関
- 養成校(大学・専門学校)で講師・教員として指導
- 特別支援学校で発達障害児の支援
② 研究機関・大学院進学
- リハビリテーションの研究(認知症予防、義肢装具、ロボット療法など)
- 大学院進学で「修士・博士号」を取得し、専門性を高める
4. 企業・行政分野での活躍
① 福祉用具・医療機器メーカー
- 車いす、義肢装具、リハビリ機器の開発・販売
- 福祉用具アドバイザーとしての活動
② 公務員(行政職)
- 市区町村の福祉課で障害者支援・介護予防事業に従事
- ハローワークや障害者就労支援センターで就労支援
5. キャリアアップ・資格の活用
① 専門作業療法士・認定作業療法士
- 日本作業療法士協会の認定資格を取得し、専門性を高める
- 専門作業療法士(脳卒中・精神科・発達障害など特定分野のスペシャリスト)
- 認定作業療法士(一定の経験と研修を修了した作業療法士)
② 独立開業
- 作業療法士単独での開業は不可だが、介護事業(訪問リハビリ、デイサービス) などを立ち上げることは可能