保健指導を行う仕事で、看護師の免許を取得した上で保健師養成所などで学び、国家試験に合格しなければならない。
病気の治療ではなく 「予防」 に重点を置き、健康の維持・増進をサポートする役割を担います。
地区活動や健康教育・保健指導などを通じて疾病の予防や健康増進など公衆衛生活動を行う地域看護の専門家。
■主催
厚生労働省
目次
受験資格と難易度
1. 保健師国家試験の受験資格
保健師国家試験を受験するには、看護師の資格 を持っていることが前提となります。
そのため、まずは 看護師免許を取得することが必須 です。
受験資格の取得ルート
以下のいずれかの方法で、受験資格を得ることができます。
ルート | 必要な資格・過程 |
---|---|
① 看護系大学(4年制) | 看護学部の保健師養成課程を修了し、看護師と保健師の国家試験を受験 |
② 看護専門学校・短大+保健師養成学校 | 看護師資格取得後、**保健師養成課程(1年間)**を修了 |
③ 看護師として実務経験後、保健師課程に進学 | 看護師の経験を積みながら、保健師養成課程を修了 |
2. 国家試験の難易度
保健師国家試験は、看護師国家試験と比べて受験者数が少なく、合格率は比較的高め です。
ただし、専門的な知識(公衆衛生、疫学、地域保健)を問う問題が多いため、十分な対策が必要です。
合格率(過去のデータ)
- 2023年:合格率 90.3%
- 2022年:合格率 91.9%
- 2021年:合格率 93.5%
→ 例年90%前後と高い合格率 ですが、しっかりとした勉強が求められます。
試験の難しさ
項目 | 看護師国家試験 | 保健師国家試験 |
---|---|---|
受験者数 | 約65,000人 | 約10,000人 |
合格率 | 90%前後 | 90%前後 |
出題範囲 | 広範囲(臨床知識重視) | 公衆衛生・地域保健が中心 |
難易度 | 臨床的な問題が多い | 統計・行政制度など理論的な問題が多い |
試験内容
1. 試験の概要
- 試験日:毎年2月(看護師国家試験と同日)
- 試験時間:150分(2時間30分)
- 問題数:125問
- 試験形式:筆記試験(選択式)
- 合格基準:おおよそ60%程度の正答率(年度により変動)
- 合格率:例年 90%前後
2. 出題形式
試験は以下の3種類の問題で構成されています。
① 必修問題(10問)
- 基礎的な知識を問う問題
- 看護師国家試験と共通部分あり
- 全問正解が望ましい(一定の基準点が必要)
② 一般問題(105問)
- 保健師の専門分野(公衆衛生・疫学・地域保健)に関する知識
- 基本知識の確認と応用問題が出題
③ 状況設定問題(10問)
- 実務を想定した事例問題
- 文章が長く、問題文をしっかり読む力が必要
- 自治体・企業・学校での保健師の対応が問われる
3. 出題範囲(詳細)
試験は 公衆衛生・疫学・地域保健 に関する幅広い分野から出題されます。
① 公衆衛生学
-
健康増進・予防医学
- 健康日本21(第2次)
- 生活習慣病予防(糖尿病、高血圧、がん)
- 健康寿命の延伸
-
感染症対策
- 感染症法(1類~5類感染症)
- 予防接種(定期接種・任意接種)
- 感染症の発生動向調査
-
保健医療制度
- 医療保険・介護保険制度
- 母子保健法、地域保健法
- 介護保険の認定基準
② 疫学・統計学
-
疫学の基本
- 発生率・有病率の計算
- コホート研究・ケースコントロール研究
- 相対リスク・オッズ比の計算
-
統計の活用
- 標準化死亡比(SMR)の計算
- 信頼区間・統計的有意差
- ヒストグラム・散布図の読み取り
③ 地域保健
-
住民への健康指導
- 乳幼児健診・母子保健
- 高齢者の健康維持・介護予防
- 障がい者支援
-
自治体の保健事業
- 市町村保健センターの役割
- 地域包括支援センターの機能
- 保健師の訪問指導(家庭訪問)
4. 試験対策のポイント
① 過去問を繰り返し解く
- 出題傾向が毎年大きく変わらないため、過去5年分の問題を解く
- 特に 疫学・統計の計算問題 に慣れる
② 公衆衛生・地域保健の最新情報をチェック
- 健康日本21(第2次)
- 新型コロナウイルス関連の感染症法の変更
- 地域包括ケアシステムの最新情報
③ 実践的な問題に慣れる
- 状況設定問題は「現場での対応」を問われるため、事例を読んで考える訓練をする
試験対策
1. 試験のポイントを押さえる
① 試験の特徴を理解
- 筆記試験(125問、選択式)
- 合格基準:約60%の正答率
- 合格率90%前後と比較的高い
- 疫学・統計・地域保健の知識が重要
② 重点分野を把握
分野 | 重点ポイント |
---|---|
公衆衛生学 | 健康増進、感染症対策、医療制度、健康日本21 |
疫学・統計学 | 発生率・有病率の計算、相対リスク・オッズ比、研究デザイン |
地域保健 | 母子保健、高齢者福祉、障がい者支援、地域包括ケアシステム |
産業保健・学校保健 | 労働衛生管理、ストレスチェック、児童生徒の健康管理 |
2. 効率的な勉強法
① 過去問を徹底的に解く
- 5年分の過去問を繰り返し解く
- 正解だけでなく、誤った選択肢の理由も確認
- 統計や計算問題は実際に手を動かして解く
- 問題集や模試を活用して問題の傾向をつかむ
② 公衆衛生・疫学の基礎を押さえる
- 健康日本21(第2次) の主要項目を覚える
- 予防接種の種類(定期・任意) を整理する
- 感染症法(1類〜5類)の特徴と対応策 を理解
- 統計の基本計算(発生率・有病率・標準化死亡比など) を練習
③ 最新の保健政策・法律をチェック
- 健康日本21(第2次)
- 地域包括ケアシステム
- 新型コロナウイルス関連の感染症法改正
- 労働安全衛生法や学校保健安全法の改正点
④ 計算問題に慣れる
- 発生率・有病率の計算
- 相対リスク・オッズ比の求め方
- 標準化死亡比(SMR)の計算
- 疫学研究(コホート研究・ケースコントロール研究) の手法を理解
⑤ 状況設定問題の対策
- 長文問題に慣れるために模試を活用
- 住民の健康支援や産業保健・学校保健の実務をイメージ
- 保健指導や健康教育の具体的な方法を考える
取得後に出来ること
1. 保健師として働ける分野
保健師の主な勤務先は 行政機関・企業・学校・医療機関 など多岐にわたります。
① 行政保健師(公務員保健師)
- 勤務先:市町村の保健センター、保健所
- 仕事内容
- 住民の健康相談、健康診断の企画・運営
- 生活習慣病や感染症の予防活動
- 母子保健(乳幼児健診、妊婦相談)
- 高齢者の介護予防や健康支援
- 災害時の健康支援活動
特徴
- 公務員として安定した雇用
- 地域の健康づくりに関われる
- 健康増進・予防活動に特化
② 産業保健師(企業保健師)
- 勤務先:企業の健康管理室、産業医と連携
- 仕事内容
- 社員の健康管理(健康診断の実施・フォロー)
- ストレスチェック、メンタルヘルス対策
- 労働環境の改善指導
- 生活習慣病予防プログラムの実施
- 長時間労働者の健康相談・指導
特徴
- 企業勤務のため給与水準が高め
- 土日休み、夜勤なしの働き方が可能
- 労働者の健康維持に貢献
③ 学校保健師(教育機関)
- 勤務先:大学・専門学校、教育委員会
- 仕事内容
- 学生の健康診断・健康相談
- 学校での感染症予防や健康教育
- メンタルヘルス対策、ストレス管理指導
- スポーツ障害予防や生活習慣病予防指導
特徴
- 児童・生徒・学生の健康管理に関われる
- 学校という環境で長期的な支援ができる
- 安定した勤務時間で働きやすい
④ 病院・クリニックの保健師
- 勤務先:病院の健康管理部門、健診センター
- 仕事内容
- 健康診断の結果説明、生活習慣指導
- 退院後の健康維持プログラム
- 外来患者への保健指導
特徴
- 医療と連携しながら健康支援ができる
- 臨床経験を活かして働ける
- 病院勤務なので看護業務と兼任する場合も
2. キャリアアップ・専門分野への進出
① 地域医療や行政のリーダーとして活躍
- 市町村や都道府県の保健行政に関与
- 健康政策の企画・立案
- 国の健康増進施策に携わるチャンスも
② 大学院に進学し、専門性を高める
- 公衆衛生学・疫学の研究者としての道
- 保健政策や国際保健の分野での活躍
- 大学教員や研究職を目指すことも可能
③ 専門資格を取得し、さらにスキルアップ
- 第一種衛生管理者資格(産業保健師向け)
- 労働衛生コンサルタント
- 認定産業保健師(産業保健分野での専門資格)
3. 収入・待遇
保健師の給与は勤務先によって異なりますが、看護師より高め になる傾向があります。
勤務先 | 年収の目安 |
---|---|
行政保健師(公務員) | 約400万~600万円(経験年数による) |
産業保健師(企業) | 約500万~700万円(企業規模による) |
学校保健師 | 約400万~500万円 |
病院保健師 | 約350万~550万円 |
特徴
- 公務員保健師は安定性が高い
- 企業保健師は給与が高め
- 病院保健師は看護業務を兼務することも
- 夜勤がなく、働きやすい環境が多い
4. 保健師資格のメリット
- 国家資格のため、一生使える
- 看護師よりも夜勤がなく、規則正しい勤務
- 公務員・企業・教育機関など多様な職場で働ける
- 地域や職場の健康管理に貢献できる
- キャリアアップとして管理職や専門職への道も開ける