建築施工管理技士

建築工事において施工計画の作成、工程管理、安全管理、品質管理などの施工管理業務を担当するための国家資格です。

  • 建築現場での施工管理の専門家として、建物の品質や安全を確保する
  • 公共工事をはじめ、一定規模以上の工事では有資格者が現場に配置されることが法的に求められる

所管官庁

  • 国土交通省が所管
  • 一般財団法人全国建設研修センター(JACIC)が試験実施

等級区分

建築施工管理技士は、業務範囲と難易度に応じて1級2級に分かれています。

等級 対象業務 担当できる工事規模
1級 大規模建築物の施工管理全般 制限なし
2級 小規模・中規模建築物の施工管理 工事規模に制限あり

主催
(財)建設業振興基金

受験資格と難易度

受験資格

1級建築施工管理技士の受験資格

実務経験要件

1級の受験には、建築施工管理に関する一定年数の実務経験が必要です。
学歴や保有資格により、必要な実務経験年数が異なります。

最終学歴・資格 必要な実務経験年数
大学(建築系学科卒) 3年以上
短大・高専・専門学校(建築系学科卒) 5年以上
高校(建築系学科卒) 10年以上
建築系学科以外の学歴 15年以上
2級建築施工管理技士取得者 実務経験3年以上
ポイント
  • 建築系学科卒業者は短縮された実務経験で受験可能。
  • 2級合格後に一定の実務経験を積むことで、1級受験が容易に。

2級建築施工管理技士の受験資格

実務経験要件

2級は、実務経験が浅い方や建築分野未経験者でも比較的取得しやすい資格です。

最終学歴・資格 必要な実務経験年数
大学(建築系学科卒) 実務経験不要
短大・高専・専門学校(建築系学科卒) 実務経験不要
高校(建築系学科卒) 実務経験3年以上
建築系学科以外の学歴 実務経験5年以上
実務経験のみの受験者 5年以上
ポイント
  • 建築系学科卒業者は実務経験がなくても受験可能。
  • 実務経験のみでの受験も可能だが、年数が多く必要。

難易度

建築施工管理技士の試験は、学科試験と実地試験に分かれており、それぞれで難易度が異なります。

1級建築施工管理技士の難易度

合格率
試験区分 合格率
学科試験 約40〜50%
実地試験 約30〜40%
総合合格率 約25〜35%
難易度の特徴
  • 学科試験:

    • 出題範囲が広く、建築法規、施工技術、品質・安全管理など幅広い知識が問われる。
    • 暗記中心の問題も多いが、計算問題や法規問題も含まれ難易度は高い。
  • 実地試験:

    • **実務経験記述が最難関。**自身の現場経験を論理的に記述できないと不合格に。
    • ケーススタディ問題で現場での対応力が試される。
難しさの要因
  • 実務経験が浅いと記述問題で苦戦。
  • 学科・実地ともに幅広い知識が求められる。
  • 時間内に正確な回答をするため、スピードと正確さが必要。

2級建築施工管理技士の難易度

合格率
試験区分 合格率
学科試験 約50〜60%
実地試験 約45〜55%
総合合格率 約40〜50%
難易度の特徴
  • 学科試験:

    • 基本的な建築知識を問う問題が中心で、1級に比べると難易度は低い。
    • 建築系学科卒業者や実務経験者は比較的取りやすい。
  • 実地試験:

    • 実務経験記述では1級よりも簡略化されているが、経験をしっかり説明する必要がある。
    • 簡単な施工計画問題や管理問題が中心。
難しさの要因
  • 未経験者や経験が浅い人は、実務記述に時間を要する。
  • 知識よりも現場経験が問われる場面が多い。

難易度比較(1級 vs 2級)

項目 1級建築施工管理技士 2級建築施工管理技士
出題範囲 広く高度な専門知識が必要 基本的な施工管理知識中心
実地試験 実務経験記述が難関 簡略な経験記述で対応可能
合格率 約25〜35% 約40〜50%
推奨勉強時間 300〜500時間 150〜250時間

試験内容

1級2級に分かれており、どちらも「学科試験」と「実地試験」の2部構成です。

  • 学科試験: 基礎知識や施工管理に関する総合的な知識を問う。
  • 実地試験: 実務経験を基にした記述問題と施工管理実務問題を出題。

等級が上がるほど、出題範囲が広くなり、実務経験の活用が不可欠になります。

試験概要

試験区分 内容 形式 試験時間 合格基準
学科試験 施工管理基礎知識、法規、施工技術 選択式 (マークシート) 約3〜4時間 60%以上
実地試験 実務経験記述、施工管理実務問題 記述式 約2〜3時間 採点基準に基づく総合評価

学科試験の内容

1級・2級共通の出題範囲

学科試験では、施工管理に関する基本的な理論から応用知識までが出題されます。
等級により問題の深さや難易度が異なりますが、出題分野は共通です。

出題科目と詳細内容

1. 施工管理法

出題内容

  • 工程管理:
    • ネットワーク工程表の作成
    • クリティカルパスの計算
  • 品質管理:
    • コンクリートの打設管理
    • 使用材料の品質確認手順
  • 安全管理:
    • 労働災害防止策
    • 高所作業やクレーン作業の安全基準
  • 原価管理:
    • 工事費算出方法
    • 材料・人件費の予算管理方法
2. 建築法規

出題内容

  • 建築基準法:
    • 防火規定、避難経路基準
    • 建築面積・容積率の算出
  • 労働安全衛生法:
    • 作業主任者の配置基準
    • 安全衛生教育の内容
  • 建設業法:
    • 元請・下請契約に関する規定
    • 工事現場の技術者配置要件
3. 建築構造

出題内容

  • 構造力学の基礎:
    • 荷重計算、応力度計算
  • 木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の基礎知識:
    • 耐震・耐火性能
    • 柱・梁・床構造の特徴
4. 施工技術

出題内容

  • 仮設工事: 足場、型枠工事の手順と安全管理
  • 基礎工事: 杭打ち、地盤改良の施工法
  • 構造躯体工事: コンクリート打設、鉄筋組立方法
  • 仕上げ工事: 内装、外壁、屋根工事の施工手順
  • 設備工事: 給排水・電気設備の施工注意点

実地試験の内容

実地試験では、受験者の実務経験の深さ実務知識の応用力が問われます。
特に記述問題では、現場での経験を自分の言葉で説明できることが必要です。

出題形式と構成

項目 出題内容 形式 時間配分
実務経験記述 自身が担当した工事の経験を記述 記述式 約60分
施工管理実務問題 施工計画、品質・安全・原価管理の実務問題 記述・選択式 約90〜120分

実務経験記述

出題内容

  • 自分が経験した工事について、以下を記述:
    • 工事の概要(建物の規模・用途)
    • 自分の担当業務(施工計画、工程管理、品質管理など)
    • 工事中の課題とその解決策

採点ポイント

  • 具体性: 抽象的な表現ではなく、実務経験に基づいた記述か。
  • 問題解決力: 工事中に発生したトラブルの対応策が適切か。
  • 論理的な構成: 工事内容の流れがわかりやすく説明できているか。

施工管理実務問題

出題内容と例題

1. 工程管理問題
  • ネットワーク工程表を見て、遅延リスクのある工程を特定。
  • 工事スケジュールの改善策を提案。
2. 品質管理問題
  • コンクリート打設時の品質確保方法について記述。
  • 材料検査の実施手順を説明。
3. 安全管理問題
  • 足場組立作業時の安全対策を記述。
  • クレーン作業時の安全確認方法についての問題。
4. 原価管理問題
  • 工事費削減の具体策を挙げ、その効果を説明。
  • 材料ロス削減のための現場管理方法を提案。

採点ポイント

  • 現実的かつ実務的な解答が求められる。
  • 論理的な説明と具体例が含まれていることが重要。
  • 記述の正確さと明快さが評価対象。

1級・2級試験内容の比較

項目 1級建築施工管理技士 2級建築施工管理技士
出題範囲 広く、専門的で実務的 基礎中心で実務経験問う
実務経験記述 高度な課題解決力が必要 基礎的な経験説明で可
施工管理問題 大規模工事を前提とした問題 小〜中規模工事の問題
合格率 約30〜40% 約45〜55%
試験時間 学科4時間 / 実地3時間 学科3時間 / 実地2時間

試験対策

学科試験対策

効果的な勉強法

1. 過去問題の反復演習
  • 10年分の過去問を最低2周解く
  • 問題を解いた後は、必ず解説を読み理解を深める
  • 間違えた問題はノートにまとめて復習
2. 重要科目の重点学習
  • 施工管理法: 出題割合が高いので優先的に勉強
  • 法規: 覚えるべき数値や条文は暗記カード活用
  • 施工技術: 実際の現場をイメージしながら学習
3. 計算問題対策
  • 工程管理・原価管理の計算問題を毎日1問解く
  • クリティカルパスや工事費算出の練習を積む

おすすめ学習ツール

  • 過去問題集: 各年度別に問題を解く
  • 法規集: 建築基準法や労働安全衛生法を抜粋して暗記
  • アプリ: 移動中に用語や法規を復習

実地試験対策

実地試験は記述式問題が中心で、特に実務経験記述が合否を分けます。
現場経験をどれだけ具体的に説明できるかが重要です。

実務経験記述の対策

1. 経験の棚卸し
  • 過去の現場で担当した業務を時系列で整理
  • 担当業務内容、問題発生時の対応、工夫した点をメモ
2. 記述練習
  • 予想問題を使用し、実際に手書きで文章作成
  • 200〜400字以内で簡潔かつ論理的にまとめる練習
3. 添削指導の活用
  • 上司や同僚に読んでもらい、第三者視点で改善
  • 添削サービスを利用して客観的な評価を受ける

施工管理実務問題の対策

主な問題傾向
  • 工程管理のトラブルと改善策
  • 品質管理の具体的な手順
  • 安全管理の実施計画と教育方法
解答のポイント
  • 実務に基づいた具体例を盛り込む
  • 箇条書きで整理し、簡潔な表現を心がける
  • 法規の数値や規定を正確に記述

模擬試験の活用方法

模擬試験実施のメリット

  • 本番形式に慣れることで緊張感を軽減
  • 時間配分を体感し、実際のペースをつかむ
  • 自分の弱点分野を明確化して対策強化

模擬試験の実施タイミング

  • 学科試験:本番2か月前から月2回実施
  • 実地試験:本番1か月前から毎週実施

合格のためのポイントまとめ

学科試験

  • **過去問演習が最重要!**繰り返し解いて出題傾向をつかむ
  • 法規と施工管理法を重点的に勉強
  • 計算問題に慣れておくことで点数を稼げる

実地試験

  • 実務経験の具体的な説明力を養う
  • 記述練習と添削を繰り返し、文章の質を向上
  • 模擬問題で本番さながらの練習が効果的、

取得後に出来ること

取得すると、建築現場において責任あるポジションで幅広い業務に携わることが可能になります。
特に、施工計画の立案から現場管理、品質・安全・工程・原価管理までを総合的に担当できるようになり、キャリアアップや収入向上に直結します。

取得後に得られる主な業務権限

1. 主任技術者としての就任(1級・2級)

  • 主任技術者は、工事現場に常駐して施工の技術的管理を行う立場です。
  • 1級資格者: 大規模建築物や公共事業で主任技術者に就任可能。
  • 2級資格者: 小規模から中規模建築物の主任技術者として活躍。
主任技術者の主な業務
  • 工程・品質・安全・原価管理の総括
  • 発注者や元請との打ち合わせおよび調整業務
  • 工事記録の作成および提出

2. 監理技術者としての就任(1級のみ)

  • 監理技術者は、元請として下請業者を使う大規模工事において必要な技術者です。
  • 監理技術者資格者証の交付を受けると、公共工事や一定規模以上の民間工事で就任可能。
監理技術者の主な業務
  • 下請業者の施工内容や工程の監理
  • 技術上の指導および管理
  • 発注者との折衝および報告業務

キャリアアップと職務範囲の拡大

1. 大規模プロジェクトへの参画

  • 1級取得者:

    • 高層ビル、商業施設、公共施設など大規模建築物の現場管理を担当。
    • 海外の大規模プロジェクトでも施工管理技術者として活躍。
  • 2級取得者:

    • 小規模から中規模建築物の工事管理を単独で担当。
    • 住宅や小型店舗の現場責任者としてプロジェクトを進行。

2. 昇進・昇格のチャンス拡大

  • 現場代理人や管理職に昇進:
    • 有資格者は、現場代理人や工事部長など管理職へ昇進しやすい。
  • 技術指導者として活躍:
    • 若手技術者の育成や現場技術研修の講師として活動。

3. 収入アップと資格手当

  • 資格手当支給:
    • 多くの建設会社で、取得者に月額5,000〜30,000円の手当が支給。
  • 年収の向上:
    • 無資格者と比較して、平均年収が50万〜100万円アップするケースが多い。

活躍できる業界と職種

業界 職種 資格取得後にできること
ゼネコン 現場代理人、監理技術者 大規模プロジェクトの現場統括、発注者対応
建設会社 主任技術者、工事管理者 工事全体の管理、施工図作成、下請業者の指導
設計事務所 技術支援担当 設計と施工の調整、施工段階での図面チェック
公共団体・官公庁 工事監督員、発注者支援業務 公共事業の施工監督や技術支援業務
フリーランス 施工管理技術者 独立して建築現場の監理業務を請け負う
不動産・デベロッパー 建設管理担当 建物開発に伴う施工管理、品質・コスト管理

独立・起業での活用

1. 独立して施工管理業務を受託

  • フリーランスとしての独立:
    • 小規模建築物の現場監理を請負契約で受注可能。
  • 1級資格者:
    • 大規模工事の現場監督としてフリーで活動可能。

2. 自社建設会社の設立

  • 資格取得後、条件を満たせば建設業許可を取得し、会社設立が可能。
  • 自社で請負工事の施工管理責任者として活躍。

公共工事での優遇措置

1. 公共工事の入札参加資格向上

  • 建設会社が公共事業に入札する際、施工管理技士の有資格者数が評価項目に含まれる。
  • 有資格者が多いほど入札時に有利。

2. 公共事業の監理技術者就任(1級)

  • 大型公共工事の現場で監理技術者として配置が義務化されているため、
    資格保有者は発注者(官公庁)からも信頼されやすい。

資格取得後のキャリアパス

資格取得後のステップ 担当できる業務 キャリアの広がり
2級取得直後 小規模工事の主任技術者 現場責任者として独り立ち
2級取得後実務経験を積む 中規模建築物の現場管理 1級受験資格を得てステップアップ
1級取得直後 大規模工事の主任技術者・現場代理人 大規模プロジェクトへの参画
1級取得後経験を積む 監理技術者、工事部長、技術部門責任者 組織の管理職や経営層へ昇進
1級取得後独立 建設会社設立、フリーランスで監理業務受託 独立して自社工事の受注が可能

取得後に得られるスキルと信頼性

1. 現場管理能力の証明

  • 工程・品質・安全・原価管理のスキルが証明され、現場での信頼性が向上。

2. クライアントとの交渉力向上

  • 資格保有者は技術的な裏付けがあるため、クライアントとの打ち合わせや交渉がスムーズ。

3. 若手技術者の育成

  • 現場で後輩指導やOJTトレーナーとして活躍。

おすすめの講習、教材

教材

 講座

建築系資格一覧

一級建築士
二級建築士
木造建築士
構造設計一級建築士
設備設計一級建築士
建築施工管理技士
建築図面製作技能士
土木施工管理技士
ビル経営管理士
不動産鑑定士
測量士
宅地建物取引主任者
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玉掛技能講習
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CADトレース技能審査
建築CAD検定試験
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