日本の建築設備(電気・空調・給排水など)に関する専門知識を持つことを証明する国家資格です。
主に建築設備の設計や施工管理に関わる人が取得するもので、建築士と協力しながら建築設備の適切な設計・管理を行う役割を担います。
建築設備士の役割
建築設備士の主な役割は以下の通りです。
-
建築設備の設計支援
- 建築士と連携し、設備の専門的な視点で設計を補助
- 建築基準法や省エネ基準に基づいた設備計画を作成
-
建築設備の施工・管理
- 設計図に基づき、設備工事が適切に行われているか確認
- 現場でのトラブル対応や改善策の提案
-
省エネルギー・環境対策の推進
- 建物のエネルギー効率を考えた設備設計
- ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)やSDGs対応の設備計画
目次
受験資格と難易度
受験資格
建築設備士試験を受けるには、一定の学歴や実務経験が必要です。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
① 学歴+実務経験
学歴 | 実務経験 |
---|---|
大学で建築設備関連の学科を卒業 | 1年以上 |
短大・高専(5年制)で建築設備関連を修了 | 2年以上 |
短大・高専(3年制)で建築設備関連を修了 | 4年以上 |
高校で建築設備関連を修了 | 5年以上 |
② 建築士資格を持っている場合
- 1級建築士・2級建築士・木造建築士 の資格を持っている場合、実務経験は不要で、すぐに受験可能。
③ 実務経験のみで受験する場合
- 建築設備に関する実務経験が7年以上あれば、学歴に関係なく受験可能。
難易度
合格率
建築設備士試験の合格率は20〜30%程度で、比較的難易度の高い資格です。
試験の難しさ
-
学科試験
- 出題範囲が広く、特に「法規」「設備の専門知識(電気・空調・給排水)」の理解が必須。
- 過去問の傾向を分析し、効率よく学習する必要がある。
-
設計製図試験
- 建築設備の設計図を正確に描く必要があり、作図スピードと精度が求められる。
- 製図試験の独特なルール(表現方法や配置基準)に慣れる必要がある。
勉強時間の目安
- 学科試験対策:300〜400時間(過去問中心+法規暗記)
- 設計製図試験対策:100〜200時間(製図の練習+過去問対策)
試験内容
学科試験(マークシート方式)
試験概要
- 試験時間:4時間
- 問題数:50問(五肢択一式)
- 合格基準:おおよそ 60%(30問程度の正解)
出題範囲
学科試験では、建築設備に関する幅広い知識が問われます。
科目 | 主な内容 |
---|---|
建築一般 | 建築計画、構造、耐震設計、建築材料、施工技術 |
建築設備 | 給排水・衛生設備、空調・換気設備、電気設備、防災設備 |
法規 | 建築基準法、消防法、省エネ法、設備関連の法令 |
科目ごとのポイント
建築一般
- 建築計画(建物の用途、動線計画、ユニバーサルデザイン)
- 建築構造(鉄筋コンクリート・鉄骨構造の基礎知識)
- 建築材料(断熱材、防火材料の特性)
建築設備
建築設備の専門知識が問われる最重要分野!
- 給排水・衛生設備
- 配管材料・継手・バルブの種類
- 貯水槽の管理、給水・排水方式
- 空調・換気設備
- エアコン・ボイラー・ヒートポンプの仕組み
- ダクト設計、換気方式(自然換気・機械換気)
- 電気設備
- 受変電設備、照明設計(照度計算)
- コンセント・幹線設備の設計基準
- 防災設備
- 自動火災報知設備、スプリンクラー、避雷設備
- 防煙・排煙設備
法規
- 建築基準法:設備設計に関する規定(換気・給水・防火設備の基準)
- 消防法:防災設備の設置基準(火災報知器・避難経路の規定)
- 省エネ法:省エネ建築物の基準(ZEB、断熱性能)
設計製図試験
試験概要
- 試験時間:5時間
- 試験形式:
- 記述式(設備計画の提案)
- 製図(建築設備の設計図を作成)
- 合格基準:総合的な評価(明確な配点基準は非公開)
試験内容
与えられた設計条件をもとに、建築設備の設計を行います。
具体的な試験の流れ
- 設計条件の確認
- どのような建物か(例:オフィスビル、病院、マンション)
- どの設備を設計するのか(空調・給排水・電気など)
- 記述式問題
- 設計意図や設備計画の説明
- 省エネ対策の提案(高効率設備の採用など)
- 製図作成
- 設備図の作成(配管・ダクト・電気配線の設計)
- シンボルマークの正しい使用(JIS規格に準拠)
- レイアウトの適正さ(動線確保、メンテナンススペース)
製図試験の難しさ
- 試験時間5時間の中で、正確な図面を仕上げる必要がある
- JIS規格に準拠した記号を使用するため、慣れが必要
- 寸法・スケールの計算ミスが命取りになる
試験対策
学科試験の対策
① 過去問を徹底的に解く
- 過去5〜10年分の問題を解く
出題傾向が似ているため、繰り返し出る問題を重点的に対策する。 - 間違えた問題を分析し、解説を読んで理解する
ただ解くだけでなく、なぜ間違えたのかを明確にすることが大切。
② 法規対策(建築基準法・消防法・省エネ法)
- 暗記だけでなく、実務に即した理解をする
例えば「換気設備の必要換気量」や「スプリンクラー設置基準」など、設備士として実際に活用する知識を意識する。 - 条文を読むだけでなく、具体的なケースで考える
「この建物に必要な防災設備は?」といった実例を考えて学習する。
③ 設備ごとのポイントを押さえる
- 給排水・衛生設備
- 給水方式(直結増圧方式・高置水槽方式など)
- 排水管の勾配・トラップの役割
- 空調・換気設備
- 空調負荷計算(冷房・暖房負荷の計算方法)
- 換気方式(第1種〜第3種換気の特徴)
- 電気設備
- 受変電設備の基礎知識(キュービクル・高圧受電設備)
- 照度計算(室内の照明計画に必要)
④ 模擬試験を実施する
- 本番と同じ時間で問題を解く練習をする
4時間集中して解くことで、時間配分の感覚をつかむ。 - 分からない問題は飛ばして、確実に取れる問題から解く
合格ラインは60%(30問程度)なので、得点できる分野をしっかり取る。
設計製図試験の対策
① JIS規格の設備記号を覚える
- 配管・電気・ダクトの記号を正しく使う
記号の誤りは減点対象になるため、JIS規格の記号を完全に覚える。 - 製図の基本ルールを押さえる
管径・ダクトサイズ・電気配線の表記など、図面作成時のルールを理解する。
② 過去問の製図を実際に描いてみる
- まずは1回、自分で製図を描いてみる
初めてだと時間が足りなくなるため、何度も練習が必要。 - 模範解答と比較し、間違いを修正する
設備配置や配管ルートの考え方を身につける。
③ 時間内に描けるように練習
- 製図時間は5時間なので、4時間以内に仕上げる練習をする
本番では見直し時間を確保するため、制限時間を短めに設定して練習する。 - できるだけ手を止めずに描く習慣をつける
製図のスピードが重要なので、手順を決めて描く流れを確立する。
④ 設計の意図を説明できるようにする
- 記述式の対策として、設計意図を文章でまとめる練習をする
例えば、「この設備配置にした理由」「省エネ対策として採用した設備の説明」など、簡潔に論理的な説明ができるようにする。
取得後に出来ること
建築設備士の主な業務
① 建築士との協働による設備設計の補助
- 建築士(1級・2級建築士)が設計する建物に対し、空調・換気・給排水・電気設備の適切な設計をサポートする。
- 建築士に設備計画のアドバイスを行い、建築と設備の調和を図る。
② 設備設計・施工管理業務
- 建築設備の設計業務(設備設計事務所など)
- 給排水・衛生、空調・換気、電気設備などの設計・計画を担当できる。
- 施工管理業務(ゼネコン・設備工事会社など)
- 設備工事が図面通りに進められているか確認し、施工の品質管理を行う。
③ 省エネ設計・環境配慮設計の提案
- ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)設計や省エネ対策の提案が可能になる。
- 高効率設備(LED照明、高効率空調、太陽光発電など)の選定や導入を推進できる。
④ 建築士試験の一部免除
- 建築設備士の資格を持っていると、1級・2級建築士試験の学科試験の一部科目が免除される。
- 1級建築士:学科I(計画)が免除
- 2級建築士:学科I(計画)と学科III(設備)が免除
資格取得後のキャリアアップ
① 設備設計の専門家としてのキャリア
- 設備設計事務所やゼネコンでの設計業務で評価が高まる。
- 1級建築士の取得を目指せば、さらに責任ある設計業務に携われる。
② 建築設備関連の上位資格の取得
- 建築設備士を取得後、以下の上位資格に挑戦できる。
- 設備設計一級建築士(設備設計の専門家としてさらに高い資格)
- 電気主任技術者(電験)(電気設備の保守・管理に関わる資格)
- 管工事施工管理技士(空調・給排水設備工事の施工管理が可能)
③ 独立・コンサルタント業務
- 設備設計事務所やコンサルティング業務として独立することも可能。
- 省エネや環境対策の専門家として企業向けのアドバイザー業務もできる。
建築系資格一覧
一級建築士
二級建築士
木造建築士
構造設計一級建築士
設備設計一級建築士
建築施工管理技士
建築図面製作技能士
土木施工管理技士
ビル経営管理士
不動産鑑定士
測量士
宅地建物取引主任者
管理業務主任者
マンション管理士
土地家屋調査士
玉掛技能講習
環境計量士
管工事施工管理技士
建設機械施工技士
建築設備士
建築業経理士
コンクリート技士
CAD実務キャリア認定制度
CADトレース技能審査
建築CAD検定試験
Autodesk認定試験
3次元CAD利用技術者試験
マンションリフォームマネージャー
ダッソー・システムズ CATIA 認定資格
マンション維持修繕技術者
REセールスパーソンライセンス