救急現場、病院搬送中の救急車内において医師の指示のもと気道確保、心配回復、輸液処置など救急救命処置を行うための資格。
救急医療の現場で傷病者に対し高度な救命処置を行うことができ消防署の救急隊員として活動することが多いですが、病院や民間救急などでも活躍しています。
救急救命士の資格を取得すると、通常の救急隊員よりも高度な医療行為が認められます。特に、医師の指示なしで行える処置が増え、救急医療の最前線で活躍できるようになります。
目次
受験資格と難易度
受験資格
救急救命士国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要がある。
1. 養成機関(専門学校・大学)を修了する(一般的なルート)
- 大学(4年制)や専門学校(2年制・3年制)で救急救命士の養成課程を修了することが必要
- 在学中に病院や消防機関での実習を受ける
- 卒業後、自動的に受験資格が与えられる
2. 消防士(救急隊員)として一定の実務経験を積む(実務経験ルート)
- 消防署に就職し、救急隊員として一定の経験を積む
- 「救急科」の講習や特定の研修を修了することで受験資格を得る
- 近年はこのルートでの受験者は減少傾向
3. 自衛隊・海上保安庁などの特定の職種で救急医療経験を積む
- 自衛隊の医療関連部門や海上保安庁の救急業務に従事した後、特定の研修を修了することで受験資格を得る場合もある
難易度(合格率や試験内容)
1. 合格率
- 例年の合格率は70〜90%
- 令和5年度(2023年):83.4%
- 令和4年度(2022年):87.9%
- 令和3年度(2021年):88.2%
比較的高い合格率だが、しっかりと勉強しなければ合格は難しい
必修問題は80%以上の正解が必須
- 必修問題は落とせないので、確実に対策する必要がある
- 一般問題・状況設定問題はある程度の点数で合格可能
試験内容
試験形式
- 筆記試験のみ(マークシート方式)
- 全160問(必修問題・一般問題・状況設定問題)
- 試験時間:5時間(午前・午後に分かれる)
出題範囲
1. 基礎医学
- 解剖学(人体の構造と機能)
- 生理学(循環器、呼吸器、神経系などの働き)
- 病理学(病気の成り立ち、炎症、感染症)
2. 臨床医学
- 内科(心疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、糖尿病 など)
- 外科(外傷、骨折、熱傷 など)
- 小児科(新生児・乳幼児の救急処置)
- 精神科(意識障害、精神疾患の救急対応)
3. 救急処置
- 心肺蘇生(CPR)
- AED(自動体外式除細動器)の使用
- 気道確保(気管挿管、バッグバルブマスクなど)
- 静脈路確保(点滴)
- 薬剤投与(アドレナリン、ブドウ糖 など)
4. 救急搬送・災害医療
- 救急搬送の流れ(プレホスピタルケア)
- トリアージ(災害時の重症度分類)
- 大規模災害対応(DMATの役割)
- 感染症対策
5. 関係法規
- 医療法
- 救急救命士法
- 医師法
- 個人情報保護法
試験対策
1. 勉強の進め方
救急救命士国家試験は幅広い医学知識が必要ですが、基本をしっかり押さえれば合格できます。以下のステップで効率よく学習を進めましょう。
① 試験範囲を把握する
まずは出題範囲を理解し、重点的に勉強すべき分野を整理する。
- 基礎医学(解剖学・生理学・病理学) … 人体の構造と機能を理解
- 臨床医学(内科・外科・小児科・精神科など) … 救急医療に関係する疾患や外傷を学ぶ
- 救急処置 … 心肺蘇生(CPR)、AED、気道確保、薬剤投与などの実践的知識
- 救急搬送・災害医療 … トリアージや災害時の対応
- 関係法規 … 救急救命士法、医療法、個人情報保護法など
② 参考書・問題集を活用する
- 救急救命士国家試験対策の専門書を使用し、基礎知識を固める
- **過去問(3〜5年分)**を解き、試験の出題傾向を把握する
- 問題集を繰り返し解くことで、知識を定着させる
③ 過去問・模試を活用する
- 過去問を解いて出題傾向をつかむ(特に必修問題は確実に正解できるようにする)
- 模試を受けて時間配分や問題形式に慣れる
- 間違えた問題の解説をしっかり読む(なぜ間違えたのかを分析する)
2. 分野別の対策方法
基礎医学(解剖学・生理学・病理学)
- イラストや図を活用して理解する(人体の構造や機能をイメージしやすくする)
- 生理学は「心臓・呼吸・神経系」を重点的に学習する
臨床医学(内科・外科・小児科・精神科など)
- 救急でよく遭遇する疾患を優先的に学ぶ(心疾患、脳卒中、呼吸器疾患など)
- 症状ごとの対応を覚える(例:意識障害→血糖値測定+ブドウ糖投与など)
救急処置(実践知識)
- 心肺蘇生(CPR)や気道確保の手順を頭に入れる
- 薬剤の適応や使用条件を確認する(エピネフリンの投与基準など)
- 実習経験を思い出しながら勉強すると効果的
救急搬送・災害医療
- トリアージの方法を理解する(色分けの基準など)
- 災害時の医療体制(DMATなど)を学ぶ
関係法規(法律・制度)
- 法律の条文を丸暗記するのではなく、要点を理解する
- 救急救命士法の制限行為や医師の指示が必要な処置を整理する
3. 試験直前のポイント
- 必修問題の対策を徹底する(正答率80%以上が必須)
- 模試の結果を見直し、弱点分野を重点的に復習する
- 試験当日は時間配分に注意し、焦らず解答する
取得後に出来ること
1. 救急現場での高度な医療行為
① 医師の指示なしでできること(特定行為)
- 気道確保(バッグバルブマスク、気管チューブの挿入など)
- 静脈路確保(点滴のためのルート確保)
- アドレナリン(エピネフリン)の投与(心停止時)
- AED(自動体外式除細動器)の使用
- 心肺蘇生(CPR)
- 止血処置・骨折固定・外傷管理
- 酸素投与
② 医師の指示があればできること
- ブドウ糖の投与(低血糖発作時)
- 硝酸薬の投与(狭心症・心筋梗塞時)
- 12誘導心電図の記録・伝送(病院と連携して診断を補助)
- 医師の判断によるその他の医療行為
2. 活躍できる職場・分野
① 消防機関(救急隊員として活動)
- 日本の救急救命士の約90%は消防署で勤務
- 119番通報を受け、救急車で現場に出動し、傷病者を医療機関に搬送
- 病院到着前の救命処置(プレホスピタルケア)を担当
② 病院(救急外来・救命救急センター)
- 救急外来やER(救急部門)で医師の補助を行う
- 救急患者のトリアージや初期対応
- 医療機器の操作や処置のサポート
③ 民間救急(患者搬送サービス・イベント救護)
- 民間の救急搬送会社で、病院間の転院搬送などを担当
- スポーツ大会やコンサートの救護スタッフとして待機
④ 災害派遣(DMAT・国際医療支援)
- DMAT(災害派遣医療チーム)として大規模災害時に出動
- 国際救援活動(NGOや国際機関の医療チーム)に参加
3. 救急救命士のキャリアアップ
① 資格取得後に目指せる専門分野
- 高度救命救急センターの勤務(救命医療のプロフェッショナルとして活躍)
- ドクターカー・ドクターヘリのスタッフ(医師とともに救急現場へ出動)
- 指導救急救命士(新人の教育・研修を担当)
② 追加資格の取得
- 認定救急救命士(より高度な医療行為が可能になる)
- 看護師資格を取得して救急看護師に転向する
- 海外の救急資格(パラメディックなど)を取得し、国際的に活躍する