環境計量士

環境計量士は、環境に関する測定業務を正確かつ適正に行うための国家資格です。

  • 環境汚染防止や環境保全の観点から、排出ガスや水質などの計量業務を担当します。
  • 測定データの信頼性を保証する役割を担い、行政機関や企業の環境対策に貢献します。

所管官庁

  • 経済産業省が所管
  • 計量法に基づいて資格制度が運用されています。

資格の種類

環境計量士は2種類あり、測定対象に応じた資格取得が求められます。

資格種別 対象測定物質 主な業務内容
大気関係 排出ガス中の有害物質測定 工場・事業所の大気汚染測定
水質関係 排水中の有害物質、河川水の測定 工場排水や環境水の水質分析

主催
(社)日本環境測定分析協会

受験資格と難易度

受験資格

環境計量士試験は、学歴や実務経験に応じて受験資格が設定されています。

基本的に、理系学科卒業者は実務経験が短縮され、文系出身者や学歴がない場合は一定の実務経験が求められます。

環境計量士(大気・水質)の受験資格一覧

最終学歴・資格 必要な実務経験年数
理系の大学卒(化学、環境、物理、生物、工学系) 実務経験不要
理系の短大・高専・専門学校卒 実務経験1年以上
高校卒業(理系学科) 実務経験3年以上
文系学科卒業 実務経験5年以上
学歴不問(中卒含む) 実務経験7年以上
他の計量士資格保有者 実務経験不要(関連分野のみ)

ポイント

  • 理系学科卒業者は受験しやすい:大学で化学や物理を専攻していれば実務経験は不要です。
  • 文系・学歴不問でも実務経験があれば受験可能:環境測定業務に従事していれば、年数を満たすことで受験資格を得られます。
  • 既に計量士資格を持っている場合は有利:他分野の計量士資格があれば、実務経験が免除されることがあります。

難易度

環境計量士試験は、大気関係水質関係に分かれており、どちらも合格には専門知識と計算力が必要です。
特に理系知識(化学、物理、数学)を問う問題が多く、初学者にとってはやや難しい試験です。

合格率

年度 大気関係合格率 水質関係合格率 全体平均合格率
2021年 約15.2% 約17.8% 約16.5%
2022年 約14.8% 約16.3% 約15.5%
2023年 約13.7% 約15.9% 約14.8%
  • 平均合格率は約15〜17%前後で難関資格に分類されます。
  • 水質関係の方がわずかに合格率が高い傾向があります。

試験構成と難易度

科目 出題数 難易度 内容
計量に関する基礎知識 約20問 計量法規、統計学、物理計測の基礎
専門知識(大気または水質) 約30問 非常に高 化学分析法、測定原理、環境法規
実務問題 約10問 測定計画、測定機器の取り扱い、報告書作成

試験内容

大気関係水質関係に分かれており、それぞれの試験内容は共通部分と専門部分があります。

  • 共通部分: 計量基礎知識(法規・数学・物理計測)
  • 専門部分: 大気または水質の測定方法・機器知識・実務問題

試験概要

試験区分 試験時間 出題数 合格基準
学科試験 約3時間 全60問 約60%(36問以上正解)
試験形式 マークシート方式(四肢択一)    

試験科目と出題範囲

1. 計量に関する基礎知識(共通科目)

この科目は、すべての受験者が共通して受ける部分であり、計量法規や物理計測、統計知識が問われます。

出題数・配点
  • 20問
  • 配点比率が高く、確実に得点すべき科目です。
出題内容
計量法規
  • 計量法の基本概念
  • 計量器の検定・検査制度
  • 計量士の業務範囲と罰則規定
統計・数学
  • 平均値・分散・標準偏差の計算
  • 回帰分析、正規分布の理解
  • 測定誤差と不確かさの扱い
物理計測
  • 温度、圧力、流量の測定方法
  • センサの構造と特性
  • 計測器の校正手順

2. 専門知識科目(大気関係または水質関係)

専門知識科目では、受験者が選択した分野(大気または水質)の測定方法や環境法規の知識が問われます。

出題数・配点
  • 30問
  • 分野ごとの測定技術や機器操作に関する問題が中心です。
【大気関係専門科目】
出題内容
  • 大気中有害物質の測定技術
  • 粉じん・ばい煙の測定法(JIS規格準拠)
  • 自動測定機器の原理(NDIR法、FTIR法など)
  • 大気汚染防止法に基づく測定基準
  • ガス分析機器の構造と操作手順
よく出題される項目
  • ばい煙測定の方法
  • 大気中の硫黄酸化物・窒素酸化物の測定方法
  • 浮遊粒子状物質の測定基準と計算問題
【水質関係専門科目】
出題内容
  • 工場排水、河川水、地下水の測定法
  • 化学的酸素要求量(COD)や生物化学的酸素要求量(BOD)の測定法
  • 金属類(鉛・水銀)の定量分析
  • 水質汚濁防止法に基づく測定基準
  • 吸光光度法、分光分析法の操作方法
よく出題される項目
  • COD、BOD測定の計算問題
  • 水中重金属の分析方法と機器選定
  • ろ過操作とサンプリング方法

3. 実務問題(応用問題)

実務問題は、実際の測定現場での状況を想定した応用問題です。
測定手順・データ解析・報告書作成に関する実務的知識が問われます。

出題数・配点
  • 10問
  • 現場での経験があれば比較的解きやすいですが、初学者には難易度が高めです。
出題内容
測定計画の立案
  • 測定対象の選定とサンプリング方法
  • 測定頻度や期間の設定基準
測定データの解析
  • 測定誤差の評価
  • 異常値処理とデータの信頼性確認
報告書作成
  • 計量証明書に必要な項目の確認
  • 測定結果の法令適合性評価
よく出題される項目
  • 測定結果のデータ処理と統計解析
  • 測定機器の校正手順と点検項目
  • 測定中のトラブル対応方法

合格基準と採点方法

合格ライン

  • 総合得点で60%以上が合格基準
  • 各科目ごとの足切りはありませんが、専門知識での高得点が重要です。

採点のポイント

  • 計量基礎知識: 16問以上の正解を目指す
  • 専門知識: 最低20問以上の正答で合格圏内
  • 実務問題: 記述はなく選択式ですが、現場経験があると有利

試験対策

分野別試験対策

1. 計量に関する基礎知識対策(20問)

重要ポイント

  • 統計問題が頻出(分散、標準偏差、回帰分析)
  • 計量法規の罰則規定や数値は確実に暗記
  • 物理計測は公式の丸暗記ではなく、公式の意味を理解して覚える

学習方法

  • 統計問題は毎日1問ずつ解き、計算スピードを上げる
  • 計量法は暗記カードを作成し、隙間時間で復習
  • 測定器の原理や操作法は図解を使って理解

具体的な演習内容

  • 平均値・分散・標準偏差の計算練習
  • 計量法の用語確認と罰則問題の過去問演習
  • 温度・圧力・流量測定に関する過去問10年分演習

2. 専門知識対策(30問)

専門知識は大気関係水質関係に分かれ、受験者はどちらかを選択します。

【大気関係専門知識対策】

出題傾向
  • ばい煙測定法やガス分析機器の構造問題が頻出
  • 自動測定器の原理や校正手順が問われる
学習方法
  • JIS規格を確認し、測定法の手順を整理
  • 各測定機器の名称・原理・使用目的を表でまとめる
  • 測定基準値や許容値は暗記
重点対策項目
  • 硫黄酸化物・窒素酸化物測定法の流れ
  • ばい煙測定における捕集器の選定
  • 大気汚染防止法に基づく測定基準値暗記

【水質関係専門知識対策】

出題傾向
  • COD、BOD測定法に関する問題が多く出題
  • 水中有害物質(鉛、カドミウム)の分析法が頻出
学習方法
  • 滴定法・吸光光度法をマスター
  • 試薬の調整方法と濃度計算を重点的に学習
  • 測定機器の特徴を一覧化して比較学習
重点対策項目
  • COD、BOD測定法の手順と計算問題
  • 水中金属類の分析方法と適用機器
  • 水質汚濁防止法の規定と許容基準値の暗記

3. 実務問題対策(10問)

実務問題は、測定現場での応用力が試されます。

出題傾向

  • 測定計画の立案・機器選定問題が頻出
  • 異常値発見時の対応策や報告書作成に関する問題

学習方法

  • 過去問から実務問題を抽出し、事例ごとに原因と対処法を整理
  • 測定計画作成問題は実際に書き出して練習
  • 計量証明書の作成要領を確認し、法令適合性評価を練習

重点対策項目

  • 測定計画の作成手順
  • データ異常時の対応フロー
  • 計量証明書作成時の注意点

模擬試験の活用方法

実施のメリット

  • 本番形式に慣れ、緊張感を軽減
  • 時間配分の確認で本番での焦りを回避
  • 自己採点で弱点を特定し、直前の学習に活かす

実施スケジュール

  • 2か月前: 月2回模擬試験でペース確認
  • 1か月前: 毎週実施し、合格圏内得点(60%以上)を目指す
  • 直前1週間: 毎日模擬試験+復習で仕上げ

合格へのポイントまとめ

1. 計算問題の徹底演習

  • 統計・濃度・測定計算を毎日解き、ミスを減らす習慣をつける

2. 過去問10年分を3周以上演習

  • 同じ問題が出やすい分野は特に繰り返し解く
  • 間違えた問題は必ず原因を分析し、再度解き直す

3. 暗記分野はカード活用で短期間で定着

  • 計量法の数字問題はカードを持ち歩いて隙間時間に復習

4. 模擬試験で本番力を強化

  • 合格圏内(60%以上)を常に維持することを目標に
  • 実施後は間違い問題の復習を最優先

取得後に出来ること

取得すると、環境測定業務において法的に認められた責任者として活躍できます。

特に、計量証明書の作成・署名ができるため、企業や行政での環境管理業務において非常に重要なポジションを担います。

主な業務内容

1. 計量証明書の作成と署名

  • 環境測定結果に基づく計量証明書を作成し、署名が可能
  • 証明書は工場の排出ガス・排水基準の適合性確認に必要で、法的効力を持つ
  • 証明書の作成は環境計量士の独占業務であり、無資格者は作成できません

2. 環境測定業務の責任者として活躍

  • 測定計画の立案からデータ分析、結果の評価まで統括
  • 測定機器の選定や保守管理、測定データの品質保証業務
  • 測定現場での指導や、作業員への技術的指導が可能

3. 企業内での環境管理業務

  • 製造業や化学工場の環境管理部門での排出基準遵守の確認
  • 工場の排ガス、排水管理の責任者として活動
  • 環境監査やISO14001などの環境マネジメントシステム構築支援

活躍できる業界と職種

業界 職種 資格取得後にできること
環境測定会社 測定技術者、計量証明責任者 環境測定の責任者として計量証明書を発行
製造業(化学・自動車) 環境管理担当 工場の排出ガス・排水の測定および管理
建設会社 環境調査員 工事現場での騒音・振動・大気測定の実施
官公庁・自治体 環境技術職員、調査員 公共施設や地域環境の監視業務
環境コンサルタント 環境アドバイザー 企業への環境改善提案、法令遵守指導

キャリアアップと収入向上

1. 企業内での昇進・昇格が有利

  • 環境管理部門の管理職や技術主任への昇格が可能
  • 環境関連業務を担うことで、会社内での信頼と評価が向上

2. 資格手当や年収アップ

  • 多くの企業で月額5,000円〜20,000円程度の資格手当が支給
  • 年収ベースで50万円〜100万円以上のアップが見込める

3. 公共事業への参画

  • 官公庁発注の環境測定案件に携われる
  • 公共施設建設やインフラ整備時の環境影響評価を担当

独立・フリーランスでの活躍

1. 計量証明事業所を設立可能

  • 環境計量士資格を取得すれば、自身で測定業務を請け負うことが可能
  • 企業から直接案件を受注し、測定証明を発行できる

2. 環境コンサルタントとして活動

  • 法令遵守指導や測定計画立案支援を提供
  • 環境報告書作成代行や、企業向けセミナー講師としても活躍

3. 高収入が期待できるフリーランス活動

  • 案件ごとの報酬が高く、1件あたり数万円〜数十万円の収入が見込める
  • 公共案件や大手企業の測定業務で安定した受注が期待

公共事業・行政でのメリット

1. 官公庁での環境管理業務に従事

  • 地方自治体や国の機関で地域環境測定や排出規制管理業務を担当
  • 公共施設の排水・排ガスモニタリングに関与

2. 環境施策立案への参画

  • 環境基準値の見直しや政策提案に関与可能
  • 地域住民への環境説明会で技術的なアドバイスを提供

資格取得後のキャリアパス

キャリア段階 取得後の役割 実務でできること
取得直後 測定技術者 測定補助、データ収集
経験2〜3年 計量証明責任者 測定計画立案、証明書作成
経験5年以降 環境管理部門リーダー 工場全体の環境管理、内部監査対応
独立後 計量証明事業所代表 測定案件請負、計量証明書の発行
環境コンサルタント 環境アドバイザー 企業の環境改善支援、CSR活動の技術支援

資格取得後の具体的メリット

環境保全に貢献

  • 企業や社会の環境負荷低減に直接関与
  • 環境基準遵守を技術的にサポート

安定した需要と長期的な活躍

  • 環境規制が厳しくなる中、常に高い需要を維持
  • 高齢になっても活躍できる技術系資格

副業や自社設立での収入増加

  • 副業としても1件あたり高単価の案件を獲得可能
  • 自社設立で継続的な測定案件を確保

建築系資格一覧

一級建築士
二級建築士
木造建築士
構造設計一級建築士
設備設計一級建築士
建築施工管理技士
建築図面製作技能士
土木施工管理技士
ビル経営管理士
不動産鑑定士
測量士
宅地建物取引主任者
管理業務主任者
マンション管理士
土地家屋調査士
玉掛技能講習
環境計量士
管工事施工管理技士
建設機械施工技士
建築設備士
建築業経理士
コンクリート技士
CAD実務キャリア認定制度
CADトレース技能審査
建築CAD検定試験
Autodesk認定試験
3次元CAD利用技術者試験
マンションリフォームマネージャー
ダッソー・システムズ CATIA 認定資格
マンション維持修繕技術者
REセールスパーソンライセンス

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