労働・社会保険に関する手続きや労務管理、労働トラブルの解決支援を専門とする国家資格者です。企業の人事・労務部門や社会保険の専門家として、企業経営をサポートする重要な役割を担います。
社会保険労務士の主な業務内容
労働・社会保険に関する手続き代行
企業の労働・社会保険関係の書類作成と提出を代理します。
- 健康保険・厚生年金保険の資格取得・喪失手続き
- 労災保険・雇用保険の申請手続き
- 年金給付申請のサポート
労務管理・就業規則作成
- 労働時間・休暇制度の整備
- 就業規則や賃金規定の作成・改定
- 勤怠管理や労働契約書作成の支援
労働紛争解決の支援
- 個別労働関係紛争の解決支援
- 労働基準監督署や労働局との対応支援
- 労使トラブル防止のためのアドバイス
年金相談・申請代理
- 老齢年金、障害年金、遺族年金の相談対応
- 年金受給手続きの代理
企業の人事労務コンサルティング
- 働き方改革の推進支援
- 労務監査の実施と是正勧告への対応
- 人事制度の設計や評価制度の構築
受験資格と難易度
1. 受験資格
社会保険労務士試験を受験するには、一定の受験資格が必要です。資格取得には学歴・実務経験・指定試験合格のいずれかの条件を満たす必要があります。
1.1. 学歴による受験資格
以下のいずれかに該当すれば、学歴要件を満たします。
- 大学卒業者(学士の学位取得者)
- 短期大学卒業者で、通算3年以上の実務経験がある者
- 高等専門学校(5年制)卒業者
- 専門職大学・専門職短期大学卒業者
1.2. 実務経験による受験資格
以下の実務経験が3年以上ある場合も受験可能です。
- 労働社会保険諸法令に関する事務経験
- 労務管理・社会保険事務を担当した経験
1.3. 国家資格取得による受験資格
以下のいずれかの国家資格を有する場合も受験可能です。
- 行政書士資格
- 弁護士、公認会計士、税理士などの法律・会計系資格
1.4. 事務指定講習修了による受験資格
学歴や実務経験がない場合でも、厚生労働大臣指定の事務指定講習を修了すれば受験資格を得られます。
2. 試験の難易度
社会保険労務士試験は、合格率約6〜8% の難関試験に分類されます。
試験範囲が広く、各科目で60%以上の得点が必要であるため、バランスよく学習することが重要です。
2.1. 合格率の推移(過去5年間)
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2020年 | 約40,000人 | 約2,500人 | 6.2% |
2021年 | 約39,000人 | 約2,400人 | 6.1% |
2022年 | 約38,000人 | 約2,700人 | 7.1% |
2023年 | 約37,000人 | 約2,600人 | 7.0% |
2024年 | 約36,000人 | 約2,400人 | 6.7% |
ポイント
- 毎年安定して6〜8%の合格率で推移。
- 合格基準は総合得点と各科目での足切り(60%未満は不合格)があるため、特定科目だけの得点では合格できません。
試験内容
選択式試験と択一式試験の2部構成で実施されます。労働・社会保険諸法令を中心に、幅広い法知識と実務的な理解が問われます。各科目に足切り基準(60%以上の得点)があり、総合得点でも60%以上の得点が合格条件です。
1. 試験概要
項目 | 内容 |
---|---|
試験日 | 年1回(8月下旬) |
試験形式 | 選択式(午前)+ 択一式(午後) |
合格基準 | 各科目60%以上かつ総合得点60%以上 |
試験時間 | 選択式:1時間20分 / 択一式:3時間30分 |
試験会場 | 全国主要都市 |
2. 試験形式の詳細
2.1. 選択式試験(午前)
項目 | 内容 |
---|---|
試験時間 | 1時間20分 |
問題形式 | 穴埋め式問題(各科目5問、1問あたり4箇所の空欄) |
問題数 | 合計40問(10科目×4問) |
配点 | 1問5点、合計50点満点 |
合格基準 | 各科目3点以上かつ総合得点30点以上 |
2.2. 択一式試験(午後)
項目 | 内容 |
---|---|
試験時間 | 3時間30分 |
問題形式 | 5択問題 |
問題数 | 合計70問(10科目×7問) |
配点 | 1問1点、合計70点満点 |
合格基準 | 各科目4点以上かつ総合得点42点以上 |
3. 出題科目と内容詳細
3.1. 労働関係科目
(1) 労働基準法および労働安全衛生法
- 労働条件の最低基準(労働時間、休憩、休日、賃金)
- 解雇・休職規定の適正化
- 職場の安全衛生基準
(2) 労働者災害補償保険法(労災保険法)
- 労災認定基準
- 休業補償・障害補償・遺族補償
- 通勤災害と業務災害の区別
(3) 雇用保険法
- 失業給付の支給要件と給付日数
- 育児休業給付・介護休業給付
- 高年齢雇用継続給付制度
(4) 労働保険徴収法
- 労働保険料の申告・納付方法
- 保険料の計算方法と適用事業所の範囲
3.2. 社会保険関係科目
(5) 健康保険法
- 保険給付の内容(療養、傷病手当金、出産手当金)
- 高額療養費制度と給付制限
(6) 厚生年金保険法
- 老齢年金・障害年金・遺族年金の支給要件
- 保険料の算出方法と納付義務
(7) 国民年金法
- 加入要件と保険料納付制度
- 保険料免除申請・追納制度
(8) 社会保険一般常識
- 社会保障制度全般の基礎知識
- 最近の法改正や統計データ
3.3. 一般常識科目
(9) 労働一般常識
- 労働市場の動向や時事問題
- 働き方改革関連法の理解
(10) 社会保険一般常識
- 社会保険料率変更の理由
- 介護保険制度の運用概要
4. 試験の出題傾向と重要ポイント
出題傾向
- 過去問題の出題率が高い(約60%以上が過去問類似問題)。
- 法改正問題が毎年5問以上出題。
- 計算問題(特に年金・保険料)は合否を左右。
5. 試験時間・配点まとめ
試験区分 | 試験時間 | 問題数 | 満点 | 合格基準 |
---|---|---|---|---|
選択式 | 1時間20分 | 40問 | 50点 | 各科目3点以上・総合30点以上 |
択一式 | 3時間30分 | 70問 | 70点 | 各科目4点以上・総合42点以上 |
試験対策
1. 科目別試験対策
労働基準法・労働安全衛生法対策
出題傾向と特徴
- 労働条件や解雇規制が頻出。
- 36協定、解雇手続き、休暇付与日数は確実に押さえる。
学習法とポイント
- 条文暗記カードを作成し、日々確認。
- 判例問題集を併用して、適用場面の理解を深める。
- 過去問演習で出題パターンを把握し、誤答の原因を分析。
労災保険法・雇用保険法対策
出題傾向と特徴
- 給付日数や支給要件を問う問題が中心。
- 計算問題が多く、正確さとスピードが求められる。
学習法とポイント
- 計算問題を毎日1問解く。
- 給付金支給要件・日数を表で整理し、比較しながら暗記。
- 過去問演習後は、問題文の根拠条文を必ず確認。
健康保険法・厚生年金保険法対策
出題傾向と特徴
- 試験の合否を左右する重要科目。
- 標準報酬月額・年金支給要件に関する問題が頻出。
学習法とポイント
- 標準報酬の計算練習を繰り返す。
- 老齢・障害・遺族年金の支給要件を一覧表にまとめる。
- 過去問10年分の演習で出題傾向をつかむ。
一般常識対策
出題傾向と特徴
- 法改正問題や統計データ問題が出題。
- 白書からの問題も頻出。
学習法とポイント
- 労働経済白書・厚生労働白書の要点を読む。
- 法改正情報は試験直前まで最新情報を確認。
- 過去問に出た統計問題は、数字を覚えるより傾向をつかむことを意識。
2. 選択式試験の対策法
特徴と難易度
- 穴埋め問題形式で、条文や通達の一部が問われる。
- 1問の取りこぼしが致命的なため、科目ごとの対策が重要。
効果的な対策方法
- 重要条文の書き写し学習で記憶を定着。
- 過去問演習は最低5回繰り返す。
- 最新の法改正部分を中心に復習。
3. 択一式試験の対策法
特徴と難易度
- 70問の5択問題で、問題量が多く集中力が必要。
- 計算問題・事例問題が多く、スピードと正確さが求められる。
効果的な対策方法
- 過去10年分の問題を徹底演習。
- 計算問題を習慣化し、解答スピードを強化。
- 問題文の読み間違いを防ぐため、音読学習も効果的。
4. 模試と実戦練習の活用法
模試受験のポイント
時期 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
試験3か月前 | 模試1回目 | 弱点発見と学習計画の見直し |
試験2か月前 | 模試2回目 | 時間配分と実戦力確認 |
試験1か月前 | 模試3回目 | 合格ライン超えの確認と総仕上げ |
- 模試後の復習が重要。間違えた問題は翌日に再挑戦。
- 時間配分練習を重ね、選択式・択一式でのペース感覚を養う。
5. 勉強方法の選択肢
独学の場合
- 市販のテキストと過去問を活用。
- 独学のメリット: 費用が安い。
- デメリット: モチベーション維持が難しい。
おすすめ教材
- 『うかる! 社労士シリーズ』
- 『社労士V問題集』
- 『過去問題集(10年分)』
通信講座・予備校活用の場合
- 効率的なカリキュラムと最新情報を提供。
- 模試・質問対応があるため、時間が限られている方におすすめ。
おすすめ講座
- LEC東京リーガルマインド
- TAC社労士講座
- クレアール通信講座
取得後に出来ること
取得すると、企業の人事・労務管理、社会保険手続き、労働法関連業務の専門家として活躍できます。独立開業も可能で、企業顧問やコンサルタントとして幅広い業務に携わることができます。
1. 社会保険労務士の主な業務内容
1.1. 労働・社会保険に関する手続き代行
企業に代わって、労働保険や社会保険に関する申請・届出業務を行います。
- 健康保険、厚生年金保険の資格取得・喪失手続き
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の申請
- 年金給付や育児休業給付の申請
1.2. 労務管理・労働法務のアドバイス
企業が適切な労務管理を行うためのサポートをします。
- 労働時間管理、賃金制度の整備
- 就業規則の作成・改定
- 解雇、休職、休暇制度に関する法的助言
1.3. 労働紛争解決支援
一定の条件を満たせば、個別労働関係紛争のあっせん代理も行えます。
- 労働基準監督署への是正対応支援
- 従業員との労務トラブル解決の相談・代理
1.4. 年金相談・手続き代理
個人からの年金相談に対応し、各種申請をサポートします。
- 老齢年金、障害年金、遺族年金の受給手続き
- 年金額試算や受給資格確認
1.5. 助成金・補助金申請サポート
企業が活用できる助成金の申請支援を行います。
- 雇用調整助成金の申請
- キャリアアップ助成金の支援
2. 資格取得後のキャリアパス
2.1. 独立開業
資格取得後に社労士事務所を開設し、顧問契約を結んで企業サポートを行います。
- 中小企業を中心に、顧問料を収入源として安定した収益を確保
- 業務範囲が広く、月額顧問契約やスポット業務で高収入も可能
2.2. 企業内社労士
企業の人事・総務部門で労務管理の専門家として働きます。
- 労働法遵守や社内規定整備を担当
- 労働基準監督署対応や社内研修の実施
2.3. コンサルタントとしての活躍
人事・労務の専門知識を活かして企業向けコンサルタントとして活躍します。
- 働き方改革や生産性向上の提案
- 人事評価制度や報酬制度の構築支援
2.4. 行政機関や公的機関での勤務
以下のような公的機関での勤務も可能です。
- 労働基準監督署や年金事務所での業務
- ハローワークでの雇用支援業務
3. 社労士資格取得後の年収・収入の目安
勤務形態 | 年収目安 | 備考 |
---|---|---|
社労士事務所勤務 | 350〜600万円 | 経験により昇給あり |
企業内社労士 | 400〜700万円 | 管理職になれば800万円超も可能 |
独立開業 | 500〜1,000万円以上 | 顧問契約数と案件次第で高収入も実現可能 |
コンサルタント | 600〜900万円 | 大企業や医療機関顧問契約で高収入 |
4. 社労士資格取得のメリット
- 独立開業で自由な働き方が可能
- 企業からの需要が高く、安定した収入を得やすい
- 助成金申請サポートで企業経営を強力に支援
- 年金相談や労務トラブル対応を通じて社会貢献できる
- 働き方改革や労務改善で多くの企業に必要とされる存在
5. 今後の需要と将来性
- 働き方改革推進や法改正に伴うニーズ増加
- 高齢化社会で年金相談業務が拡大
- 労務コンプライアンスの強化に伴う専門家需要の高まり
- 助成金制度の活用支援で中小企業からの依頼が増加
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