義肢装具士

義肢(義手・義足)や装具(コルセット・補助器具など)を製作・調整し、患者のリハビリを支援する国家資格です。

リハビリテーション医療の一環として、医師や理学療法士と連携しながら義肢や装具の設計・製作・適合を行います。

義肢装具士の役割

義肢装具士は、主に以下の業務を担当します。

義肢(義手・義足)の製作・調整

  • 事故や病気で手足を失った方のために義肢を製作・調整
  • 使用者の身体やライフスタイルに合わせたカスタマイズ
  • 義肢のフィッティングやメンテナンス

装具(補助器具)の製作・適合

  • 身体機能の低下をサポートする装具(コルセット・サポーターなど)の製作
  • 脳卒中や神経障害による歩行障害の補助装具の提供
  • スポーツ障害や外傷後のリハビリ用装具の開発

患者への指導・アフターケア

  • 義肢や装具の使い方を指導
  • 使用後の不具合を調整
  • リハビリ医療チームと連携し、患者の回復を支援

主催
厚生労働省
日本義肢装具士協会

受験資格と難易度

受験資格

義肢装具士の国家試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

1. 義肢装具士養成課程を修了する(最も一般的)

  • 厚生労働大臣が指定する養成校(大学・専門学校)を卒業
  • 4年間の教育課程を修了し、必要な単位を取得することが必須

義肢装具士の養成校で学ぶ主な内容

  • 医学系:解剖学・生理学・運動学・リハビリテーション学
  • 工学系:材料力学・設計学・機械加工
  • 実技:義肢装具の製作・適合技術

現在、日本では4年制大学または専門学校が主流であり、3年制の短大や専門学校では取得できない

2. 海外の義肢装具士資格を持つ場合

  • 外国の養成機関を卒業し、義肢装具士資格を取得した場合
  • 厚生労働省の審査を経て、日本での国家試験受験資格が認められることがある

難易度

義肢装具士の国家試験は**筆記試験のみ(マークシート方式)**で実施されます。

1. 合格率

  • 例年の合格率は60~80%程度
  • しっかりと勉強すれば合格できるレベル

2. 試験の出題形式

  • 全科目マークシート方式
  • 試験時間は1日(午前・午後)
  • 総得点の60%以上で合格
  • 特定の科目で極端に低い点数を取ると不合格(足切りあり)

3. 難易度の特徴

難易度のポイント 詳細
医学の基礎知識が必要 解剖学・生理学・運動学など、医療系の知識が必須
工学系の知識が求められる 材料力学・設計・製作技術など、機械工学の要素も含まれる
暗記だけでは通用しない 義肢や装具の適用条件や適合技術を理解する必要がある
足切り対策が重要 全体で60%取れても、特定科目で基準を下回ると不合格

試験対策のポイント

  1. 過去問を繰り返し解く

    • 出題傾向を把握し、重点的に対策
    • 過去5~10年分の問題を解くのがおすすめ
  2. 医学の基礎知識をしっかり学ぶ

    • 解剖学・生理学・運動学を優先的に学習
    • 人体の構造・関節の動き・筋肉の役割を理解する
  3. 工学系の理解を深める

    • 義肢や装具の材料特性・設計方法を整理
    • 強度計算や適合の基準を覚える
  4. バランスよく勉強し、足切りを防ぐ

    • どの科目も一定の得点を取ることが重要
    • 苦手科目を作らないようにする

試験内容

1. 試験概要

  • 試験形式:筆記試験(マークシート方式)
  • 試験時間:1日(午前・午後に分かれる)
  • 出題数:およそ120~150問
  • 合格基準
    • 総得点の60%以上
    • 一部の科目で極端に低い点数(足切り)を取ると不合格
  • 実技試験なし(ただし、養成課程では実習が必須)

2. 試験科目と内容

義肢装具士の試験科目は、大きく基礎医学・工学・義肢装具学・関係法規の4つに分かれます。

① 基礎医学分野

科目 内容
解剖学 骨・筋肉・神経・関節の構造と機能
生理学 身体の機能、代謝、神経伝達、循環系
運動学 歩行・関節の動き・筋肉の使い方
リハビリテーション医学 義肢装具の医療的な役割・適応症

② 工学分野

科目 内容
材料力学 義肢装具に使用する材料の強度・耐久性
設計学 義肢や装具の設計方法と適合基準
加工技術 義肢装具の製作技術(成型・組立・修理)
3D技術 近年導入が進む3Dプリンター技術

③ 義肢装具学

科目 内容
義肢学 義手・義足の構造、適応、使用方法
装具学 コルセット・サポーター・歩行補助装具
臨床適合技術 義肢や装具の適合チェック・調整方法

④ 関係法規

科目 内容
義肢装具士法 義肢装具士の職務・資格要件
医療・福祉法規 健康保険制度、障害者福祉制度
労働安全 製作・加工時の安全管理

3. 試験問題の特徴

  • マークシート方式(四択)
  • 計算問題は少なく、知識問題が中心
  • 出題は基礎医学50%、工学・義肢装具学40%、法規10%
  • 足切り基準に注意し、全科目をバランスよく学習することが重要

試験対策

1. 試験対策の基本ポイント

① 過去問を繰り返し解く

  • 過去5~10年分の問題を解き、出題傾向を把握
  • 間違えた問題は解説を確認し、復習ノートを作成
  • 試験の出題形式(マークシート)に慣れる

② 医学系(解剖学・生理学・運動学)の理解を優先

  • 人体の構造(骨・筋肉・神経・血管)を図解で覚える
  • 歩行や関節の動きを動画やモデルで学ぶ
  • 疾患ごとの義肢・装具の適応を整理する

③ 工学系(材料力学・設計)の知識を強化

  • 義肢や装具の材料(カーボン・プラスチック・金属)の特性を理解
  • 設計や加工技術の基本的な仕組みを押さえる
  • 3DプリンターやCAD技術などの最新技術にも注目

④ 義肢装具の適応と臨床技術を学ぶ

  • 各装具の適応疾患(どの患者に使うか)を整理
  • 義肢・装具の適合や調整方法を学ぶ
  • 臨床現場での使用事例を想定し、実践的に考える

⑤ 足切り対策を意識

  • 総得点が60%以上でも、1科目でも極端に低いと不合格(足切りあり)
  • 苦手科目を作らず、全体的にバランスよく学習
  • 法規や公衆衛生も得点源にする

2. 科目別の勉強法

① 基礎医学分野(解剖学・生理学・運動学・リハビリテーション医学)

  • 出題数が多く、最重要科目
  • 骨・筋肉・関節の構造を視覚的に学習(イラスト・アプリ活用)
  • 運動学では「歩行周期」や「関節の可動域」を重点的に覚える
  • リハビリテーション医学では、装具の適応疾患と治療法を整理

② 工学分野(材料力学・設計学・加工技術)

  • 義肢・装具に使われる材料の特性(強度・耐久性・軽量性)を覚える
  • 設計基準(関節角度・負荷分散)を確認
  • 製作工程(型取り・成形・仕上げ)を学ぶ
  • 3D技術やCAD設計などの新しい技術にも注目

③ 義肢装具学(義肢学・装具学・臨床適合技術)

  • 義手・義足の種類(大腿義足・下腿義足など)を整理
  • コルセットやサポーターなどの装具の適応疾患を学ぶ
  • 臨床適合技術(装具のフィッティング方法や調整)を押さえる

④ 関係法規(義肢装具士法・福祉制度・医療保険)

  • 義肢装具士の業務範囲や法的責任を確認
  • 健康保険・介護保険制度の適用範囲を理解
  • 労働安全衛生(製作時の事故防止・感染対策)も学ぶ

取得後に出来ること

1. 義肢装具の製作・適合

義肢装具士の最も重要な仕事は、患者に合わせた義肢や装具を設計・製作し、適切にフィットさせることです。

義肢(義手・義足)の製作・適合

  • 事故や病気で手足を失った人のために、義手・義足を製作
  • 患者の体型・生活スタイル・活動レベルに合わせた調整
  • カーボン・シリコン・プラスチックなどの素材を使い、軽量で動きやすい義肢を設計
  • パラリンピックなどの競技用義足の製作にも関与

装具(補助器具)の製作・適合

  • 歩行を助けるための足装具(短下肢装具・長下肢装具)
  • 脊柱側弯症の矯正用コルセット
  • 手首や指のリハビリ用装具
  • スポーツや外傷後のリハビリ用装具(サポーター・装着型補助器具)
  • 高齢者の転倒防止装具や歩行補助装具

患者のアフターケア

  • 装着後の不具合の調整やメンテナンス
  • 義肢や装具の使い方の指導
  • 使用者が快適に過ごせるようフィッティングを細かく調整

2. 医療機関・リハビリ施設での勤務

病院・リハビリセンター

  • 医師・理学療法士・作業療法士と連携し、患者のリハビリを支援
  • 病院内で義肢や装具を製作・適合調整
  • 手術後やリハビリ中の患者に合わせた装具を提供

義肢装具製作所

  • 病院・介護施設・スポーツ施設からのオーダーメイド製作
  • 義肢・装具の修理やメンテナンス
  • 最新の素材や3Dプリンターを活用した義肢装具の開発

3. スポーツ・アスリート支援

競技用義肢の開発

  • パラリンピック選手向けの高性能義肢を設計・製作
  • スポーツ専用のカーボン義足・義手の研究開発
  • 陸上競技・水泳・サイクリングなど、競技特化型の義肢を提供

スポーツ装具の開発

  • 膝や足首を保護するスポーツ用装具(サポーター・リハビリ補助具)
  • ケガを予防・回復をサポートするための補助器具
  • トレーニング施設やアスリート向けの装具適合

4. 研究・開発分野

大学・研究機関での研究

  • 義肢・装具の新素材や設計技術の開発
  • AIやロボット技術を活用したスマート義肢の研究
  • 義肢の動作解析や人間工学の研究

企業での開発職

  • 医療機器メーカーや義肢装具メーカーでの研究開発
  • 3Dプリンターやセンサー技術を活用した次世代義肢の開発
  • バイオメカニクス(生体力学)を応用した装具の設計

5. 独立開業

義肢装具士の資格を持つと、条件を満たせば開業することも可能です。

独立して義肢装具の製作所を開業

  • 病院やリハビリ施設と提携し、義肢や装具の製作・提供
  • オーダーメイドの義肢・装具を専門にする
  • スポーツ・美容分野にも対応できる高機能装具の開発・販売

在宅訪問サービス

  • 高齢者や障害者向けに、義肢・装具の訪問調整
  • 地域密着型の義肢装具サービスの提供

6. 収入の目安

義肢装具士の年収は、勤務先や経験によって異なります。

働き方 年収の目安
義肢装具製作会社(勤務) 350万~600万円
病院・リハビリ施設(勤務) 400万~700万円
研究職(メーカー) 500万~800万円
独立開業 700万~1000万円以上

7. 義肢装具士の将来性

技術革新と需要の増加

  • 3Dプリンター・AI・ロボット義肢の発展により、新しい分野が広がっている
  • 高齢化社会で、義肢や装具の需要が増加
  • スポーツ・パラリンピック市場の成長

ダブルライセンスでのキャリアアップ

組み合わせる資格 活用方法
理学療法士(PT) リハビリテーションと義肢装具の適合を総合的にサポート
作業療法士(OT) 手の義肢や装具を専門的に扱う
柔道整復師 整骨院での装具提供やリハビリ指導
3Dデザイン・CAD資格 先進的な義肢・装具の開発
スポーツトレーナー アスリート向け義肢・装具の専門家として活躍

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)