自動車の点検・整備・修理を専門的に行うために必要な国家資格です。
この資格を取得することで、エンジンやブレーキ、電装品などの整備を法的に行うことができ、車両の安全性を確保する重要な役割を担います。
資格の種類
日本における自動車整備士資格は、整備内容や車両の種類に応じて以下のように分類されます。
二級自動車整備士
最も一般的な資格で、普通乗用車や小型トラックの整備が可能です。以下の区分があります。
- ガソリン自動車整備士: ガソリンエンジン車の整備が可能
- ジーゼル自動車整備士: ディーゼルエンジン車の整備が可能
- 二輪自動車整備士: オートバイやスクーターの整備が可能
一級自動車整備士
高度な電子制御システムの整備が必要な現代の車両に対応するための資格です。二級よりも上位で、診断や高度整備が行えます。
三級自動車整備士
基本的な整備が対象で、エンジンオイル交換やタイヤ交換などが含まれます。実務経験が浅い人でも比較的取得しやすい資格です。
特殊自動車整備士
大型特殊車両(クレーン車、フォークリフトなど)の整備を行うための資格です。
目次
受験資格と難易度
受験資格
自動車整備士資格は、資格の種類(三級・二級・一級)によって受験資格が異なります。
三級自動車整備士
- 受験資格: 特になし
- 実務経験: 不要
- 対象者: 初心者や整備未経験者でも受験可能
ポイント
三級は、初歩的な整備作業が中心のため、未経験でも挑戦しやすい資格です。
二級自動車整備士
二級資格は、三級よりも高度な整備知識と技術が必要です。
受験資格の主なルート
- 認定自動車整備専門学校を卒業
- 専門課程(通常2年間)修了者は実技試験が免除
- 実務経験者
- 整備業務で2年以上の実務経験が必要
- 三級整備士資格保有者
- 三級資格を持ち、1年以上の実務経験があれば受験可能
一級自動車整備士
一級資格は、最も高度な整備技術や電子制御システムの知識が問われます。
受験資格
- 認定自動車整備専門学校(4年制)卒業者
- 実技試験免除の場合もあり
- 二級整備士取得後、実務経験3年以上
難易度
自動車整備士試験の難易度は資格のレベルによって大きく異なります。
三級自動車整備士
- 合格率: 約70~80%
- 難易度: 初心者向けで比較的容易
- ポイント: 基本的な車両構造や簡単な整備内容が中心
二級自動車整備士
- 合格率: 約50~60%
- 難易度: 中程度
- 試験内容: 電子制御システムや車両の構造について広範囲の知識が求められる
- 対策: 実務経験や専門学校での学習が大きな助けになる
一級自動車整備士
- 合格率: 約30~40%
- 難易度: 高度
- 試験内容: 複雑な電子制御、環境規制、先進運転支援システム(ADAS)に関する知識が必要
- 対策: 継続的な学習と実務経験が不可欠
試験内容
各級(三級・二級・一級)ごとに試験内容が異なります。試験は主に 学科試験 と 実技試験 の2つで構成されており、知識と実践力の両方が問われます。
学科試験
学科試験では、自動車整備に関する理論的な知識が問われます。試験問題は選択式が中心で、各級で求められる知識レベルが異なります。
三級自動車整備士の学科試験内容
- 自動車の基本構造
- エンジンの基礎知識
- シャシ(車体)の構造
- 基礎的な整備作業手順
- エンジンオイル交換
- タイヤ交換の基礎知識
- 車両安全基準と法規
- 道路運送車両法に基づく整備基準
- 安全作業の基本
- 作業中の安全対策
二級自動車整備士の学科試験内容
二級では、三級よりも高度な知識が必要になります。
- 自動車の構造と機能
- 内燃機関の詳細構造
- 駆動系・制動系・操縦系の構造と作動原理
- 電子制御システムの基礎知識
- 燃料噴射システム(EFI)
- ABSやエアバッグシステム
- 車両法規と環境問題
- 車検制度
- 排ガス規制の基準
- 故障診断とトラブルシューティング
- 故障コードの読み取り
- 電装品の基本診断方法
一級自動車整備士の学科試験内容
一級では、電子制御や高度な整備技術に関する問題が中心です。
- 高度な電子制御システム
- エンジン制御、トランスミッション制御
- ハイブリッド車・電気自動車の制御技術
- 先進運転支援システム(ADAS)
- 自動ブレーキシステム
- レーンキーピングや自動駐車支援システム
- 最新の自動車技術
- 燃料電池車や次世代エネルギー車両の整備知識
- 環境問題と法規
- CO₂排出基準
- 新たな環境規制への対応策
実技試験
実技試験では、実際の整備作業やトラブル診断のスキルが評価されます。資格のレベルが上がるにつれて、要求される技術も高度になります。
三級自動車整備士の実技試験内容
- 基本的な整備作業
- エンジンオイル交換
- バッテリーの点検・交換
- タイヤ・ブレーキの点検
- タイヤ空気圧の調整
- ブレーキパッドの摩耗確認
- 基本的な工具の使用方法
- トルクレンチやドライバーの正しい使用方法
二級自動車整備士の実技試験内容
- トラブルシューティング
- 故障箇所の特定
- 診断機器を用いた電子制御システムの診断
- 実車での整備作業
- エンジンの分解・点検
- ブレーキやステアリング装置の整備
- 安全確認と作業手順
- 整備後の機能確認
一級自動車整備士の実技試験内容
- 高度な診断作業
- 高度診断機を用いた電子制御のトラブルシューティング
- 複雑な電子回路の解析
- 最新技術対応の整備作業
- ハイブリッド車・電気自動車の整備
- 先進運転支援システムの調整・修理
- 総合的なトラブル対応
- エンジン、シャシ、電子制御の複合トラブルの原因究明
実技試験の免除条件
- 認定専門学校卒業者: 二級・一級では、所定の課程を修了すると実技試験が免除される場合があります。
- 既存資格保有者: 下位資格取得後、一定の実務経験を積むことで実技免除が適用される場合があります。
試験対策
学科試験対策
1. 教材の選定と学習計画の作成
- 公式テキストの活用
- 国土交通省認定のテキストや、整備振興会が推奨する参考書を利用することが重要です。
- 学習スケジュールの作成
- 毎日少しずつ学習することを心がけ、試験日の2~3か月前から準備を開始すると効果的です。
2. 過去問題の反復練習
- 過去5年分の問題を解く
- 試験の出題傾向を把握できます。
- 間違えた問題の徹底復習
- 解説をよく読み、なぜ間違えたのかを分析しましょう。
3. 模擬試験の活用
- 模試で実力確認
- 本番に近い環境で模試を受け、時間配分を意識して練習します。
- 弱点克服
- 模試後は必ず復習を行い、苦手分野の強化に努めましょう。
実技試験対策
1. 実際の整備作業で経験を積む
- 現場経験の重要性
- 日常業務で基本作業を繰り返し行うことで、手順を自然に覚えられます。
- 専門学校の実習参加
- 実技試験免除がない場合、実際の作業に慣れることが非常に重要です。
2. 作業手順の確認
- 整備マニュアルを熟読
- 各作業の正しい手順を把握し、間違った方法で作業しないようにします。
- 工具の使い方をマスター
- 試験では正しい工具の選択と使用方法が評価されます。
3. 安全作業の徹底
- 安全確認の声掛け
- 作業前後の安全確認ができていないと減点対象になるため、声に出して確認する癖をつけましょう。
- 保護具の着用
- ヘルメットや手袋の着用を忘れず、安全第一を心がけます。
効果的な勉強方法のポイント
1. グループ学習の活用
- 疑問点の共有
- 仲間と問題を出し合うことで、理解度が深まります。
- 実技練習の相互確認
- 作業手順の間違いをお互いに指摘し合うと効果的です。
2. 視覚教材の活用
- 動画や図解を利用
- 複雑な構造や作動原理は動画で視覚的に学ぶと理解しやすくなります。
3. 反復学習で知識を定着
- 短期間に繰り返し学習
- 知識の定着には、定期的な復習が欠かせません。
- 毎日の短時間学習
- 1日15分の積み重ねが大きな成果につながります。
取得後に出来ること
取得すると、車両の整備・点検に関する法的な業務が可能になり、キャリアの幅が大きく広がります。資格の等級(三級・二級・一級)によって、できる業務範囲や就職先、キャリアパスに違いがあります。
資格取得後にできる主な業務
1. 車両の法定点検・整備
- 定期点検整備
- 車検整備や12か月点検など、法で義務付けられた点検作業ができるようになります。
- 整備記録簿の記入と証明
- 整備士資格があれば、整備記録簿に点検結果を記入し、その作業を正式に証明することが可能です。
2. 故障診断と修理作業
- エンジン、ブレーキ、足回りの修理
- 車の不具合を診断し、部品交換や修理作業を実施できます。
- 電子制御装置の診断と修理
- 現代の車両に必須の電子制御システムに対応した整備が可能です(特に二級以上)。
3. 専門的な整備作業(資格等級別)
- 三級
- 簡単な整備や日常点検作業
- オイル交換、タイヤ交換、簡単な部品交換
- 二級
- 幅広い整備業務に従事可能
- 車検整備や複雑な修理作業
- 一級
- 高度な診断作業や最新技術を要する整備
- ハイブリッド車・電気自動車(EV)の整備
資格取得後の就職・キャリアパス
1. 就職・転職に有利
- 自動車ディーラー
- メーカー直営ディーラーで新車・中古車の整備業務に従事。
- 自動車整備工場
- 車検整備や修理を担当。経験を積むことで管理職への昇進も可能。
- カー用品店やガソリンスタンド
- オイル交換やタイヤ交換、簡単な整備サービスを提供。
2. 独立・開業が可能
- 整備工場の開業
- 一定の経験と資格を持つことで、整備工場を開業できます。
- モバイル整備サービス
- 出張整備サービスを提供する事業を立ち上げることも可能。
3. キャリアアップの道
- 検査員資格の取得
- 二級以上の資格と実務経験を積むことで、 自動車検査員 資格が取得可能。車検の最終検査や合否判断が行えます。
- 整備主任者への昇格
- 整備工場での管理職として、整備品質の監督やスタッフ教育を担当。
- メーカー系技術職へ転職
- 自動車メーカーの技術開発部門に転職するケースもあります(特に一級取得者)。
特殊車両・特定業務への対応
- 大型車両の整備
- 大型車両やバス、トラックの整備に対応できるようになります(特定資格取得後)。
- 建設機械・農業機械の整備
- 特殊自動車整備士資格を取得すれば、フォークリフトやクレーン車の整備も可能。
- ハイブリッド車・電気自動車の整備
- 一級整備士資格を持つことで、次世代車両の整備に対応できる技術者として重宝されます。
資格取得後のメリット
1. 高収入が期待できる
- 資格を持つことで給与が上がるケースが多く、特に二級・一級は手当が付くこともあります。
2. 安定した職に就ける
- 車社会の中で自動車整備の需要は常に高く、景気に左右されにくい安定した職種です。
3. スキルの継続的向上
- 実務経験を積むことでさらに高度な資格取得にチャレンジでき、継続的なスキルアップが可能です。
自動車系資格一覧
自動車運転
大型自動車免許
事業用操縦士
クレーン・デリック・移動式クレーン運転士
フォークリフト運転技能講習
車両系建設機械運転技能講習
高所作業車運転技能講習
運行管理者
玉掛け技能講習
自動車整備士
中古自動車査定士