薬剤師

医薬品の調剤、販売、管理などを行うために必要な国家資格です。取得するには、指定された薬学の教育課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。

医師が記載した処方箋に基づいて正確に薬を調剤する専門職です。医療機関はもちろんドラックストア、製薬会社、研究所から食品関係、化粧品関係まで幅広く活躍が期待できる。

主催
厚生労働省
(社)日本薬剤師会

受験資格と難易度

1. 受験資格

薬剤師国家試験を受験するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

① 日本の薬学部6年制課程を修了する(最も一般的)

  • 2006年度以降、薬剤師資格を取得するためには6年制の薬学部を卒業する必要があります。
  • 4年制の薬学部では、薬剤師国家試験の受験資格は得られません(主に研究職向け)。

② 旧制度の薬学課程を修了し、経過措置対象であること

  • 2006年以前に4年制薬学部を卒業し、特定の条件(実務経験など)を満たせば、受験資格が認められる場合があります。

③ 海外の薬学課程を修了し、厚生労働省の認定を受ける

  • 海外の薬学部を卒業した場合、厚生労働省の審査を経て受験資格が認められることがあります

2. 薬剤師国家試験の難易度

薬剤師国家試験の難易度は「やや難しい」レベルとされています。
ただし、薬学部でしっかり勉強すれば合格の可能性は十分にある試験です。

合格率の推移(過去5年)

年度 受験者数 合格者数 合格率
2023年 約14,000人 約9,500人 約68.0%
2022年 約14,200人 約9,700人 約68.5%
2021年 約14,500人 約9,600人 約66.7%
2020年 約14,800人 約9,900人 約67.0%
2019年 約15,000人 約10,000人 約66.5%
  • 合格率は毎年約65〜70%前後
  • 6年制の薬学部を卒業した新卒者の合格率は70〜85%と高め。
  • 既卒者(浪人生)の合格率は30〜50%と低め。
  1.  

難易度のポイント

  • 基礎知識だけでなく、臨床的な応用力も必要
  • 科目が多いため、広範囲の勉強が必要
  • 大学の授業や実習をしっかり理解していれば合格しやすい
  • 独学よりも予備校や対策講座を利用する人が多い(特に浪人生)。

試験内容

1. 試験概要

  • 試験日程:毎年3月(2日間実施)
  • 試験形式:マークシート式(五肢択一、組み合わせ問題 など)
  • 試験時間:1日目・2日目ともに午前・午後の4部構成
  • 合格基準:総得点の65%以上+必須問題の正答率70%以上

2. 出題科目と試験範囲

薬剤師国家試験は、以下の3つの領域に分かれています。

① 基礎薬学(物理・化学・生物)

薬の化学的・生物学的な性質を理解するための基礎分野。

科目 主な内容
物理 薬剤の物理化学、熱力学、分子間相互作用
化学 有機化学、無機化学、生化学、構造決定
生物 細胞生物学、遺伝学、微生物学、生体分子

② 衛生・薬理・薬剤・病態・法規(応用薬学)

薬がどのように作用し、人体や社会に影響を与えるかを学ぶ応用分野。

科目 主な内容
衛生 公衆衛生、環境衛生、食品衛生、毒性学
薬理 作用機序、副作用、薬物動態
薬剤 製剤設計、バイオアベイラビリティ、製造・品質管理
病態・薬物治療 疾患の病態、治療薬、薬物療法
法規・制度 医薬品医療機器等法(旧薬事法)、医療倫理、薬剤師法

③ 実務(臨床・薬学総合)

患者対応や医療現場での薬剤師の役割に関する実務的な知識を問う。

科目 主な内容
実務 調剤、服薬指導、薬歴管理、医療安全、在宅医療

3. 問題の構成

必須問題(約90問)

  • 基礎・応用・実務の全領域から出題
  • 正答率70%以上が必要(基準点以下だと不合格)
  • 基礎知識や計算問題、重要な医薬品の適応・禁忌など

一般問題(約200問)

  • 基礎薬学・応用薬学・実務の各領域の応用問題
  • 計算問題、組み合わせ問題、症例問題が含まれる

長文問題(総合問題)(約50問)

  • 臨床現場を想定した症例問題
  • 複数の薬剤や疾患に関する総合的な判断力を問う

試験対策

1. 試験対策の基本方針

  • 早めの対策が重要(少なくとも1年前から準備開始)
  • 過去問を活用し、出題傾向を把握する
  • 苦手分野を徹底的に克服する
  • 模試を受けて本番と同じ環境で対策する
  • 記憶の定着には繰り返し学習が必要

2. 効果的な勉強スケジュール

試験1年前(4〜6年生の場合:4年次後半〜5年次)

  • 教科書の復習(基礎薬学・応用薬学の総復習)
  • 過去問を解き始める(10年分)
  • 苦手分野をリストアップし、重点的に学習

試験6ヶ月前(6年生の秋頃)

  • 応用問題や臨床問題に取り組む
  • 模試を受け、本番の試験時間配分を確認
  • 暗記系(法規・制度、衛生)を詰め込み

試験3ヶ月前

  • 本番を想定した総仕上げ
  • 過去問を繰り返し解く
  • 直前対策講座や模試で仕上げる

試験1ヶ月前

  • 新しい問題に手を出さず、総復習に集中
  • 直前ノートを作成し、苦手分野を最終チェック
  • 体調管理を徹底する

3. 科目別の対策方法

① 基礎薬学(物理・化学・生物)

  • 有機化学や物理化学の計算問題を重点的に演習
  • 構造決定問題(NMR、IR、MS)をマスターする
  • 細胞生物学・遺伝学・微生物学の基礎を固める

② 応用薬学(衛生・薬理・薬剤・病態・法規)

  • 薬理は「作用機序+副作用+適応」をセットで覚える
  • 病態・薬物治療は、疾患ごとの治療薬と投与量を整理
  • 法規・制度は条文を暗記するのではなく、具体例と関連付ける

③ 実務(調剤・服薬指導・在宅医療)

  • 調剤過誤や医療安全に関する問題に慣れる
  • 処方解析の実践練習を行う
  • 薬歴管理の重要性を理解し、症例問題を解く

4. 具体的な勉強法

過去問を徹底活用(10年分以上)

  • 5周以上解く(1回目は解説を読みながら、2回目以降は時間を計る)
  • 間違えた問題はノートにまとめ、復習する
  • 出題頻度が高いテーマを優先的に学習する

予備校やオンライン講座を活用

  • 薬ゼミ、メディセレ、ファーマプロダクトなどの対策講座を利用する
  • 独学が難しい部分(臨床問題、薬物動態など)を補強
  • 直前対策模試を受けて、本番の雰囲気に慣れる

暗記は「視覚・聴覚・書く」を組み合わせる

  • 図やフローチャートを活用し、視覚的に理解する
  • 音読や録音して聴きながら覚える
  • 手を動かしてノートにまとめることで記憶を定着させる

模試を受験して本番シミュレーション

  • 試験時間に合わせた解答練習をする
  • 結果を分析し、苦手分野を再確認
  • 試験当日のメンタル・体調管理を意識する

取得後に出来ること

1. 医療機関での業務

① 病院・診療所の薬剤師

役割:

  • 医師の処方に基づいて調剤を行う
  • 患者に服薬指導をし、副作用や飲み合わせを説明
  • 病棟薬剤師として入院患者の薬物療法をサポート

ポイント:

  • チーム医療の一員として医師・看護師と連携
  • **専門資格(感染制御、がん専門薬剤師など)**を取得すれば、より高度な医療に関われる

2. 調剤薬局・ドラッグストアでの業務

② 調剤薬局の薬剤師

役割:

  • 処方箋に基づく調剤・監査を行う
  • 患者に適切な服薬指導を実施
  • ジェネリック医薬品の説明や薬歴管理

ポイント:

  • 地域医療に貢献できる
  • 在宅医療の広がりにより、訪問薬剤師としての役割も増加

③ ドラッグストアの薬剤師(OTC販売)

役割:

  • 一般用医薬品(OTC)の販売・相談対応
  • 健康食品・サプリメントのアドバイス
  • セルフメディケーション推進(市販薬を適切に活用するための指導)

ポイント:

  • 給与が比較的高め
  • 管理薬剤師や店舗運営のキャリアパスがある

3. 製薬企業・研究職での業務

④ 製薬会社(医薬品開発・品質管理・営業)

役割:

  • 研究開発職:新薬の開発・臨床試験(治験)
  • 品質管理職:医薬品の安全性・有効性を検査
  • 薬事職:厚生労働省への承認申請・法規対応
  • MR(医薬情報担当者):医師・薬剤師へ情報提供

ポイント:

  • 研究・開発職は博士号があると有利
  • MRはコミュニケーション力が重要

4. 行政・公務員としての業務

⑤ 厚生労働省・PMDA(医薬品医療機器総合機構)

役割:

  • 医薬品の審査・安全管理(PMDA)
  • 医療政策の立案(厚生労働省)
  • 薬局・病院の監査・指導(地方自治体の薬務課)

ポイント:

  • 公務員試験に合格する必要がある
  • 医薬品の規制や行政に関わる仕事ができる

5. 教育・学術分野での業務

⑥ 大学・研究機関の薬剤師(教育・研究)

役割:

  • 大学教授・講師として薬学生を指導
  • 医薬品や新薬の研究を行う

ポイント:

  • 博士号(Ph.D.)の取得が望ましい
  • 薬学教育・臨床研究に携わることができる

6. その他の活躍分野

⑦ 在宅医療・介護施設の薬剤師

役割:

  • 訪問薬剤師として在宅患者の薬の管理
  • 介護施設での服薬指導・健康相談

ポイント:

  • 高齢化社会で需要が増加
  • 医師・看護師・ケアマネージャーと連携し、患者の生活を支える

⑧ 海外での薬剤師業務

役割:

  • 海外の薬剤師免許を取得し、現地で働く
  • 国際機関(WHOなど)で医薬品政策に関わる

ポイント:

  • 英語力が必要(TOEFLやIELTSのスコアが求められる)
  • 国によっては追加の資格試験が必要(アメリカのNAPLEXなど)

7. 薬剤師資格が必要な専門職・キャリアアップ

① 認定薬剤師・専門薬剤師の取得

  • 認定薬剤師(日本薬剤師研修センター認定) → 一般的なスキルアップ
  • 専門薬剤師(がん、感染症、精神科など) → 専門的な医療分野での活躍

② 独立・開業(薬局経営)

  • 調剤薬局を開業し、自分で経営することも可能(要:薬局開設許可)
  • 薬剤師の資格を活かした健康食品・サプリメント事業などもあり

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