行政書士

官公署(役所)に提出する書類の作成・提出手続きの代理や、法律に関する相談業務を行う国家資格で特に、許認可申請や契約書作成など、個人や企業の法的手続きを支援する役割を担います。

主催
(財)行政書士試験研究センター

受験資格と難易度

1. 受験資格

行政書士試験には、受験資格の制限がなく、以下の条件を満たしていれば誰でも受験可能です。

  • 年齢・学歴・国籍・実務経験などの要件はなし
  • 法律の専門知識がなくても受験できる
  • 独学でも合格可能だが、試験範囲が広く難易度は高め

そのため、社会人・学生・主婦・定年退職後の方など、さまざまな人が受験しています。

2. 試験の難易度

合格率

行政書士試験の合格率は10%〜15%程度と低く、難関試験の一つとされています。

年度 合格率 受験者数 合格者数
2023年 11.6% 約40,000人 約4,600人
2022年 13.1% 約47,000人 約6,100人
2021年 11.2% 約46,000人 約5,200人

難易度のポイント

  1. 法律の専門知識が必要(特に行政法・民法・憲法)
  2. 出題範囲が広く、単純な暗記では対応できない
  3. 記述式問題があり、論理的な文章力が求められる
  4. 足切り(基準点未満で不合格)制度がある

試験内容

1. 試験概要

  • 試験日:毎年11月の第2日曜日
  • 試験時間:3時間(午後1時~午後4時)
  • 出題形式:マークシート式+記述式
  • 試験会場:全国の指定試験会場

2. 出題形式と配点

出題形式 問題数 配点
五肢択一式(マークシート) 40問 160点
多肢選択式(マークシート) 3問 24点
記述式(文章記述) 3問 60点
一般知識(択一式) 14問 56点
合計 60問 300点

3. 試験科目と詳細内容

法令科目(244点)

法令科目は、試験全体の約8割を占める最重要分野です。

憲法(5問)

憲法は、統治機構や基本的人権に関する問題が中心です。

  • 基本的人権の保障(平等権、自由権、社会権)
  • 統治機構(国会、内閣、裁判所)
  • 地方自治の仕組み
  • 憲法改正の手続き

例題(択一式)
「憲法において、次のうち基本的人権の保障に関する記述として適切なものはどれか。」

民法(9問+記述式1問)

民法は、個人間の法律関係を規定する重要科目です。

  • 契約(売買契約、賃貸借契約、消費貸借など)
  • 物権(所有権、抵当権、地上権など)
  • 債権(債務不履行、不法行為、連帯保証など)
  • 相続(遺言、遺産分割、遺留分)

例題(択一式)
「AがBに対して貸した100万円を返済する期限が到来したが、Bが支払わなかった。この場合におけるAの対応として正しいものはどれか。」

記述式問題(40字~60字程度)
「債務不履行による損害賠償請求について、法律上の要件を説明せよ。」

行政法(19問+記述式1問)

行政法は、行政機関のルールを定めた法律で、試験全体の約50%を占める最重要科目です。

  • 行政手続法(行政処分、申請手続き、聴聞・弁明の機会)
  • 行政不服審査法(不服申し立ての流れ、審査請求の方法)
  • 行政事件訴訟法(取消訴訟、義務付け訴訟)
  • 国家賠償法・地方自治法

例題(択一式)
「行政手続法に基づく処分の事前手続きに関する記述のうち、正しいものはどれか。」

記述式問題(40字~60字程度)
「行政行為の取消訴訟の要件について説明せよ。」

商法・会社法(5問)

商法・会社法は、企業の設立や取引に関するルールを問う科目です。

  • 会社の設立(定款、登記手続き)
  • 取締役の責任(利益相反取引、忠実義務)
  • 株主総会・取締役会の権限

例題(択一式)
「会社法において、株式会社の取締役の義務に関する正しい記述はどれか。」

基礎法学(2問)

基礎法学は、法律の基本概念に関する問題が出題されます。

  • 法の適用(法律の効力、解釈の方法)
  • 法律用語の意味(時効、無効と取消しの違い)

例題(択一式)
「法令の無効と取消しの違いについて適切な説明はどれか。」

一般知識(56点)

一般知識は、試験全体の約2割を占め、足切り基準(14点未満で不合格)があるため対策が必要です。

政治・経済・社会(6問)

  • 日本の政治制度(内閣・国会・選挙制度)
  • 経済用語(GDP、インフレ、デフレ)
  • 国際情勢(貿易協定、国際機関)

例題(択一式)
「日本国憲法における内閣の権限について、正しいものはどれか。」

情報通信・個人情報保護(4問)

  • IT関連知識(インターネット、クラウドコンピューティング)
  • 個人情報保護法(プライバシー権、データ管理)

例題(択一式)
「個人情報保護法に基づく事業者の義務について、正しいものはどれか。」

文章理解(4問)

  • 文章の論理構造を読み取る問題
  • 接続詞・文脈の適切な選択

例題(択一式)
「次の文章の意味として最も適切なものを選べ。」

試験対策

1. 効果的な勉強法(学習の進め方)

試験範囲を把握する

試験は以下の2分野から出題されます。

分野 配点 重要度
法令科目(憲法・民法・行政法・商法・基礎法学) 244点 ★★★★★(最重要)
一般知識(政治・経済・社会・情報通信・文章理解) 56点 ★★★☆☆(足切り注意)

学習スケジュール(6ヶ月プラン)

期間 学習内容
1~2ヶ月目 憲法・民法を重点的に学習(基礎固め)
3~4ヶ月目 行政法・商法を学習、過去問演習開始
5ヶ月目 記述式対策、一般知識対策を強化
6ヶ月目 予想問題・模試を解き、総仕上げ

2. 科目別の試験対策

法令科目(244点)

憲法(5問)

  • 基本的人権と統治機構を重点的に学習
  • 判例の要点を理解する(特に表現の自由・財産権・地方自治)
  • 条文を読むだけでなく、問題を解いて理解を深める

対策

  • 判例集を活用し、重要判例を整理する
  • 過去問を3年分解く

民法(9問+記述式1問)

  • 契約・債権・相続が頻出
  • 事例問題が多いため、条文だけでなく判例を理解する
  • 記述式対策として、簡潔に説明する練習が必要

対策

  • 条文+判例をセットで学習する
  • 記述式問題の添削を活用する(予備校・通信講座など)

行政法(19問+記述式1問)

  • 行政法は試験の50%を占める最重要科目
  • 行政手続法・行政事件訴訟法・行政不服審査法を重点的に学習
  • 判例問題が増えているため、単なる暗記ではなく理解を深める

対策

  • 条文+判例のセット学習
  • 記述式対策を徹底(簡潔にまとめる練習)

商法・会社法(5問)

  • 会社設立・取締役の責任・株主総会が頻出
  • 暗記中心なので、過去問演習を多めにする

対策

  • 商法・会社法は範囲が広いため、基本問題のみ重点的に対策

一般知識(56点)

政治・経済・社会(6問)

  • 時事問題・経済用語の理解が重要
  • 新聞・ニュースを活用して最新情報を把握

対策

  • 新聞・ニュースを毎日チェック
  • 過去問の政治経済問題を解く

情報通信・個人情報保護(4問)

  • 個人情報保護法・インターネット関連の知識が必要
  • 近年、IT関連の問題が増加傾向

対策

  • IT用語の基本を押さえる
  • 個人情報保護法の重要ポイントを整理

文章理解(4問)

  • 論理的な文章読解力を問う問題
  • 速読力を鍛えることが重要

対策

  • 国語の問題集(センター試験レベル)で練習

3. 記述式対策(60点)

記述式は40字~60字で法律の要点を説明する問題。

  • 採点基準が非公開のため、できるだけ正確な法律知識を記述することが重要
  • 過去問を解き、添削を受けると効果的

対策

  • 条文の要点をまとめ、短文で説明する練習をする
  • 記述対策講座を活用する(予備校・通信講座など)

4. 過去問・模試の活用

過去問演習の進め方

  • 試験3ヶ月前から過去問を解く
  • 最低3年分の過去問を解き、出題傾向を把握
  • 模試を活用し、時間配分を意識した練習を行う

取得後に出来ること

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