重度の肢体不自由・知的障がい・精神障がいのある方の自宅での介護を行うための資格で訪問介護員(ホームヘルパー)と似ていますが、重度の障がい者に特化した長時間のケアを提供できる点が特徴です。
重度の肢体不自由者や障害者(特にALSなどの難病患者を含む)に対し、日常生活の支援を提供するサービスです。このサービスを提供するためには、一定の資格を持つ従業者が必要となります。
重度訪問介護の従業者は、以下のような支援を行います。
- 身体介護(食事・排泄・入浴・更衣の介助など)
- 家事援助(掃除・洗濯・調理など)
- 外出支援(通院・買い物・余暇活動の付き添いなど)
- 医療的ケア(たんの吸引・経管栄養の補助など)※研修修了者のみ
目次
受験資格と難易度
1. 受験資格(資格取得の条件)
重度訪問介護従業者として働くために必要な資格・研修には、大きく2つのルートがあります。
① 介護資格をすでに持っている場合
以下のいずれかの資格を持っている人は、追加の研修なしで重度訪問介護の仕事に就くことができます。
- 介護福祉士
- 介護職員実務者研修(旧ホームヘルパー1級)
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
② 介護資格がない場合
介護系の資格がない人でも、自治体や事業所が実施する**「重度訪問介護従業者養成研修」**を修了すれば、重度訪問介護従業者として働くことができます。
研修は以下の2段階で構成されていることが一般的です。
- 基礎課程(20時間程度):制度の基礎知識や基本的な介護技術を学ぶ
- 追加課程(20時間程度):重度障害者特有の介助技術、実技演習
さらに、「医療的ケア」(たんの吸引・経管栄養)を行う場合は、追加の研修が必要になります。
2. 難易度
① 介護資格を持っている場合
- すでに介護の基本スキルや知識があるため、特別な試験はなく、即座に重度訪問介護の仕事が可能。
- ただし、たんの吸引や経管栄養を行う場合は、医療的ケア研修を追加で受ける必要がある。
② 研修のみで取得する場合
- 難易度は低め。特に筆記試験や実技試験はなく、研修を受ければ修了証が発行される。
- 研修は数日~1週間程度で修了することができるため、未経験者でも比較的簡単に取得できる。
- ただし、実際の介護現場では「体力」や「コミュニケーション能力」が求められるため、研修で学んだ知識を実践で活かせるかが重要。
③ 医療的ケア研修の難易度
- 「たんの吸引」「経管栄養」などの医療的ケア研修は、基本の研修より少しハードルが高い。
- 一定の実技指導があり、実際に手技を学ぶため、初心者にとってはやや難しく感じることもある。
試験内容
重度訪問介護従業者として働くための資格取得には、一般的な「試験」はありません。
ただし、「重度訪問介護従業者養成研修」を受講・修了する必要があり、その研修内での評価が求められます。
1. 研修修了のための評価
研修修了には、以下の内容をクリアする必要があります。
① 座学(筆記試験なし or 確認テストあり)
- 研修では、障害者福祉制度や介護技術についての講義を受講。
- 一部の研修では、簡単な確認テスト(選択問題・○×問題など)が実施されることもあるが、合格率は高い。
② 実技演習(講師による評価あり)
- 実技演習では、介助の手技を学び、講師の指導のもとで実際に練習。
- 排泄介助・移乗介助・食事介助などの基本的な動作を正しくできるか評価される。
- 落ちることはほぼなく、講師のフィードバックを受けながら習得できる。
③ 医療的ケア研修(受講者のみ)
- 「たんの吸引」「経管栄養」の研修を受ける場合、実技試験が課されることがある。
- 指導者の前で実際に手技を実演し、適切に行えているか評価される。
2. 研修内容と評価基準
研修内容 | 形式 | 評価方法 |
---|---|---|
障害者総合支援法の基礎 | 座学 | 出席・レポート |
介護技術(移乗・食事介助など) | 実技 | 講師の評価 |
コミュニケーション技術 | 座学・実技 | グループワーク |
医療的ケア(希望者のみ) | 実技 | 手技試験 |
試験対策
重度訪問介護従業者になるための研修には、一般的な筆記試験はほぼなく、研修を修了すれば資格を取得できます。
しかし、研修の確認テストや実技評価があるため、事前に基本知識を身につけておくとスムーズです。
取得後に出来ること
訪問介護の提供
重度訪問介護とは、重度の障害を持つ利用者の自宅を訪問し、日常生活のサポートを行うサービスです。資格取得後、以下の支援が可能になります。
生活支援
- 食事介助(嚥下障害がある方へのサポート含む)
- 排泄介助(オムツ交換、トイレ誘導など)
- 入浴介助(全身清拭、部分浴、シャワー浴など)
- 着替えの介助
- 整容(髪の毛を整える、爪切りなど)
外出支援
- 病院への付き添い(通院介助)
- 買い物の同行や代行
- 余暇活動(映画鑑賞、カフェ、旅行の付き添いなど)
- リハビリや日常活動のサポート
家事援助
- 調理、後片付け
- 掃除、洗濯
- 生活環境の整備(安全な動線の確保など)
医療的ケアの提供(特定の研修修了者のみ)
「医療的ケア」研修を修了した場合、以下の業務が可能になります。
- たんの吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ内)
- 経管栄養の対応(胃ろう・腸ろう)
この研修を受けていない場合は、医療的ケアを必要とする利用者へのサービス提供はできません。
施設や事業所での勤務
資格取得後、以下のような職場で働くことが可能です。
勤務先 | 仕事内容 |
---|---|
訪問介護事業所 | 利用者の自宅に訪問し、生活介護・外出支援を行う |
障害者支援施設 | 入所・通所施設での介助業務 |
医療機関・福祉施設 | 障害者向けのケアを提供 |
NPO・ボランティア団体 | 障害者支援活動に従事 |
就職・転職の幅が広がる
- 訪問介護事業所での採用率が高い(特に重度訪問介護ができる人材は需要が高い)
- 未経験から介護業界に入ることができる
- 経験を積めば介護福祉士やサービス提供責任者などのキャリアアップも可能
高収入の仕事に就ける可能性がある
- 一般の訪問介護よりも時給が高め(1,500円~2,500円)
- 夜勤・深夜帯の対応で手当がつく(時給2,000円以上も可能)
- 介護福祉士の資格を取得するとさらに高収入に(月給30万円以上の求人もあり)